日本に来るイスラム教徒は増加中。つき合う時の絶対の注意点。

 

ぶっちゃけた話、ムスリム(イスラーム教徒)を「なんかアヤシイ」と思っている日本人は多いと思う。

ボクが「インドネシア人やチュニジア人のイスラーム教徒といっしょにいた」と言うと、「大丈夫なの?」と不安げに聞いてくる人もいた。
それも1人や2人ではない。

 

そんな言葉を聞くと「いやいや、おまえこそ大丈夫か?」という気もする。

その人がイスラーム教徒を好きでも嫌いでも、これから日本に来るイスラーム教徒は確実に増えるから。
日本の社会全体を見ても、イスラーム教徒を迎える方向に進んでいる。

たとえば今年(2017年)には、東京駅にイスラーム教徒のための礼拝スペースができた。

 

イスラーム教では、豚肉を食べることを禁止されている。
日本に観光や仕事で来るイスラーム教徒のために、彼らが食べられる物(ハラルフード)を用意するホテルや会社も増えている。

毎日新聞の記事(2016年7月26日)から。

大手企業が社員食堂でイスラム教の戒律に沿った食事を用意したり、礼拝室を設けたりするなどの対応を進めている。

「進む企業内対応 社食にハラルフード、礼拝室整備 東南アジアと関係強化で」

ハラルフードをしめすマーク。
浜松市のスーパーにあった。

 

今の日本は、「イスラーム教徒とつき合って大丈夫?」なんて言っている場合ではない。

これからたくさんのイスラーム教徒が日本に来るのだから、それなりの準備や心がまえをしておいたほうがいい。

といっても、別にイスラーム教徒とつき合う必要はない。
付き合いたい人だけがすればいい。

でも、相手を怒らせるようなことをしてはいけない。
そのためには、イスラーム教という宗教について知る必要がある。

今回は「これだけは絶対にしてはダメ!」ということを書いていきたい。
ある日本人女性がそれをして、大問題になったことがあるから。

 

ハラールマーク

 

「イスラーム教について理解を深めることが大事ですよ」といっても、宗教の知識をつめ込むということではない。

イスラーム教がいつ、どんな社会的背景から生まれたのか?
どんな教えなのか?

こうしたことは高校の世界史で覚えたらいい。
その前の段階として、イスラーム教に限らず、「宗教というものは、信者にとってどれだけ大事なもなのか?」ということを何となくでも頭に入れておこう。

 

日本には、無宗教で宗教に関心がない人がとても多い。
そのおかげで宗教による争いがないから、平和に過ごせるというメリットはある。

けど、外国人の宗教心を理解するうえではマイナスだ。

 

これは、あるバングラデシュ人のイスラーム教徒から聞いた話。
彼が日本にいたとき、バイト先の日本人にだまされて豚肉を食べさせられてしまった。

自分が食べた肉が豚肉だと聞いて、すぐに飲み込んだものを必死に吐き出そうとしたけど、すべてを出すことはできなかった。
日本人のバイトは悪気はなく、「いたずら」でこれをやっている。

でも、これはいたずらですむレベルを超えている。
海外でこれをやったら、逮捕案件かもしれない。

 

イエメンの空港にあるイスラーム教徒のための「お祈りの場所」。

 

イスラーム教には、クルアーン(英語読み:コーラン)という聖書がある。

コーラン(クルアーン)

イスラーム教の根本聖典。
アラビア語で「音読されるもの」を意味する。天使ガブリエルによってムハンマドに啓示された、神の教えの記録とされる。
114章からなり、第3代正統カリフのウスマーンの時代に現在の形にまとめられたとされる。

「世界史用語集 (山川出版)」

イスラーム教徒にとってクルアーンは神(アッラー)の言葉で、とても神聖なもの。
これを冒とくする(神聖なものや清浄なものをけがすこと)ことは、絶対に許されない。

それをすると、国際問題にもなる。
例え知らなかったとしても。

 

2001年の富山県でそんな事件が起きた。
いわゆる「コーラン破り捨て事件」だ。

20代の日本人女性がクルアーンをはさみで切って捨ててしまう。

この女性は、イスラーム教に対して敵意があったからこうしたわけではない。
父親に恨みがあったから、父を困らせてやろうと思って、クルアーンを切り裂いたという。

でも、これは一線を越えている。

日本中のイスラーム教徒がこれを知って大激怒。
各地のイスラーム教徒が富山に集結して、とんでもない騒ぎになった。

くわしくはこの記事を↓

タブー①無宗教の日本人は要注意。コーランを破り捨て、国際問題に。

 

もし、海外でクルアーンを冒とくしてしまったらどうなるか?

