日本人の苦手な人種の話①外国人との会話で「黒人」をどう言うの?

 

海外旅行に行くと、その国で出会った外国人と会話をすることはよくある。
そんなときには、がんばって英語を使ってみたりする。

ときには、宗教・テロ事件・人種といった真面目な話題になることもある。
そんなときに、「黒人」を英語でどう言っていいか分からなくて困ったことがあった。

 

白人は「ホワイト」でいいはず。
では、黒人を「ブラック」と呼んでいいのか?

 

「それはダメです!」

予備校に通っていた時、アメリカに数年住んでいたという講師がそんなことを言っていた。

「日本とアメリカとでは、人種についての考え方が大きく違います。日本人は人種の問題については鈍感で、アメリカ人はとても敏感です。日本では、平気で黒人を『ブラック(black)』と呼んでいる人がいてビックリします」

 

この話を聞いて、初めて知った。

黒人をブラックと呼んではいけないんだ!

驚きとともに焼きついた記憶は、なかなか消えない。

 

だからその数年後に、海外で外国人と話をしているときに人種の話題になるとに困ってしまう。

 

黒人はどう呼ぶのが正しいのか?
自分には差別の意識はまったくないけど、使っている言葉が差別的な用語になってはいないだろうか?

そういったことがハッキリ分からないし、そもそも英語力にも自信がない。
だから人種がテーマになるときは、機械のようにただうなづいていた。

 

でも、そんな日本人はたくさんいると思う。

日本は他民族国家ではないし、人種のことをあまり意識することがないから。

 

 

日本では人種についての「正しい表現」はほとんど話題にはならないけど、障害者については「正しい呼び方」は問題になる。

たとえば「知的障害」という言葉がある。
でも一昔前は「精神薄弱」と呼ばれていた。
さらにその前の時代には「白痴(はくち)」と呼ばれていた。

「障害」ということに対する人々の考え方が変わってきて、呼び方もその認識にふさわしいものへと変わっている。

「差別や偏見につながってしまうような言葉はなくしましょう。適切な言葉を使いましょう」という動きがある。

これは、これからも続くはず。

 

今の日本では、「精神薄弱」が「適切な言葉」とされているから、「精神薄弱」なんて言葉は使われていない。
この言葉を聞いたことがない人も多いと思う。

 

先ほどの「白痴」という言葉は、今では完全にOUT。

白痴 (障害)重度の知的障害の呼び方。差別用語とされることがある。

(ウィキペディア)

 

「せいしんはくじゃく」と入力すると「精神薄弱」と変換されるけど、「はくち」と打ち込んでも「白痴」なんて変換はない。

 

今の時代に、テレビやラジオで「白痴」なんて言葉を言ってしまったら、大問題になって謝罪どころではすまなくなる。

政治家が言ったら、もう政治生命が終ってしまう。

 

でも、ロシアの文豪ドストエフスキーの小説に「白痴」というものがある。
さすがに、この白痴のタイトルが変更されることはないと思うけど。

 

ちなみに最近では、障害者を「障がい者」と表現する動きもある。
これには賛成・反対が分かれているから、どちらが正しいのかは決まってはいない。

だから、どっちでもいい。

 

 

外国人についても、今では新聞や雑誌で「外人」と書くことはない。

ちょっと前までは、外国人を意味するもっとひどい言葉があった。

 

今でも、日本のプロ野球球団が高いお金を出して外国人選手を獲得することがある。
昔は、期待していたほど活躍しない外国人を「外人」ではなくて、「害人」という表現することもあった。

 

1981年~1982年にかけて巨人にいた「ゲーリー・トマソン」は、期待を思いっきり裏切ったことから、「舶来扇風機」、「三振王」、「トマ損」、「害人」とボロクソ書かれた。
今の新聞で「害人」なんて書いたら、謝罪だけではな済まされない。

 

外国人用の税金の書類

「ALIENS(エイリアン)」と書いてあったのを見て、イギリス人の友人が爆笑していた。

 

おっと、話がそれた。
話を「黒人」に戻す。

先ほど書いたように、ボクは黒人の「適切な呼び方」というものがよく分からなかった。

変な呼び方をしたら、「人種差別主義者」だと思われてしまうかもしれない。
今の世界で「人種差別主義者」と思われたら、もう会話の相手にはされなくなる。
相手が酔っていたら、殴られるかも。

 

偏見や差別を生むような悪い言葉ではなく、「社会的に適切な言葉」のことを「ポリティカル・コレクトネス」と呼ぶ。

ポリティカル・コレクトネス(英: political correctness、略称:PC)とは、政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語のことで、職業・性別・文化・人種・民族・宗教・ハンディキャップ・年齢・婚姻状況などに基づく差別・偏見を防ぐ目的の表現、およびその概念を指す 。

(ウィキペディア)

 

では、「黒人」をこの「ポリティカル・コレクトネス」の観点から考えたら、どのような言葉を使うのが良いのか?

 

黒人のアメリカ人に聞いてみた。

「アメリカにいる黒人なら『アフリカン・アメリカン(アフリカ系アメリカ人)』でいい。別に『ブラック』だけでもいいけど」

ということらしい。

なんだ、「ブラック」でもいいじゃんか。

 

とすると、あの予備校の講師が言っていたことは、何だったんだろう?

アメリカ滞在の経験があったから、「それに比べて日本は~」と自慢したかっただけだったりして。
そんな日本人には、今でも海外でたまに会う。

 

でも、日本の歴史に残る「外国かぶれ」といえば、戦国時代の藤原惺窩(ふじわらせいか)だろう。

惺窩は、異常なほど中国に憧れていた。
だから、彼は中国式の名前を使っていて、さらには「自分は中国で生まれたかった」とまで言っている。

どうせ外国にかぶれるのなら、ここまでかぶれてほしい。

 

 

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2 件のコメント

  • 普通の会話での外国人の呼び方はforeignerが一般的ですが、
    法に関する場合の外国人の呼び方はalienで合っていますよ。
    映画の影響で勘違いしているのではないでしょうか?
    意外と英語圏の人も勘違いしている人がいるらいですよ。

  • コメントありがとうございます。

    もちろん、Alienは正しい用語です。
    ただ、「より適切な表現を考えた場合どうか?」ということです。

    これは、正しいの基準をどこに置くかで判断が変わってきますね。

    「コウビルド」という英英辞典では、Alienを次のような言葉だと説明しています。
    Alien means belonging to a different country, race, or group, usually one you do not like or are frightened of. (formal, disapproval)
    (Alienは違った国,人種,集団に属していることを意味するが,その国,人種,集団は普通,好意を持たれておらず,脅威と感じられているものである。)

    あまりいい言葉ではないようですね。

    それと以前、日本の空港の入国審査では外国人をAlienと表記していましたが、現在はForeignerに変更されています。
    入国管理局は法務省の管轄なんですが、ここで協議した結果、AlienよりForeignerの方が適切な言葉だと判断したからです。

    イギリス人の友人がAlienと書いてある書類をFacebookに投稿したところ、アメリカ人やカナダ人から「何だそりゃ」みたいなツッコミがありました。

    浜松市の判断と、入国管理局(法務省)&英語圏の人間の判断を比べたら、Foreignerの方が適切だと思いました。

    繰り返しになりますが、どちらも言葉としては間違っていませんよ。

    コメントありがとうございました。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。