メリークリスマスが言えないアメリカ。多文化社会という特徴

 

日本とアメリカの違いは、うん、多様性の有無にある。
どこに行っても同じような日本と違って、白人・黒人・ヒスパニック、アジア人などいろんな人がごちゃ混ぜになっているのがアメリカって国。
ということで、アメリカ大使館がこんな動画を公開してる。

 

 

 

ボクがはじめて海外旅行をしてからもう20年以上がたつ。

その間に飛行機の「スチュワーデス」という呼び方が、いつの間にか「CA(キャビンアテンダント)」に変わっていた。

この変化の理由には、「ポリティカル・コレクトネス(PA:political correctness)」という考え方がある。

ポリティカル‐コレクトネス(political correctness)

人種・宗教・性別などの違いによる偏見・差別を含まない、中立的な表現や用語を用いること。

米国で、偏見・差別のない表現は政治的に妥当である、という意味で使われるようになった。言葉の問題にとどまらず、社会から偏見・差別をなくすことを意味する場合もある。

デジタル大辞泉の解説

 

ようするに、「差別にならないように、正しい言い方をしましょう」ということだろう。

このポリティカル・コレクトネスの考えは、とくにアメリカで厳しい。
アメリカは世界中から移民を受け入れてきた。
だから「いろいろな人種や宗教の人たち住んでいる」ということが、アメリカ社会の特徴とくちょうになっている。
アメリカは本当に多文化の国だ。

 

 

このポリティカル・コレクトネスの考え方にもとづいて、いくつかの言葉が言いかえられるようになった。
たとえば、このようなものがある。

ポリスマンは「ポリスオフィサー」になった。
キーマンは「キーパーソン」になった。
カメラマンは「フォトグラファー」になった。

ポリティカル・コレクトネスからすると、「マン(男)」という言葉がマズいらしい。

この考え方が日本に伝わると、スチュワーデスの他にもいろいろな名称が変わった。
こんな感じ。

看護婦は「看護師」になった。
保母さんは「保育士」になった。
クレヨンの肌色は「ペールオレンジ」になった。
痴呆症が「認知症」になった。

サッカーのボールボーイは、「ボールパーソン」と呼ぶらしい。
ポリティカル・コレクトネス的には、「蒙古」という言葉もマズイ。
だから最近では、「モンゴル」という言葉をつかうことが多くなっている。

 

 

ポリティカル・コレクトネスという考え方は、職業だけではなくてあいさつの言葉まで変えている。

最近のアメリカでは、「メリー・クリスマス」と言わずに「ハッピー・ホリデーズ」ということが増えているという。

「メリークリスマス」と言うのは、ポリティカル・コレクトネスの考え方からするとマズいらしい

そのことをニューヨークにいるアメリカ人にメールで聞いてみた。
するとこんな返事が来る。

Its strict for businesses.
But it is considerate to say happy holidays if you think they might not celebrate christmas. Here we have Christmas, Hanukkah, Kwanzaa, and Ramadan.

(意訳)

仕事の場面では厳しい。
でも、クリスマスを祝わない人もいるかもしれないから、「ハッピーホリデーズ」と言った方が思いやりがある。
ここ(アメリカ?ニューヨーク?)には、クリスマス、ハヌカ、クワンザにラマダンがあるのだから。

 

この返事を読んだだけで、「宗教や人種がごちゃ混ぜ」というアメリカの多文化社会が見えてくる。

ここにで出てくるHanukkahハヌカとはユダヤ教のお祭りのこと。

Ramadanラマダーンはイスラーム教徒にとって神聖な月で、ラマダーンが終わると盛大な祭りがおこなわれる。
イスラーム教徒はラマダーン期間中に断食をするけど、「ラマダーン=断食」というわけではない。

 

 

「Kwanzaa(クワンザ)ってなんだ?」と思ったら、これは黒人(アフリカ系アメリカ人)の祭りのことらしい。

クワンザとはアフリカの言葉で「初めての果物」という意味であり、アメリカに暮らすアフリカン-アメリカンが、遠い祖国アフリカの文化や伝統を祝うと共に、自らの誇りや、アメリカでの未来を切り拓くための礎を確認するためのもの。

(ウィキペディア)

「クワンザ」とはアフリカの言葉だけど、アフリカ人の祭りではない。
アメリカにいる黒人がおこなう祭りのこと。

 

ニューヨークは世界有数の国際都市で、世界中の宗教や人種が集まっている。
だからユダヤ教やイスラーム教の人たちを無視することはできない。

そうなると、「メリークリスマス」というキリスト教のあいさつは問題になってしまうらしい。
アメリカで生活するなら、異なる宗教や人種への「considerate(配慮)」は絶対に必要。
ポリティカル・コレクトネスという考え方が生まれた背景には、多文化というアメリカ社会の特徴とくちょうがある。

 

でも、「ハッピーホリデー」は知らない人や仕事でつかうあいさつで、相手がキリスト教徒の友人なら「メリークリスマス」と言っているらしい。

 

アメリカ社会は世界中の人種や民族の人たちが集まって、融合して新しい生活文化を築いているところから「人種のるつぼ」と呼ばれることがあった。

でも最近では「人種のるつぼ」より、「サラダボウル」という表現が使われることが多い。

いろいろな人種や民族が「一つになる(溶け合う)」必要はなくて、それぞれの人種や民族がその独自性を保ったままアメリカの社会にいればいい。
こんなふうに考え方が変わってきているのだ。

 

 

こちらもどうぞ。

宗教 「目次」

アメリカ 「目次」

外国人「独とか蒙古って漢字は差別だろ?」、日本人「えっ?」

英会話を学ぼう㊿英語テーマ:ヴォーグでの日本人への人種差別

12月の投稿⑤アメリカ・日本人と韓国人・英会話・人種差別問題

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。