日本と世界の食文化①宗教による食のタブーとは?その具体例。

 

知人の日本人がインドを旅しているときに、市場で見慣れないものを見かけた。

「何だろう?」と思って近づいて見ると・・・、

 

こんな虫の揚げ物が山積みされていた。

 

日本では、昆虫を食べるという食文化はない。
昆虫を食べる人はいるけど、「日本の食文化」とまではいかない。

昆虫を食べることには、ほとんどの日本人が抵抗を感じるはず。

最近、新婚旅行で日本に来たイギリス人と話す機会があった。
そのカップルに聞いてみたところ、「イギリスには昆虫食はない」と言っていた。
もちろん例外はあるだろう。

でも、その気持ちはわかる。
これを口の中に入れるとしたら、かなりの勇気が必要になるから。

 

 

これはカンボジア人が蜂の子をとっているところ。
もちろん食うために。

ボクのじいちゃんも蜂の子を食べていたような気がする。
長野県では珍しくもない。

 

 

人はなんで昆虫を食べることに抵抗を感じるのか?

その理由は「虫を気持ち悪いと感じるから」ではなくて、「虫を食べないから、気持ち悪いと感じてしまうのだ」という学者もいる。
文化人類学者のマーヴィン・ハリスは、「食と文化の謎(岩波書店)」でこう書いている。

「わたしたちが昆虫を食べないのは、昆虫がきたならしく、吐き気をもよおすからではない。そうではなく、わたしたちは昆虫を食べないがゆえに、それはきたならしく、吐き気をもよおすものなのである」。

虫に問題はない。
人間が昆虫を食べないから、それはきたならしく、吐き気をもよおすもののように感じてしまうのだ。
そんな見方もあるらしい。

 

カンボジアで見たクモのフライ。
これは食べられなかった。
カンボジア人はビールのおつまみにクモを食べる。

 

ここでちょっと話がずれる。
「ゲテモノ食い」の「ゲテモノ」という言葉の由来を知ってまっか?

調べてたら、「下等」か「外道」のどちらからしい。

「げてもの」の「げて」には、等級の劣る意味の「下等(げとう)」や、本筋から外れる意味の「外道(げどう)」とする説があり、このどちらかと思われる。

「語源由来辞典」

 

ボクにはカンボジアのクモはムリだった。
でも、ハリウッド・スターのアンジェリーナ・ジョリーはおいしそうに食べている。
BBCの動画から。

 

BBCがこんな動画を公開している理由は、昆虫食が今、世界的な流れになっているからだろう。

人類はこれからも増え続ける。
人口増加による食糧難がおこる可能性は高い。
そういうわけで、国連では昆虫食を世界にすすめている。

世界が「これからは昆虫を食べようぜ!」という流れになったとして、日本人は昆虫を食べられるだろうか?

意外とできるかもしれない。
日本と世界の食文化の違いを見てみると、日本の食文化を変えることには、それほど高いハードルがないように思うから。

今回と次回で、そのことを書いていきたいと思う。
まず今回は、世界の食文化の具体例な例をあげていく。

 

「どの機内食を食べるか?」
それは個人の好みではなく、宗教によって決められている人が世界にはたくさんいる。

 

「あなたの宗教は?」

と日本人に質問したら、「わたしは無宗教です」と答える人が一番多いはず。

日本には宗教に関心がない人がとても多い。
ある調査によれば、「特に信仰を持っていない」という国民は70~80%もいる。

個々の国民へのアンケート調査等では、「何らかの信仰・信心を持っている、あるいは信じている」人は2割から3割という結果が出ることが多い。

「ウィキペディア」

「ほとんどの日本人は無宗教だ」ということを考えると、日本人が食文化を変えるハードルはそれだけ低くなる。
宗教によって食文化が決められていなかったら、「それを食べるかどうか?」は自分で判断することができるから。

 

世界を見わたすと、「何を食べていいのか?いけないのか?」という食文化は、宗教によって決められることが多い。
ここからは、「宗教による食のタブー」の具体例を書いていきたい。

