韓国社会の問題④「国民の敵」となった特権階級の女子大生

 

今の韓国では、金持ちとそうではない人との格差が深刻な問題になっている。

そんな社会に不満をもっていた韓国人の間で、「スプーン階級論」が共感を呼んだ。
自分の階層(社会的地位)は親の財産や職業によって決まってしまう。
金のスプーンが恵まれていた財閥の子供で、以下、銀のスプーン、銅のスプーン、泥のスプーンと続く。
自分が努力してもムダ、という韓国の社会事情をあらわしている。
2015年ごろに若者の間で流行った。

 

スプーン階級論はインドのヴァルナ=ジャーティ制度(カースト制度)のようなもの。

豊かな人と貧しい人との大きな格差は、韓国で深刻な問題になっていることは間違いない。
でも韓国人の話を聞くと、けっこう気安くこの「スプーン階級論」を話題にしているらしい。

「ねえ、あんたのスプーンってなに?」みたいに、軽い感じでこの言葉を使っていると言っていた。

 

韓国の土地神
スプーン階級論の対象外

 

「金のスプーン階級」が頂点に立つ。

この階級に生まれた人物には、今の朴槿恵(パククネ)大統領がいる。

パク大統領の友人の崔順実(チェ・スンシル)容疑者も金のスプーンの人。
韓国に前代未聞の大騒動を引き起こした人。

 

今の韓国でおこなわれている「反朴槿恵大統領デモ」が激しい理由には、彼らが「特権階級の人間だから」という反感もあるはず。

さらには、ナッツリターン事件で、韓国中を敵にまわした「ナッツ姫」も金のスプーンの特権階級に生まれている。

大韓航空の副社長だった趙顕娥(チョ・ヒョナ)氏は、財閥の出身で「金のスプーン」の典型のような人。

*大韓航空ナッツ・リターン:2014年、大韓航空機のファーストクラスに乗っていた趙氏が客室乗務員の対応に激怒して、離陸寸前の飛行機からチーフパーサー(機内サービス責任者)を降ろした。そのため、航空機の離陸を遅らせてしまう。

 

この事件では大財閥企業にも国民の批判が集まった。

今も昔も、特権階級に対する韓国の国民の怒りには激しいものがある。

以前から韓国10大財閥企業の二世、三世による不祥事や批判はあったが、今回の一件で世襲や同族経営への批判が爆発し、他の同族企業経営にまで飛び火しそうな勢いとなった。

(ウィキペディア)

 

一般の韓国人は、こうした「金のスプーンを口にくわえて生まれてきた」という特権階級に対して、羨望(せんぼう)と反感の気持ちをもっている。

 

朝鮮王朝の時代には、王族が金のスプーン階級にいた。

 

恵まれた階級の人間がおこした不祥事は、徹底的にたたかれる。

今の韓国でいえば、先ほどの崔順実(チェ・スンシル)容疑者の娘で、名門女子大学生の「ユラ氏」がそう。

この女子大生も金のスプーンの出身で、国民からすさまじいほどの敵意を向けられている。

韓国の若者からしたら、「国民の敵」といってもいいぐらいの憎悪を一身に集めている。

 

11月17日の産経新聞の記事に、そのことが書いてある。

「親を恨め。金も実力だよ」 若者を反朴槿恵に駆り立てた崔順実容疑者の娘の“特殊な”高校生活

この記事のタイトルを一読しただけでも、ユラ氏が憎まれる理由が見えてくる。

 

今の韓国では、朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求める、「100万人デモ」がおこなわれている。
このデモに若者たちが参加したのは、特権階級に生まれて特別待遇を受けていた娘のユラ氏への怒りからだった。

特権階級に生まれたこのユラ氏は、意識も一般の国民の常識外のものだった。

崔容疑者が教師に現金を手渡したり、欠席の多さを指摘した教師に「お前なんて教育相に言って代えてもらえる」と罵声を浴びせ続けたりしたこともあったという。

「『親を恨め。金も実力だよ』 若者を反朴槿恵に駆り立てた崔順実容疑者の娘の“特殊な”高校生活」

 

そしてユラ氏フェイスブックに「能力がないならお前の両親を恨め。金も実力だよ」と書き込んだことに、韓国の若者を燃え上がらせた。立ち上がらせた。
マンガに出てくる悪役のセリフそのまま。

このユラ氏への韓国の若者の怒りは、朴槿恵大統領に対する怒りを上回るものだったという。
韓国メディア中央日報では、多くの高校生がデモに参加し「努力すれば報われると教わってきたが、ユラ氏を見れば、虚脱感を覚える」と話している。

 

それにしても、ユラ氏の言葉はマリーアントワネットを思い起こさせる。

フランス革命のとき、特権階級にあったマリーアントワネットはパンを求める庶民にこう言ったという。

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」

と言いたいところだけど、本当はこれはウソ。

実際には、マリーアントワネットはそんなことを言っていない。

 

 

今の韓国人は、特権階級の人間を恨む一方で、そんな人たちを生み出す韓国の社会には深い失望を感じているようだ。

しかし今の若者には神様が感動するほど努力しても夢の職場は宝くじのようなものであり、絶対多数は低賃金と雇用不安の苦痛に耐えなければならない。

「ヘル朝鮮」を「ヘブン大韓民国」に(1)

 

韓国人の友人は、金のスプーンのような上流階級そのものを強く批判していなかった。

個人の努力によって、誰もがその階級になることができるのならいいと言う。

 

でも、今の韓国はそうではないらしい。
金のスプーンの家に生まれた子どもは、そのまま金のスプーンの階級になる。
そんな階級の固定化がおかしいと不満を言っていた。

「努力すれば報われると教わってきたが、ユラ氏を見れば、虚脱感を覚える」と言う女子高生の怒りと同じ。

「今の韓国社会は問題だらけ」とは思っているけど、社会を変えることはムリだという。
「とてもそれはムリですよ~。韓国は変わりませんよ」とあきらめ気味。

社会を変えないとしたら、グチや不満を言い続けることを選ぶのか?
若い人間が社会を変えないでどうする?

なんて、偉そうなことは言えないないね。
その点では今の日本もあんまり変わらないだろうし。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。