サウジアラビアの女子大生②世界で唯一、女性の車の運転を禁止する国

 

マレーシアを旅行中、サウジアラビア人の女子大生と出会う。

でもってその女子大生から、マレーシアとサウジアラビアの違いについて話を聞くことができた。
彼女はマレーシアで街のいろいろなところでお酒を見て、そのことに驚いていた。
前回書いたのはそんなこと。
今回はその続き。

マレーシアには、彼女がもっと驚くことが待っていた。

 

 

サウジアラビア人の女子大生がマレーシアで驚いたのは、お酒よりも女性だった。

「マレーシアの女性には、とても自由があります」

そんなことを言う。
「たとえば?」と聞いてみる。
彼女はその例に車の運転をあげていた。

「女性が車を運転しているなんて、サウジアラビアでは考えられない。マレーシアに来て一番驚いたのはそのこと。あれには本当にビックリした!」

 

その話を聞いて思い出した。
そう言えばそうだった。
サウジアラビアでは女性が車の運転をすることが禁止されていたんだ。

そんな国は世界でサウジアラビアだけ。
*2018年に、これが解禁される予定。

サウジアラビアは世界で唯一、女性が自動車を運転することを法律で禁止している国である。

「ウィキペディア」

でも、これに不満を持つサウジアラビアの女性は昔からいる。
「今の時代に、女性が車を運転してはいけないなんてことはおかしい!」と怒る女性もいる。

それで1990年に、サウジアラビアの女性が抗議のデモをおこなった。
それは、女性が集団で車を運転するという変わったデモ。

リヤード市内で四十七人の女性が、王国では車の運転が禁じられているのに逆らい、十四台の車のハンドルを握り、市内を約三十分間、抗議のデモを行った。

「サウジアラビア現代史 岡倉徹志」

こうした女性をサウジアラビアの男性はどう思ったのか?
「売春婦!」と呼んだ人もいたらしい。

でも、そんな男に彼女たちはこう言い返している。

預言者の時代には女性がロバや馬に乗るのは普通だったので、車の運転が反イスラーム的であるとは言えないとやり返した。

「サウジアラビア現代史 岡倉徹志」

こんなデモ活動をしてみたけれど、女性が車を運転できるようにはならなかった。
サウジアラビアはそんな感じで、イスラーム教が厳しい保守的な国。

 

イエメンのイスラーム教徒の女性

 

でもひょっとしたら、サウジアラビアで女性が車を運転できるようになるかもしれない。
こんなCNNのニュース(2016.12.01)がある。

アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ(CNNMoney) 国際的な投資家としても有名なサウジアラビアのアルワリード・ビンタラール王子は1日までに、同国女性に科している車の運転禁止を撤回すべき潮時を迎えているとの見解を明らかにした。

サウジ王子、女性の車運転「解禁」を提言

この王子はオープンな考え方をもっているらしい。
「女性に車の運転を禁止することは、女性の権利を侵害している」と主張するだけではない。
そのことによる経済的な損害もうったえている。

毎朝職場に向かうため100万人以上の女性が安全な運輸手段の確保に迫られているとし、多くの場合、運転手の雇用、タクシーの利用、夫の車への同乗に頼っているとした。その結果、労働力の生産性に悪影響を及ぼしていると指摘した。

サウジ王子、女性の車運転「解禁」を提言

女性の運転が認められたら、サウジアラビアはどうなるのか?

もしそうなったら、外国人のドライバーを雇っている世帯は月に約1000ドルの節約が期待できるという。
そしてそのお金がサウジアラビアの経済に返ってくる。
この王子はそんなことも主張している。

 

この女子大生の話を聞いていた意外だったことがある。
彼女はマレーシアに来て、サウジアラビアの良さを再確認できたという。

「マレーシアには自由があるけど、それは良いことではない。やっぱりイスラーム教の教えを守って生活するべき」

そんなことを話していた。
マレーシアの自由にあこがれるのかと思ったら、そうではない。

マレーシアでは、イスラーム教の教えを守って生活することがとてもむずかしい。
豚肉もお酒も身近にあるし、その気になったら簡単に手に入る。
それに欧米の文化があふれていて、刺激が多い。

マレーシアにはいろいろな誘惑がある。
だからこの国で、イスラーム教徒として正しい生活をおくることはとてもむずかしいのだと言う。

「正しい生活をしていないと、天国に行くことができないから」

彼女はポツリとそんなことを言っていた。

 

 

ちなみに、マレーシアがイスラーム教に対していい加減ということはない。
日本人のボクの目から見たら、かなり厳しい。

たとえば、マレーシアではキリスト教徒が神の意味で「アッラー」と呼ぶことを裁判所が禁止している。
2014.06.24のCNNニュースから。

マレーシアのキリスト教徒が神を「アラー」と呼ぶことを禁止するべきかどうかを巡る裁判で、同国の最高裁は23日、禁止を支持する判断を下した。

キリスト教の神、「アラー」の訳語を禁止 マレーシア最高裁

でもこれは特定のキリスト教会紙に限ったことだという。
他の一般のキリスト教徒は今でどおり、神をアッラーと呼ぶことができるらしい。

このへんの事情は、外国人のボクにはちょっと分かりづらい。
でも、イスラーム教徒にとってアッラーという言葉は特別大事であることは理解できる。
マレーシア政府は「マレーシアは多宗教国家であり、信仰の違いに平和的に対応することが重要だ」と強調しているという。

日本でこんな問題が起こることは考えられない。

 

さらに、最近ではこんなこともあった。
ペンキを塗るときに使う刷毛はけに、豚の毛が使われていることが分かった。
それで、その刷毛がマレーシアの当局に没収されている。

2017年02月10日の「マレーシアナビ」から。

豚毛を使った中国製の刷毛にハラル (イスラムの戒律に則った)マークが付けられていたとして、先ごろ国内取引共同組合 消費者行政省が金物屋を捜索し90本を押収した。マレー語紙「ブリタ・ハリアン」が報じた。

中国製豚毛の刷毛「、ハラル認証付き」で没収

イスラーム教徒は豚肉を食べてはいけない、ということは知っていた。
でも、豚の肉を食べることだけではなくて、豚の毛もダメだとは知らなかった。
「豚は、見るのも触るのも一切ダメ!」という感覚なんだろう。

こういう出来事を知ると、マレーシアはイスラーム教に対してとてもマジメなんだと思う。

 

おまけ

サウジアラビアの下にイエメンという国がある。
その国のダンス。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。