欧州の移民問題:外国人の自由や権利VSその国の価値観の尊重

 

「浜松市」と聞いて何を思い浮かべますか?

うなぎ?
ピアノ?
ゆるキャラグランプリでの家康くんの組織票?

3つ目以外はどれも正解。

だけど、浜松市は多文化共生社会として全国で有名。
浜松にはいろいろな国の外国人が住んでいる。

そんな多様性のある浜松市で、最近こんなことが起きた。
ちょっと考えてください。

 

ある外国人がバスの運転手の仕事に応募したけど、バス会社はその人を採用しなかった。
その理由はその人の宗教にある。
イスラーム教徒の彼は、宗教上の理由で女性と握手をすることができない。

「女の人と握手できないなんて、ウチの会社の価値観には合わん。ウチの会社じゃダメだ。」ということで、彼を採用しなかった。

このことに対して、「宗教上の理由から彼を採用しないなんておかしい!」と人権団体は抗議する。

でも、浜松市長はこのバス会社を支持した。

「会社がもちろん正しい。『私の宗教信条にそぐわないので女性と握手できない』と運転手が言うなど、認められないはずだ」

そしてこう言う。

「浜松市の価値観を否定するのなら、そんな人間は浜松から出ていけ」

 

さて、みなさんはどう思いますか?

宗教の考えを尊重するか?
浜松市の価値観を尊重するか?

このことは、記事の最後でまた書きます。

 

浜松城。
出世城として知られているけど、その理由を知らない浜松人はけっこういる。

 

今年の1月、オランダのルッテ首相が国内の新聞広告にのせた言葉が大きな話題になった。
ルッテ首相はオランダに住む外国人の移民に対して、「(オランダから)出ていけ」と主張している。

BBCニュース(2017年01月24日)の記事から。

「いやなら出ていけ」 オランダ首相が意見広告 反移民ムード背景か

オランダのマルク・ルッテ首相が、国の価値観を否定するなら「出ていけ」と主張する意見広告が23日付で、同国の新聞各紙に掲載された。広告は、台頭する反移民政党に対抗するためだとみられている。

(中略)ルッテ首相は新聞広告で「普通に振る舞え。さもなければ出ていけ」と主張。自由を求めてオランダに来たはずの人たちが、その自由を乱用しており、国民は反感を強めていると指摘した。

フランスやオランダなど欧州全体を見ていると、国内の外国人に対して寛容の精神で温かく接することは大事なことだけど、どこかで一線を引かないとダメだと思う。

寛容の精神といっても、外国人のすべての自由や権利を認めるわけではない。

「宗教上の理由だから」といって外国人のすべての権利を認めてしまうと、その国に住んでいる多くの人を不快にさせることになる。

結果的に、欧州の寛容の精神や多文化共生社会を破壊してしまうことになりかねない。

 

これは外国人だけではない。
社会の中で、すべての人が自分のやりたいように行動できることはない。
越えてはならない「一線」はある。

 

 

浜松市もそうだけど、外国人を含めた市民みんながその地域の価値観を尊重するのはすごく大事なことだと感じる。

自由を求めることはいい。
けど、オランダに住んでいる人がオランダの価値観を否定するような自由までを求めるのはいき過ぎ。

 

オランダの価値観には合わない自由を求めるなら、その人の価値観を認めてくれる別の国に行ったほうがいい。
その方がその人にとってもオランダにとっても良いはず。

ルッテ首相の言っていることは間違っていないし、過激なことでもない。
「言い方が強いなあ」という気はするけど。

 

そもそもこのルッテ首相は、考え方として穏やかな人。
「外国人移民は出ていけ!」なんて移民排斥を主張するような政治家ではない。

オランダで極右の政治家といえば、ウィルダース氏がいる。

このウィルダース氏が党首をつとめる自由党は、反イスラームで知られた極右政党で、こんな主張をしている。

2010年に行われた下院選挙では、公約に「イスラーム諸国からの移民受け入れ停止」「コーランの発禁処分」「スカーフを被っている人物に課税」などの反イスラーム的な政策を掲げて、ムスリム移民に警戒心を抱くオランダ有権者の支持を集め

(ウィキペディア)

