外国旅行での買い物③ 値段交渉(異文化交流)で大切なこと

 

はじめの一言

この生気に満ちた火山性の姿の緑の峯はまるで絵のように美しい!傾斜地の常緑の柏杉、月桂樹は、なんと豊かに繁茂していることであろうか!そこの人の手で仕立てられたかに見える自然は彼らの活動性と勤勉を示すものだ!
(シーボルト 江戸時代)

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

 

今回の内容

・相場がない?
・相場を知ることの不幸
・「あきらめ」が大切
・再試合はおススメしない。

 

・相場がない?

外国旅行で、自分が買った物の値段が他の人と違った場合、どう思う?
ということをインドネシア人の友人に聞いてみた。
彼は、こう言う。

「ボクが外国に行って、1000円で買ったTシャツを、他の人は500円で買ったとしても仕方がないと思いますよ。ボクが納得して買ったのですから。そんなこと不満は持ちませんし、怒りもしませんよ」

 

彼の話を聞いていると、「相場」という考え方がないように思う。
日本人の旅行者が外国で買い物をするとは、事前に「相場」を知っておくことが多い。

宿のスタッフに「現地の人が買う値段」を聞いておいたり、他の旅行者がいくらで買ったかを把握しておいたりする。

「あれは、このくらいの値段か」と、「相場」という武器を手に入れてから、戦い(値段交渉)に行く。

でも、インドネシア人のように、「他の人は関係ありません。自分が欲しい、必要だという気持ちの強さと値段交渉の技術によります」と言われたら、相場なんて関係なくなる。

 

・相場を知ることの不幸

インドやエジプトでは、現地の人が買う値段(相場)が分かったとしても、実際にその値段では売ってくれる店を見つけることが大変だった。

 

「これなら300円だな」という相場の物でも、店では「これは、1000円だ」と言う。
「ウソつけ、300円だろ」とボクが言うと、「それは前の値段だ。今はそんな値段じゃ売れない」「ウチの店の物はヨソの店とは質が違う。触ってみてくれ」と言ってくる。

 

店を転々としても、300円で売ってくれる店が見つからない。
相場が300円だと知ってしまうと、その値段で買わないと損する気がして納得できなくなる。
こうして、300円で売ってくれる店を探してまくって、海外での貴重な時間をムダに過ごしてしまうことがよくあった。
お金も大切だけど、時間も大切。
このジレンマによくイライラした。

 

・「あきらめ」が大切

今となっては、「あきらめ」が大切だと思っている。
もちろん、相場(現地の価格)を事前に聞いておいてから値段交渉にのぞむけれど、必ずしもその価格で買うことはできないと悟る(あきらめる)。

インドネシア人が言うように、東南アジア・中東・アフリカなどの「無定価」の国では、値段は人によって違う。

 

結婚しているインド人の友人は、同じ物を買うにしても、自分と妻とでは値段が違うと言っていた。
奥さんの交渉能力は、彼のはるか上をいっていて、買い物は妻に頼りきっているらしい。
同じインド人の夫婦でも、夫と妻とでは値段が違う国もある。 外国人が現地の値段で買うことにこだわっても、ストレスがたまってしまう。

 

自分の欲しいという「気持ち」と値段交渉の「能力」によって決まった値段が、自分にとっての適正価格なのだから、他の人と比べてもあんまり意味はない。
日本のように定価文化の国ではない、「無定価」の国は、そういう買い物の文化だと思う。

 

さっき言った「あきらめる」っていうのは、「諦める」ということではない。
もっと積極的な意味で、「明らかに極める」ということ。

 

「それいくらで買った?え?500円!ぼられてるよ」
と他人に言われても、自分の交渉能力がその程度だったと、武士のように潔(いさぎよ)く認める。
「明らかに見極める」ことが大事だと思う。

 

それが、外国人とのビジネス専門家がいう「なにより日本人が良くないこと」を避けるためにも有効だと思う。

5ルピーで買った物を、インド人が日本人に100ルピーの言い値で売る。
日本人はそれが5ルピーとは知らずに、値引きして70ルピーで買う。
それが、もとは5ルピーだったと後で知ることになる。
なにより日本人が良くないのは、仕入れ5ルピーと知ると、後で『だまされた』とぐずぐず言うことだろう。

(日本を救うインド人 島田卓)

 

「誰でも同じ値段で買うことができる」という日本の常識が通じない国なのだから、他の人と同じ値段で買うことができなくても、あきらめる。
他人が何と言っても、自分が納得した値段が、適正価格。
インド・中東・東南アジアの国では、今でも定価がなくてこんな値段交渉で決めるところが多いと思う。

 

・再試合はおススメしない。

自分が買った物が、後から他の人より高かったと知って、あきらめられずに「再試合」をやろうとすることはおススメしない。

 

値段交渉は、一回限りの勝負になる。
「ぼられた!」と、その場ですぐ気づいて言うのならともかく、宿に戻ってから気づいて、次の日に再交渉をして行くことはやめた方がいい。

 

交渉で値段を決める国では、「ぼったくったから、金を返せ」と、交渉のやり直しを要求する方が、一番の「ルール違反」となることもある。
それは、先ほどの専門家も言っている。

なにより日本人が良くないのは、仕入れ5ルピーと知ると、後で『だまされた』とぐずぐず言うことだろう。
インド人からすれば、70ルピーは本人が納得した交渉結果であり、『だまされた』と言われることは心外である

(日本を救うインド人 島田卓)

 

それと、お金を取り返しに行ったら、相手を怒らせて大きなトラブルになるかもしれない。
前の記事で書いたけど、宿のベテラン旅行者が言っていた「リンチされるかもしれない」ということが、国によってはあり得ると思う。
そこまではいかなくても、何かのトラブルにつながりそうな臭いはプンプンする。

 

旅では、小さなトラブルを解決しようと思ったら、大きな問題になってしまったということがある。
もし、どうしても行くなら、安全第一で警察官と一緒に行った方がいい。
警察官がどこまで信用できるか分からないし、それで解決できるかどうかは、運しだいだけど。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。