中国人が支える日本の伝統文化③ 日本人も頑張りましょ。

 

はじめの一言

「みっともない恰好をした女は、休息した場所でふつう置いてゆくことになっている二、三銭を断固として受けとらなかった。私がお茶ではなく水を飲んだからというのだ。私が無理に金を渡すと、彼女は伊藤(同行の通訳)に返した。
(バード 明治時代)」

「逝きし日の面影 平凡社」

 

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最近は、日本の職人の仕事の良さを認めて、高い値段で作品を買っていく中国人が増えているらしい。
2、3年前に、百貨店に来た陶器造りの職人さんからそんな話を聞いた。

今の日本人には、「なるべく安く物を買いたい」という気持ちや「質より安値」という価値観がとても強くなっていて、品質の高い物をつくっても買ってくれないという。

 

確かに今の日本には、「価格破壊!とにかく安いものを!」という風潮があると思う。
そう言う自分も、間違いなくそんな価値観をもっている。

 

その職人さんが言うには、昔は職人が百貨店に出向いて自分が作った物を売ることはなかったという。
でも、今は作ったら誰かが買いに来てくれる時代ではない。
だから、自分で作品を箱詰めして車で運び、百貨店で陳列して売らないと食べていけないらしい。

 

百貨店に出向いて、自分の作品を見たお客さんの反応を知ることは良い機会だと言う。
でも、こんなお客さんがいるとやる気がなくなるらしい。

 

「これ、いいわねえ、でも、高くて手が出せないわ~。私は見ているだけでいいの。100円ショップの陶器で十分だから」

悪気はないのだろうけど、こう言われて良い思いをする職人はいない。
「高い」と思うかもれしれないけれど、その職人には「その値段の価値がある」という自信がある。

 

「やかん」を作る職人さんからも、似た話を聞いたことがある。
今、中国のお金持ちの間で日本製のやかんが人気で、中国向けの輸出が増えているらしい。
その人が接してきた中国人の感じだと、中国人は「本当に質の高い物」に対しては、日本人よりはるかに気前よくお金を払ってくれる。

 

上海の中国人ガイドからは、こんな話を聞いた。
上海のお金持ちでは、家に畳を敷いた部屋と洋風の部屋をつくっておく。
そして、客に「どっちの部屋がいい?」と自慢げにきくことがあるらしい。

 

これを聞いたときに、不思議に感じた。

「中国人は、日本が嫌いじゃないんですか?」

ガイドは、こんなことを言う。

「日本の政府や歴史の考えは嫌いですよ。でも、日本のものは質がいいですから、みんな好きです。それに、高くても日本製を持っていることは、ステータスにもなります。反日デモをするのは、仕事がない少数の中国人だけですよ」

 

そういえば、中国を旅行していたとき、ふらりと入ったケンタッキーで「ワンピース」がデザインされた商品を見た。
その2年前には反日暴動が起きて、日本のショッピングセンターが「焼き討ち」されたばかりなのに。

 

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先ほどのやかんを始めとして、日本の伝統文化を買い支えている日本人の割合が減って、中国人の割合が増えていることは間違いないだろう。
もちろん、全体としては日本人の方が多いと思うけど、そのデータが見つからない。

 

「日本の伝統文化は、中国人が支えている」という、この記事のタイトルは、ちょっと大げさな表現だと思うけど、そういう印象はある。

 

最近、テレビで外国人が「日本の職人はすごい!伝統文化はすばらしい!」と言っている番組をよく見る。
そして、その言葉を聞いてそこにいる日本人が誇らしくうなづいている。

先ほどのような職人さんは、どういう思いでこうした番組を見ているのだろう?

 

職人さんにとっては、自分が作った物の価値を認めてくれて、相応のお金を出してくれる人がありがたい存在のはず。
本音を言えば、日本人に買ってもらいたいかもしれないけど、「100円ショップの物で十分」と言われたらどうしようもない。

 

そろそろ、日本人の価値観を「激安重視」から「ちょっと値がはっても、価値ある職人さんの物を」というふうに変えていってもいいと思う。
いくら価格破壊でも、壊してはいけないものもある。

 

日本の伝統文化や職人技を誇らしく自慢に思うのなら、「自分たちが、日本文化を支える」という自覚をもっと持ったほうがいいと思う。

 

ボクも職人さんの話を聞いてから、ちょっと高めの物でも日本人の職人さんがつくったものを買うようにしている。
まあムリのない範囲で、大した額ではないけれど。
20万円のやかんなんて、とても買えない。

 

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日本が世界に誇る伝統文化に「鍋島焼」がある。
これを守り伝えてきたのは鍋島藩だけど、この藩がとんでもない財政難になったことがある。
このときは、「役人を5分の1に削減するなどで歳出を減らし(ウィキペディア)」というかなり思い切った「役人切り」をして、何とか鍋島焼を守っている。

 

「日本の伝統文化を誇らしく思う」というのなら、少々値が張ってもちょっと無理して、日本の職人さんの作品を買ってもいい。
高い分は「日本文化の保護費」だと思って。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。