東京駅にイスラム教徒の祈祷室(祈りの部屋)が。注目点はここ。

 

「富士山を見てみたいです!」

とイスラーム教徒のインドネシア人が言うから、彼を富士山へ連れて行くことにした。
ついでに台湾人と香港人もいっしょに。

この時は富士五湖をまわっただけで、山に登ったわけじゃない。

インドネシア人・台湾人・香港人、このなかで一番富士山をよろこんだ人はだれか?

香港人だった。
香港はとても小さい。
香港はせまくで自然が少ないから、湖のうしろに大きな富士山が見える風景に香港人が興奮していた。

 

田貫湖に行った時に、ちょっとした事件がおきた。

みんなが車から降りた後、気がついたらインドネシア人がいなくなっている。
彼が失踪しっそうしてしまった。

「きっとトイレに行ったんですよ」という香港人の言葉に納得して、そのインドネシア人はほっとく。
10分ぐらいで彼が戻って来た。
話を聞いたらトイレではないという。

「ちょうどお祈りの時間でしたから。お祈りをしていました」

 

インド礼拝

お祈りをするイスラーム教徒の女性

 

イスラーム教徒は1日に5回お祈りをすることになっている。
彼と京都旅行をした時も、彼はユースホステルの床にじゅうたんを広げてお祈りを始めた。
それを見て内心驚いた。

田貫湖に着いた時間が、ちょうどお祈りの時間と重なったらしい。

「なんだ、お祈りか。それじゃ仕方ないね」という以前に、一言いえよコラ。

彼が言うには、みんながいる前でお祈りをするのは恥ずかしかったらしい。
それで離れたところで一人、メッカの方向にお祈りをしていた。

日本で生活しているイスラーム教徒の場合、お祈りの時間になってもその場所を見つけるのに苦労することがある。

「浜松駅にお祈りをするところをつくってほしいです」

このインドネシア人はよくそんなことを言っていた。
イスラーム教徒にはイスラーム教徒の願いがあることは分かるけど、浜松駅には浜松駅の事情もあるのだ。
ここに浜松駅にお祈りをスペースをつくるのはむずかしい。
要望を伝えると同時に、その社会のルールに従うことも大事で、一方的に自分たちの要求をしていたなら、共生なんてムリムリ。

 

でも最近、東京駅にイスラーム教徒のお祈りスペースができたから、ここなら彼の心配は過去のものになった。

 

 

日本経済新聞の記事(2017/6/2)にこの祈祷きとう室のことがくわしく書いてある。

祈祷室は8平方メートルと2人程度が入れるほどの広さで、5日から利用できる。1年中利用でき、平日の場合は午前8時30分から午後7時まで入ることができる。

東京駅にイスラム教徒向け祈祷室 JR東日本

この祈祷室にはイスラーム教徒でなくても入ることができるらしい。
だから無宗教の日本人でも、この中に入ってイスラーム教について知ることができる。
ちょっと時間があるときに、ここをのぞいてもいい。

 

イスラーム教徒がお祈り(礼拝)をするところを「マスジド」という。
マスジドとは「ひざまづく場所」という意味のアラビア語だ。

アラビア語のマスジドが英語のモスクになっている。
だから、マスジドもモスクも同じ場所(イスラーム教徒が神に礼拝する施設)をさしている。

 

イエメンのイスラーム教徒の女性

 

東京駅の祈祷きとう室を見るときのポイントを1つだけ書いておきたい。

イスラーム教と仏教やキリスト教とのもっとも大きな違いの1つは、「像がない」ということ。
イスラーム教では、仏像やキリスト像のような像(偶像)をつくることを禁止している。

この理由は、偶像を崇拝すうはいするという行為が神(アッラー)の神聖をけがすことになるからだという。

神は万物をつくった存在であるのに、神の被造物の1つにすぎない像を拝むなど、途方もない瀆神行為である

「イスラム原論 (小室直樹)」

「神(アッラー)以外のものを拝んだら、それはアッラーを冒とくする(神聖をけがす)ことになる」ということだろう。

 

ここでちょっと考えてほしい。

もし仏教のお寺に仏像がなかったら?

仏像がなかったら、どこに祈っていいのか分からなくなってきっと困る。

でもイスラーム教にはそんな像はない。
イスラーム教の場合は、像がなくても祈りをする方向さえわかればいい。
その方向とは、カーバ神殿があるサウジアラビアのメッカの方向。

イスラーム教の礼拝所には神像がないけど、メッカ(カーバ神殿)の方向をしめすものがある。
モスクの中をのぞくと、壁のある面にへこみがあることに気づくはず。

そのくぼみがメッカの方向をしめすミフラーブというもの。

ミフラーブ(〈アラビア〉mihrāb)

モスク内部にある、カーバ神殿の方向にあたる側に作られた壁龕(へきがん)(壁のくぼみ)。この方向に向かって礼拝を行う。

「デジタル大辞泉の解説」

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これはパキスタンのモスクにあったミフラーブ
モスクの中ではミフラーブがとても重要な部分だから、ここはきれいに装飾されていることが多い。
モスクに入ったら、ここは必ず見てみよう。

 

ミフラーブのようなくぼみがなくても、メッカをしめす方向さえ分かればいい。

だからこんな簡単な矢印でもOK。

 

カタール航空の飛行機では、こんな矢印でメッカの方向をしめしていた。

 

東京駅の祈祷室にも、メッカをしめすものがきっとある。
チョイと時間があったら、それが何か見てみよう。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。