 

まずはイスラーム教。
イスラーム教では豚を食べることを禁止している。

下の写真は浜松市のスーパーにあった「ハラール」のマーク。
「イスラーム教徒でも食べられますよ」ということを示している。

ただ、ハラールフードは「イスラーム教徒の食べもの」というわけではない。
キリストで教徒も無宗教の日本人でも食べることができる。
だから、ハラールフードは「イスラーム教徒用の食べ物」ではなくて、「イスラーム教徒も食べられる国際食」と言ったほうが正確だ。

 

 

インドのヒンドゥー教徒は牛を食べることができない。
ヒンドゥー教では、牛を神格化して聖獣と考えているから。

でも、ケララ州には牛肉を食べるヒンドゥー教徒もいる。

 

ユダヤ教にも食べ物のタブーがある。
ユダヤ教徒の場合、チーズバーガーを食べることが禁止されている。

ウィキペディアのチーズバーガーから。

チーズバーガーには挽いた肉とチーズが使われているため、ユダヤ教のカシュルートとは見なされない。「ミルクと肉を混ぜたもの」は、ハラーハーで禁じられている。
カシュルートの基本を成すこの規則は、出エジプト記中の詩で、「母の乳の中で子ヤギを煮てはならない」とされているのに基づいている。この禁止は、申命記の中でも再び登場する。

もちろん、ユダヤ教徒用につくられたチーズバーガーならOK。
だからイスラエルのマクドナルドでは、チーズバーガーを提供している。

 

 

「光の祭り」とも呼ばれるユダヤ教の「ハヌカ
これはニューヨークに住んでいるユダヤ教徒の家。

ニューヨークにはユダヤ教徒がたくさんいる。
「ジュー(ユダヤ教徒)・ヨーク」と呼ばれるほど。

興味があったらこれを読んでみて→ニューヨークはジューヨーク

 

タイでは宗教上の理由から、牛肉を食べない人がたくさんいる。
特にバンコクに多い。

タイのマクドナルドには「サムライ・バーガー」がある。

タイ人のガイドから、サムライ・ハンバーガーで豚肉を使っている理由を聞いた。
「牛肉を食べられないタイ人は多いですから。そういう人をターゲットにしているんです」
そういうことらしい。

 

最後はキリスト教。

15~16世紀に大航海時代と呼ばれる時代があった。

中学の歴史の授業で習ったと思う。
ヨーロッパ人がインド航路を見つけたり、アメリカ大陸へ到達(発見)したりしたのがこの大航海時代。
ヴァスコダ・ガマ、マゼラン、コロンブスといった人物が有名。

この時代、新大陸の南米から、それまでのヨーロッパにはなかった食べものが伝えられた。
その新しい食べものはジャガイモ。
英語でポティトゥって呼ばれるヤツ。

でもこのとき、ヨーロッパ人はジャガイモを食べようとはしなかった。
なんでヨーロッパ人は、ジャガイモを口にしようとしなかったのか?
その理由のひとつにこんなものがある。

「キリスト教の聖書に、ジャガイモのことが書いてないから」

キリスト教文化圏では「ジャガイモは聖書の出てこない食物。これを食すれば神の罰が下る」との文化的偏見も加わる。

「ジャガイモの世界史 (伊藤章治)」

ちなみにジャガイモの原産地は南米。

 

「どんなものを食べていいのか?ダメなのか?」という食文化が宗教によって決められるという考え方は、世界の常識になっている。

キリスト教徒なら当然、聖書でそれを確認する。
行動の基準を聖書に求めることは、今のイスラーム教徒もユダヤ教徒もまったく同じ。
ただ、信仰心の強さは人によって違う。

「宗教が食文化を規定している」という例は世界にたくさんある。
食文化を決めるもっとも大きな要因は宗教だろう。

食のタブー」にいろいろな具体例があるから、知りたい人はどうぞ。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。