「イギリスは紳士の国」と日本人に言われた英国人の感想は?

 

前回の記事で「紳士」という言葉の由来について書いた。

いまの日本でジェントルマン(紳士)というと、品や教養があって礼儀正しいりっぱな男性という意味で使われている。

 

でも、紳士という言葉はもともとは中国語。
現代の紳士という言葉は、明治時代の日本人が英語のgentlemanの訳語に「紳士」という中国語を当てたことに始まる。
それが1880年のころで、このときから「上品で礼儀正しく、教養の高いりっぱな男性」という意味として「紳士」という言葉が使われるようになっていった。

 

中国語で紳士の「紳」というのは着物の帯のことで、紳士とは帯をしめた中国の役人のことを意味していた。
それもただの役人ではなく、中国を支配するような高級官僚のこと。

中国の帯は「紳」といって、前に長く垂らして結んだものである。

りっぱな帯をしめている人間が、紳士といったのだ。日本でもはじめは前に垂らしたが、しだいにうしろにまわって、現在ごらんのとおりのものと相成った。

「日本的 中国的 (陳舜臣)」

 

くわしくは、下の記事をご覧あれ。

「紳士」の意味や由来とは?もとは中国の支配者のこと。

 

これは唐の時代の中国の役人。
この帯が「紳」で、彼らはまさに「紳士」だったのだろう。

 

今の日本人が紳士という言葉で思い浮かべるのは、きっとイギリスだろう。
「英国紳士」という言葉もあるぐらいだし。

日本での紳士という言葉のイメージは、こんな感じだと思う。

・上流階級の人
・上品で礼儀正しい
・教養の高いりっぱな男性

日本にいるイギリス人に聞くと、日本人から「イギリスは紳士の国ですね」といったことを言われた経験のある人は多い。

 

このイメージはむかしから日本にあった。
この思いはむかしのほうが強かったと思う。
明治時代には、イギリスを「理想の国」と見ていた日本人も多かった。
福沢諭吉は「日本を東洋の英国にしたい」と言っている。
だから1902年に日英同盟を結んだときは、日本中が大喜びだったという。

 

でも、イギリス人にとってはどうなんだろう?
日本人から「イギリス人=紳士」ということを言われたら、イギリス人はどう思うのか?

そう言われたらうれしいのか?
かえって困るのか?
「いいかげんウザイわっ」と思うのだろうか?

ということでイギリス人に聞いてみた。

 

日本人から「イギリスは紳士の国ですね」と言われたら、イギリス人はどう思うのか?

日本で英会話の講師をしていて、今はロンドンで住んでいるイギリス人にメールで聞いていた。
ちなみにそのイギリス人は30代の女性で、同じく30代の夫と暮らしている。

これがそのイギリス人からの返事。

About your gentlemanly question,when I hear that kind of thing it just makes me giggle.
I guess it’s a kind of old fashioned image, but it is a positive one so I am happy about that.

(意訳)

そんな言葉を聞くと、クスクスと笑いがこみ上げてくる。
それはちょっと古風なイメージだと思う。
でも良い意味だから、そう言われたら私はうれしく思う。

 

彼女はこのことを母親にも聞いている。
母親は日本に旅行で来たことがあるだけで、住んだことはない。

My mum says it just means good manners.
She has known people who she would call a typical English gentleman.

(意訳)

母に言わせると、それはまさに上品なマナーのこと。
母は「これぞまさに英国紳士」と呼べるような人たちを知っている。

 

そしてこれが彼女の夫の意見。
彼も日本に住んでいたことがある。

On the other hand, David thinks there are a lot of rude people around and would say English gentleman is just a stereotype.

(意訳)

一方でデビッドは、失礼な連中がそこら中にいると思っている。
だから、英国紳士なんてただのステレオタイプ(型にはまった見方)でしかないだろうと言う。

 

ちなみにこのデビッドは大のラーメン好き。
「ロンドンのラーメンは一杯2000円するんだぜ」と言って、日本でラーメンを食べまくっていた。

 

結局、イギリス人が他人から「イギリスは紳士の国ですね」と言われても、その言葉でなにを思い浮かべるのかは世代によって違う。

この記事で書いたことは、あくまでボクの友人の意見というだけ。
でもなんとなく、お年寄りのイギリス人はその言葉を肯定的に受けとめて、若いイギリス人は否定的にとらえる人が多いと思う。

 

2017年5月17日現在、ロンドン市長は「サディク・カーン」というパキスタン系のイスラーム教徒がつとめている。
彼こそまさに英国紳士。

 

「英国紳士=白人の男性」というステレオタイプの見方をしていると、イメージとちがうかも。

これは唐の時代の紳士。

 

おまけ

前にイギリス人と話をしているとき、「イギリスは紳士の国だと思う。紳士のスポーツと呼ばれるゴルフはイングランドで生まれただろ?」なんてことを言ったら、そのイギリス人から注意された。

「ゴルフはイングランドではなくて、スコットランド生まれのスポーツだぞ。スコットランド人にそんなことを言うなよ」

これはおどしじゃなくて、本当に注意したほうがいい。
ハッキリ言って、スコットランド人はイングランド人を嫌っているから。

セント・アンドルーズ

セント・アンドリューズ(St Andrews)は、スコットランドのファイフにある、北海に面する町であり、ゴルフの発祥の地として知られる。

 

追記

2020年に新型コロナウイルス感染が世界規模で広がっていたとき、日本に住んでいたイギリス人がSNSで「外出自粛を求められているのに東京へ花見に出かけてコロナに感染して、静岡に戻ってからまわりの人にも感染させた大馬鹿者がいる!」と書き込んだところ、友人がこうコメントした。

「So very, very stupid. In the UK these incidents are a hundredfold, it’s infuriating.」

本当に本当に馬鹿者だ。でもイギリスではそういうが日本の100倍あって、マジで腹が立つという。
やっぱり平均からいえば、日本人のほうが紳士的のようだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。