アメリカとは③北部がリベラルで南部が保守の理由。キリスト教がカギ

 

前までにこんなことを書いた。

アメリカはメチャクチャ広い。
面積は日本の約25倍。

カリフォルニア州だけで日本とほぼ同じ同じ大きさがある。

 

そんな広大なアメリカは北部と南部に分けられる。

上の赤いところがアメリカ北部(ウィキペディアから)

 

下の赤いところがアメリカ南部(ウィキペディアから)
*これは一応の目安と考えてほしい。
情報源によって北部や南部の指す範囲が変わってくるから。

 

アメリカの北部と南部とでは、人々の価値観や考え方も違っている。

北部にはリベラルな考え方をしている人が多い。
自由主義(リベラリズム)な考え方では、伝統や慣習よりも個人の選択や判断が重視される傾向が強い。

個人などが自由に判断し決定する事が可能であり自己決定権を持つとする思想・体制・傾向などを指す用語。

「ウィキペディア」

一方、南部では保守的な考え方をしている人が多い。
保守とは、「旧来の風習・伝統・考え方などを重んじて守っていこうとすること(デジタル大辞泉の解説)」。

北部と南部の人たちの考え方の違いは、人気のある政党の違いからも見て取れる。

北部では民主党の支持者が多い。
南部では共和党の支持者が多い。

前回までに書いたのはそんな内容。
今回書きたいのはこんなこと。

なんで北部にはリベラルな考え方をする人が多くて、南部には保守な考え方の人が多いのか?
その理由についてこれから書いていく。

 

 

人間の価値観や考え方に大きな影響を与えるものって、なんだろう?

宗教は間違いなくそのひとつだ。
宗教が人々をまとめて動かす力は本当に大きい。

宗教の違いが原因になって、新しい国が生まれることもよくある。
スペインから分離独立したオランダやインドから分離独立したパキスタンなどがその例だ。

個人を見ても、「ある宗教の信者になった」と聞いたらビックリする。
価値観や考え方の変化をあらわす例として、これほどのものはなかなかない。

 

アメリカの場合、キリスト教がアメリカ人の価値観や考え方の基礎的なものになっている。

アメリカの建国者である合衆国憲法制定者たち(founding fathers)は、聖書の原則に則(のっと)って建国しました。
聖書がこの国の基礎の重要部分です。多くの学校では聖書を教科書にして、歴史や文学などを教えているほどです。

「聖書で読むアメリカ (石黒マリーローズ)」

エルサレムにある聖墳墓教会
ここにイエス・キリストの墓がある。

 

アメリカの北部と南部の人たちを見ると、キリスト教への宗教心に大きな違いがある。

南部には熱心なキリスト教徒が多い。
北部には、宗教から距離をとっている人がたくさんいる。全体的に南部より宗教心は薄い。

宗教の考え方は時代によって大きく変わることがない。
キリスト教を深く信じていれば、保守的な考え方になってもおかしくはない。

宗教心の強い人だったら、昔ながらの伝統的な価値観や考え方を大切にするだろうから。
そのことは日本の常識から考えても分かると思う。

一方で北部の人たちは、そうしたキリスト教的な価値観や考え方から離れるぶん、リベラルな考え方になりやすい。
そういう傾向はきっとあるだろう。

 

 

アメリカ南部には信心深いキリスト教徒がたくさん住んでいることから、「バイブル(聖書)・ベルト」」と呼ばれることがある。

バイブル‐ベルト(Bible Belt)キリスト教篤信地帯。特にアメリカ南部および中部の、聖書を字義どおりに信じる正統派キリスト教徒の優勢な地域をさす。

「デジタル大辞泉の解説」

赤いところがバイブル・ベルト(ウィキペディアから)。

 

このバイブル・ベルトとアメリカの南部の範囲はほぼ同じ。

ジャーナリストの池上彰氏がアメリカの共和党と民主党の党の党大会を取材している。
そのときに、両党の違いをハッキリ感じたという。

大会の参加者がまるで違う。

ニューズウィーク誌の共和党と民主党どこが違うにはこう書いてある。
民主党の党大会の様子。

白人、黒人、ヒスパニック、アジア系と、実にさまざまな人種が写っています。ターバンを巻いたインド人(シーク教徒)も目立ちます。女性の多さも特徴的です。

キリスト教徒だけではなく、いろいろな宗教や人種の人たちが参加している。

 

これに対して、共和党の党大会の様子は?

中年の白人男性が圧倒的で、一部に高齢の白人女性が混じっていました。

人種としては白人にかたよっている。
この人たちのほとんどがキリスト教徒だろう。

 

 

アメリカの北部と南部で、なんでこんな違いが生まれるのか?

北部(ニューヨーク)出身のアメリカ人にその理由を聞いてみたことがある。
そのアメリカ人は、「北部は都会で南部は田舎が多いから」と簡単に言う。

北部には大都市が多く、いろいろな人種や宗教の人たちがいる。
だから、様々な価値観や考え方に触れる機会が多い。

そんな北部に比べると、南部では人種や宗教が入り混じってはいない。
南部の住民はキリスト教徒の白人がとても多い。

「南部では、自分とは違う人間から刺激を受けることが少ない。だから、保守的な考え方をする人が多いんでしょ」と話していた。

 

ウィキペディアでもアメリカ北部の特徴をこう書いている。

南部に比べ、古くから海外とのかかわりが多いため、海外の文化が多く混じる(対する南部は、独自のユニークな文化を持つ)。また、周辺地域からの影響もあり、南部やカナダの文化も混じる。

 

日本を見ても、東京や大阪の都市部の人たちと地方の人たちとでは、価値観や考え方は大きく違う。

地方の人は変化を嫌って、昔からの伝統的な考え方を好む人が多い。
日本でも保守的な人は地方に多く、リベラルな考え方の人は都会に多い。

 

アメリカの北部と南部の違いもそのようなものだろう。

北部では、様々な価値観に触れる機会がたくさんある。だから、リベラルな考え方の人が多い。
宗教心の強い南部では、キリスト教の伝統的な考え方が支配的だから保守的な人が多くなる。

 

 

アメリカの事情やキリスト教文化にくわしい石黒マリーローズさんはこう書いている。

「よい書物(the Good Book)」とか、「書物の中の書物(the Book of Books)」ともよばれる聖書が、世界中の何億という人の日常生活となっていますが、キリスト教が生活の中に根付いているアメリカでは、もちろん、聖書は日常生活に欠かせません。

「聖書で読むアメリカ (石黒マリーローズ)」

こういうアメリカ人は特に南部に多い。

 

この写真は南部の州に住んでいるアメリカ人がSNSに投稿したもの。

この人は寝る前に聖書を読む時間を本当に大切にしている。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。