日本と韓国の違い:トイレの利用に暗証番号を必要する社会

 

韓国で、‘便器’のこんな一言が話題になっているらしい。

「こっそり用だけ足していくんですか?アメリカーノ1杯おごってくれるんですよね?そのままお帰りになるのなら、今後!お客様の人生も詰まってしまいますよ!! 便器より」

韓国では、カフェで何も注文しないでトイレだけを使う人がたくさんいるらしい。
当然、カフェのオーナーとしては困る。
それで、ソウルにあるカフェがトイレの便器に上のようなメッセージを書いた。

するとこれがきっかけになって、トイレの使い方のマナーをめぐって韓国で議論になっているという。
くわしくはこの記事で↓

ソウルのカフェのトイレに、マナー向上訴える「便器」からの一言

 

 

韓国では、店で何も買わずにトイレだけを利用する人を「トイレ泥棒」というらしい。
店側もトイレ泥棒にはいろいろな対策をとっている。

あるカフェでは、勝手にトイレを使うことができないように、トイレのドアに暗証番号を入力するシステムにしている。
でもそれでは、暗証番号をおぼえられるとトイレ泥棒をされてしまう。
だからトイレの暗証番号を毎日変えている店もあるとか。

 

もちろん、飲み物を買った人はトイレを使うことができる。
だから飲み物と交換で、トイレの暗証番号がかいているレシートをわたす店もあるという。

「う~ん、やっぱり韓国の社会は日本とはちがうとなあ」と思わずにはいられない。

入り口を開けるためには、パスワードの入力を必要とする。
その中にあるのは、エヴァンゲリオンではなくてただの便器なのに。

でもトイレの使用にパスワードを必要とする社会には、それなりの背景や理由がある。

 

 

トイレだけをかりるのというのは、単純に「飲み物にはお金を使いたくないから」という理由がある。

「公衆トイレに比べたら、カフェのトイレはキレイだから」という理由もある。
ボクも、韓国で駅のトイレを使った経験があるからこれは分かる。

 

そのほかにも、「身の安全を守るため」という理由がある。
犯罪に巻き込まれたくないから、カフェのトイレを使うことがあるという。

先ほどの記事にはこう書いてある。

昨年5月にソウル市内の公衆トイレで女性が見知らぬ男に殺害された事件を受け公衆トイレの安全性が問題になっていることなどだ。

ソウルのカフェのトイレに、マナー向上訴える「便器」からの一言

 

2016年5月に、ソウルの江南カンナム駅近くの公衆トイレで20代の女性が殺される事件が起きた。
このとき、韓国のマスコミがこの殺人事件を大々的に取り上げていたからボクも知ってはいた。

でも一年も前のことだからすっかり忘れていたけど、韓国人にとってはそうはいかないらしい。
この事件は今でも韓国の人たちに影響をあたえている。
そのことに少し驚いた。

 

この殺人事件は韓国の人たちに大きな衝撃しょうげきをあたえて、韓国社会のいろいろな問題を浮き彫りにした。

韓国の大学教授はこう警告している。

シン・ギョンア翰林(ハンリム)大学社会学科教授は「韓国は女性と男性の間の不信の溝が深く、女性嫌悪が容易に現れる」として「女性の安全を保障する社会的なセーフティネットを作らなければ、こうした現象が続くだろう」と診断した。

韓国「無差別殺人」女性被害者の追悼の波が拡散(1)

 

また、この事件は社会の様子を変えた。
今年(2017年)、朝鮮日報はこんな記事をのせていた。

昨年5月に発生した「江南駅トイレ殺人事件」以降、ビルのオーナーたちが通行人に開放してきたトイレのドアに鍵を掛けるようになったことで、トイレ不足に拍車が掛かったという。

「公衆トイレ不足の江南大路、深夜は男女問わず路上で…」

このトイレ不足が、カフェの「トイレ泥棒」にもつながっているのだろう。

 

さらにこの事件は韓国人の意識をも変えている。
2016年5月22日の中央日報の記事から。

17日午前にソウル・江南(カンナム)駅に近いカラオケ店のあるビルのトイレで発生した殺人事件以降オンラインショッピングモールで女性の護身用品の購入が増加している。

「無防備では不安」…江南駅殺人事件後に護身用品の販売急増=韓国

 

新聞のこの事件の取り上げ方を見ると、この事件を個人がおかした犯罪ではなく、韓国社会のいろいろ問題から生まれた犯罪ととらえていることがわかる。

 

こんなことを書いてきたけど、日本人が韓国へ旅行に行ったとしても、こうした犯罪にあうことはまず考えられない。

でも、「大丈夫!心配しなくていいから」なんて気軽に言うのもあまりにも無責任。
何かあったとしても、「大丈夫!」と言った人が責任を取ることはないだろうし。

韓国は比較的安全な国だけど、やっぱり日本とはちがう。
「トイレに暗証番号を必要する社会」には、それなりの背景や理由がある。

トイレ泥棒はただのマナー違反とは違う。
韓国を旅行するなら、韓国の社会にはこうした一面もあることも知っておいたほうがいい。

 

 

おまけ

「トイレに入るために暗証番号を入力する」ということぐらいでは、まだ中国にはかなわない。

中国ではトイレットペーパーを盗む人が続出したために、顔認証システムソフトを取り入れたトイレが登場している。

アメリカのCNNがそれを伝えて世界的な話題になった。

中国・北京にある天壇公園でトイレットペーパー泥棒が横行する事態に業を煮やし、管理当局はこのほど、トイレの個室に顔認識ソフトウェアを導入した。

公衆トイレに顔認識ソフト、ペーパー泥棒を防止 北京の公園

北京の天壇てんだん

こんな立派な建物をつくったのに、なんでトイレットペーパーを盗まない国民はつくることができないのか?

 

2 件のコメント

  • 恥の概念が根底にある日本人の道徳観が最高だとは思いませんが、
    このような行為を見るにつけ、個の利よりも他者への迷惑を疎んじる社会を
    形成するには一役買っていると言わざるを得ませんね。

    まぁ、それは個性を奪う道具にもなり得るのですが、、、

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。