ルッテ首相はウィルダース氏の考え方とは大きく違っている。

ウィルダース氏から、「ルッテはオランダに大量の移民を受け入れたことで、オランダをイスラーム化させた」と非難している。

 

ちなみに、今年3月のオランダ総選挙に注目しましょう。
「この極右政党の自由党がどれだけ票を取れるか?」ということがヨーロッパの移民政策にも影響を与えることになるから。

 

 

決して極右の政治家ではないルッテ首相でも、外国人の自由よりもオランダの価値観を尊重することを優先している。

だから、ただ単に「移民はオランダから出ていけ!」というのではない。
オランダにいてオランダの価値観を守ることができないのなら、「出ていけ」と主張している。

これは現実的な考え方だと思う。

 

外国人が欧州で生活するなら、その国の価値観や常識、社会のルールを尊重する必要はある。
その国に住んでいる人たちを怒らせるようなことをしていたら、共生なんてできるわけがない。
海外旅行で来たお客さんじゃないんだから。

 

外国人移民に寛容なオランダでも、「出ていけ」と言っている。

というより、オランダの寛容の精神や多様性の文化を守るために「オランダの価値観を否定するなら、出ていけ」といっているのだろう。
これは排他的な考えではなくて、外国人との共生のためには現実的に必要な考え方だ。

 

インド人の友だちのアパートにあったヒンディー語の注意書き。
日本で生活するうえで、守るべきルールが書いてある。
そのインド人はしっかり守っている(と思う)。

 

ここで、この記事の始めに書いたバスの運転手の話に戻ります。

じつはあの話、ウソです。

ごめんよ。

でも、浜松市をオランダに、浜松市長をオランダのルッテ首相に変えたら本当の話になる。

「いやなら出ていけ」 オランダ首相が意見広告 反移民ムード背景か

ルッテ氏は新聞広告の掲載と同時に、日刊紙アルゲメーン・ダグブラッドとのインタビューに応じ、意図を説明。

バス運転手の職に応募した移民男性が女性と握手を拒んだために就職できなかったという事例を取り上げた。この大手バス会社は国内の人権機関に批判されたが、首相はバス会社を擁護した。

この移民の男性が「私は、宗教上の理由で女性が握手をすることができない」と言った。

それに対してバス会社が「それではウチで働いてもらうことはできない」と言ってその移民の男性を採用しなかった。

 

そのことでオランダの人権機関がバス会社を非難したけど、ルッテ首相は「バス会社は正しい」と会社を支持している。

「実に奇妙な批判だ」と首相は述べ、「会社がもちろん正しい。『私の宗教信条にそぐわないので女性と握手できない』と運転手が言うなど、認められないはずだ」と述べた。

「私を含めて大勢が反発しているのは、まさにこのようなことだ。なぜならここでは、お互い握手をするというのが社会の規範だからだ」

オランダでは信仰の自由を認めているから、イスラーム教を信仰することはできる。
でも、「女性と握手できない」なんてことは認めない。

オランダの価値観では「お互い握手をする」ということが大切なことだから、その価値観を否定するような自由までは認められない。

 

それが先ほどのルッテ首相の強い言葉につながる。

「普通に振る舞え。さもなければ出ていけ」と主張。自由を求めてオランダに来たはずの人たちが、その自由を乱用しており、国民は反感を強めていると指摘した。

「オランダは外国人に寛容」といっても、何でも許すわけがない。
オランダの価値観を否定するような自由は認めない。

その国に住んでいる人たちの反感をかうような言動を許せば、結果的に寛容の精神や多文化共生の社会を破壊することになるだろうし。

 

バンコク

 

海外旅行も同じで、外国に入ったらその国の価値観やルールに従わないといけない。

中国には、「郷に入っては郷に従え」という言葉がある。
ヨーロッパにも同じような言葉がある。
「When in Rome do as the Romans do.」
(ローマではローマの人たちがするようにせよ)

今回書いたのはオランダの話だけど、いずれは日本での話になるはず。
外国人の価値観と日本の価値観がぶつかるときがある。

 

 

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今まで、東南アジア、中東、西アフリカに旅をしてきました。外国に行って初めて気がつく日本の良さや特長があります。以前、歴史を教えていたので、その経験もいかして、日本や世界の歴史や文化などをテーマに、「読んでタメになる」ようなブログを目指します。