イスラーム教の影響が強い国では、殺されてしまうことがある。

2015年に、アフガニスタンの首都カブールで考えられないような事件が起きた。
当時27歳のアフガニスタン人の女性が「クルアーンを燃やした」として、人々に暴行されて殺されてしまったのだ。

それも凄惨せいさんな方法で。

CNNがそのニュース(2015.05.07)を伝えている。

事件は3月19日に起きた。ファルクフンダさん(当時27歳)は男たちから殴る蹴るの暴行を受け、体に火をつけられたうえ、橋から川へと投げ落とされた。

事件の一部始終はビデオ撮影され、世界中で反響を呼んだ。すでに血まみれのファルクフンダさんが怒る男たちに囲まれ、蹴られたり石や板で殴られる様子が捉えられている。

「コーラン焼却」で女性殺害、4人に死刑判決 アフガン

このリンチ殺人をおこした人たちは、タリバンのような過激な思想をもった人間ではない。
ふつうの若者だ。

しかも、ファルクフンダさんがクルアーンを焼いたという証拠も見つかっていないという。

 

 

ここまでひどくないけれど、日本人がたくさん住んでいるインドネシアでも、2016年に事件が起きている。

首都ジャカルタで、キリスト教徒の知事(アホック氏)が「クルアーンを冒とくした」と非難されて警察で事情聴取を受けた。
じゃかるた新聞の記事(2016年10月08日)から。

アホック氏は「ユダヤ教徒とキリスト教徒を仲間としてはならない」とするコーランの第5章第51節に触れ、「コーランの51節に惑わされているから、あなたたちは私に投票できない。(中略)地獄に落ちるのを恐れて投票できないというのであれば、仕方ない」と述べた。

「イスラムを侮辱した」 アホック氏発言が波紋 コーランに言及

知事のこの発言にイスラーム教徒が激怒する。
ジャカルタでは約10万人が参加するデモが発生した。

その一部が暴徒となって暴れ出したため、治安部隊が催涙ガスや放水でこれを鎮圧する。
結果、160人あまりが負傷する騒ぎになった。

 

 

イスラーム教徒が嫌いだったら、つき合わなければいい。
でも、相手を不快にさせてはいけない。

日本人は基本的に礼儀正しい、と世界で言われている。
そんな日本人でも、富山の女性のように宗教に対する無知から、相手を怒らせてしまうかもしれない。

 

やってはいけないことだけど、あるイスラーム教徒をなぐったとしても、それは自分とその人との問題だ。
でも、神聖なクルアーンを冒とくしたとなると、個人的な問題では終わらない。
富山の事件は2001年のものだったけど、インターネットが発達した2017年の今、クルアーンを破り捨てる事件が起きたら、どれぐらいの騒ぎになるか想像がつかない。

外国にいるイスラーム教徒をも怒らせることになる。
海外のイスラーム圏にいる日本人にも、何らかの影響が出るだろう。

 

イスラーム教徒にとってのクルアーンは、日本人にとっての「位牌」のようなものだ。
身内の魂の入った位牌は、「火事になったとき、これだけは持って行く」というぐらい日本人にとって大事なもの。

クルアーンを破り捨てるというのは、位牌を壊すことと同じ。
仏教徒だと異教徒になるから、クルアーンには触らないほうがいい。

経験上、宗教のタブーさえおかさなかったら、イスラーム教徒と接することに問題ない。
日本人とは価値観や考え方が違うから、いろんな発見があって、それはそれでおもしろい。

 

 

こちらもいかがですか?

イスラーム教 「目次」

イスラム教のタブー③聖書コーランを燃やしたら、どんな事態になるか?

タブー①無宗教の日本人は要注意。コーランを破り捨て、国際問題に。

校則でポニテ禁止!イスラム教と同じ理由。女は男の欲情をあおるから。

タイ人が牛肉を、イスラム教徒が豚肉を食べない理由:観音様とハラール

 

2 件のコメント

  • コーランが彼らとって大切なのは理解できますが、その価値観を他人にも求めるのは?と思います。非イスラム教徒にとってはコーランは重要ではない、と理解する姿勢も必要では?わざとコーランを焼く行為が良いと言っているのではないですが。
    これだから神の風刺画を描くぐらいで射殺が起きるのです。自分の気を害されたからといって、他の人が信じない、信じる必要もない自分の神を冒涜されたからといって、命を奪う必要はありません。

  • 日本に住んでいた友人のイスラム教徒は寛容で、日本のお寺や神社で手を合わせていました。
    でも礼拝ではなくて、「日本文化を尊重する」という意味で。
    彼は熱心なイスラム教徒ですけど、「イスラム教だけが大事」とは思っていません。
    彼は世界で犯罪を犯すイスラム教徒を、「イスラム教徒ではなくて犯罪者、テロリスト」と非難していました。

    風刺がでいえば、裁判所に訴えてその国の法の範囲内で争うべきでしたね。
    その事件以来、オランダやフランスの空気は変わったと思います。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。