旅行会社のツアーで出会うのはプロ少数民族。もはや忍者村。

 

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海外旅行に行く目的はたくさんある。
ボクの場合、そのひとつに「少数民族に会いたい!」というのがある。

日本にはそこらじゅうにコンビニはあるし、電車や地下鉄が発達している。
生活するには便利だけど、どこに行ってもあまり変化がない。
日本のどこに行っても、似たような服を来て同じような生活をしている。
島国ということもあって、日本はどうしても画一的になってしまう。

 

その点、海外はちがう。
都市から遠く離れた少数民族の村には、今も伝統的な生活や習慣が生き続けている。

たとえば、下の写真。
これはエチオピアの少数民族「ムルシ族」の人。
この民族は、唇にお皿を入れることが「美しい」と考えられている。
世界にはこんな文化もある。

 

 

その民族に昔から伝わる民族衣装や飾りというのは本当に魅力的。
今までに行ったなかでは、インドの少数民族の村が良かった。

 

こちらはインドのカッチ地方の女性

 

こちらはインド北部のおばあちゃん
頭に生花をのせている。

 

ただ、少数民族の村に行ってみたものの、「期待はずれでガッカリした」ということもある。

もうすっかり近代化されていて、その民族の伝統的な衣装なんて着ていない。
村の人たちはTシャツにジーンズという姿で携帯電話で話をしている。

そういう実態を知らずに、期待して行くとガッカリしてしまう。

海外旅行のおもしろさは違いだ。
日本と同じような光景だったら、その国まで行く必要はない。
地球上のすべての人が同じような服を着ていて、スマホをいじっていたらつまらない。

 

 

タイは他民族国家で、国内にはいろいろな民族が住んでいる。

とくにタイの北部はいろいろな少数民族の村があることで有名。
そうした村を訪ねるツアーは観光の目玉になっていた。
今でもそうだと思う。

 

独特の民族衣装や生活文化を見に行くツアーは、外国人の間でとても人気がある。
タイを旅行中、そんなツアーに参加したという日本人の旅行者に会った。

ボクもチェンマイでそんなツアーに参加したいと考えていたから、その人からツアーの様子を聞いてみた。
その旅行者は開口一番でこう言う。

「やめときな。もう遅すぎるから」

「遅すぎる」というのは、旅行会社のツアーで行く村はすでに近代化・観光化してしまっている、ということ。

 

その人がある少数民族の村に行ったとき、そこにいた人たちを見て違和感をおぼえたという。
その民族の人たちの手首が白い。
その理由は簡単で、彼らが腕時計を外していたから。
そこだけ日焼けしていなかったから、不自然に白くなっていたというだけのこと。

ガイドから話を聞いて、その人が驚く。
その少数民族の人たちは、普段はタイの都市部の人とあまり変わらない生活をしているという。
彼らは外国人の観光客が来ない間は、Tシャツにジーパンというかっこうをしている。
腕時計はしているし、コーラも飲んでいる。

旅行会社から連絡を受けると、Tシャツとジーンズを脱いで民族衣装に着替える。
そして観光客を迎えている。

 

タイの少数民族の家

 

ガイドからこの話を聞いたとき、その日本人のからだは「コレジャナイ感」につつまれた。

そんな経験をしたから、「やめときな。もう遅すぎるから」という言葉がでてきたらしい。
もし本当に、伝統的な生活をしている少数民族の村に行きたかったら、専用車をチャーターしてガイドを雇った方がいいと言う。

でも、その人の話はきっと正しい。
旅行会社のツアーでまわる少数民族の村というのは、もうそんな感じなんだろう。

 

少数民族の人たちにとってはいろいろな都合や自分たちの生活があるのだから、それは仕方がない。
観光客の自分たちは21世紀の生活をしていて、少数民族の人たちには「200前の生活をしてほしい」と言うのは無理がある。
それが時代というものなんだろうけど、昔ながらの本来の生活が見れないというのは残念。

これと同じことはアフリカのマサイ族にもいえる。

 

 

ケニアのマサイ族の村を訪れた旅行者からも、「がっかりした」という話を聞いたことがある。

理由はタイの少数民族と同じ。

「もう、アフリカらしさが残ってないんですよ。彼らは腕時計をしていたり、携帯電話を持っていたりしてますし。すっかり近代化しちゃっているんです。マサイ族の民族衣装を着てはいるんですけど、それは旅行客を喜ばすために着ているんです。観光客のために、マサイ族のかっこうをしているんです」

 

「彼らは近代的な生活から遠く離れていて、アフリカの伝統的な生活をおくっている」
マサイ族に対してそんなイメージをもっていると、現実を知って打ちのめされる。

2011年のアメーバニュースにもそんな記事がある。

ではどのような生活を送っているのだろうか。実は普段は民族衣装を着ておらず、ジーパンにTシャツと言った一般の若者の格好、更にはロレックスなどの貴金属や高級財布まで持ち歩いている。

ケニアの先住民マサイ族 変わりつつあるその生活と裏事情

「今のマサイ族はそんなもんだ」と知っている人にとっては当たり前のことだけど、ボクにはこのマサイ族の真実は衝撃的だった。

 

この記事によると、マサイ族の多くは村で生活していない。
彼らは大都市のナイロビに住んでいるという。
それで朝になると、車でマサイ族の村にやってくる。

「日本のサラリーマンが車で出勤するのと変わらないじゃないか」と思ってしまうけれど、それが現代のマサイ族の姿だ。
それで村に着いたらマサイ族の民族衣装に着替えて、観光客をむかえる。
観光客が帰ったら、民族衣装からTシャツとジーンズに着替える。
そして車でナイロビに戻る。

これが今のマサイ族の姿らしい。

これではタイの少数民族と変わらない。
外国人の観光客が来るようになると、どうしてもこうなってしまうのかもしれない。

 

今では海外の少数民族というのは、「そういう仕事」だと思っている。

日本の忍者村の忍者と同じ。
彼らも仕事で忍者をしている。
勤務時間が終わったら、忍者の衣装から私服に着替えて車や電車で自宅に帰る。

旅行会社のツアーで見る少数民族の人たちもそれと同じ。
今は、メオ族とかマサイ族とかいうのはそういう仕事の名前と思っている。
彼らは少数民族という仕事をしているプロなのだ。

言ってみれば、プロ少数民族の人たち。
忍者村の忍者と同じ。

実際のところ、外国人が簡単に行くことのできる少数民族の村はそんなもんだと思う。
本当に昔ながらの生活をしている少数民族の村に行きたかったら、旅行会社に専用車やガイドを頼んだほうがいい。

 

 

外国人の旅行者が今の日本を見て、「サムライがいない!」とか「着物を着てないじゃないか!」と文句を言ってもどうしようもない。
今さら江戸時代の生活なんてできるわけがない。
時代村に行って昔の日本の雰囲気を楽しむしかない。

海外で旅行会社のツアーでまわる少数民族の村もそれと同じ。
彼らはプロの少数民族だ。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。