ミャンマーのロヒンギャ問題。世界が批判すると国民は支持する。

 

最近、知り合いのバングラデシュ人がSNSにこんな投稿をしていた。

 

 

「ビルマでの人殺しをやめろ」というミャンマーへのメッセージを伝えている。

これは前に記事で紹介したものと同じ。

この2つの投稿は、「ミャンマー政府はイスラーム教徒(ロヒンギャ)を殺すのをやめろ」と訴えている。

ここ最近、ミャンマーのロヒンギャ問題について日本でもよく報道している。
だから、聞いたことがある人は多いと思う。

 

ロヒンギャの人たちはバングラデシュとの国境に近いアラカン州というところに住んでいる。
この地図でいうと北海道のあたり。

 

ここで今、ロヒンギャがミャンマー政府から迫害を受けている。

国連や世界のメディアが「民族浄化」や「大虐殺」と呼ぶほど重大な事態だ。

2017年の8月にロヒンギャの武装集団がミャンマーの警察を襲ったことで、ロヒンギャ武装勢力とミャンマー国軍との間で大規模な戦闘がおこなわれた。

その混乱のなかで、村を焼かれて住みかを失ったロヒンギャがバングラデシュに逃れてきた。
避難民の数は40万人を超えるという。

 

日本でいえば、岐阜市や宮崎市の人口とほぼ同じ。
これだけの人間がやって来たら、受け入れるバングラデシュ側も大変だ。

なかには野生のゾウに踏み殺された人もいる。
フランスAFPの記事から。

バングラデシュで18日、プラスチックのシートで森の近くに組み立てたテントの中で寝ていたイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の難民の老人2人が野生のゾウに踏まれ、死亡した。地元警察が明らかにした。

ロヒンギャ難民の老人2人、就寝中ゾウに踏まれ死亡 バングラデシュ

アウンサンスーチー(ウィキペディアから)

 

今、国際社会はミャンマーの事実上の指導者であるアウンサンスーチー氏を厳しく非難している。

「アウンサンスーチー氏はロヒンギャ問題に対して何も取り組んでいない。解決に向けて動くべきだ」と国連や世界中のメディアがスーチー氏に訴える。

読売新聞も社説(2017年09月21日)でスーチー氏の責任を追及していた。

国際的な批判が高まるまで問題を放置したスー・チー氏の対応は看過できない。
19日の国民向け演説で、「全ての人権侵害や不法な暴力を非難する」と述べて、ロヒンギャ迫害をようやく認めた。ただ、国軍は行動規範に従っているとして、正当化する発言もあった。
ロヒンギャ迫害 スー・チー氏は傍観続けるな

ローマ法王もこの問題についてはロヒンギャの側に立っている。

 

 

この写真は、知り合いのミャンマー人がSNSに設定したプロフィール画像。
左の女性が最近この画像に変えた。

「We Sand With You(私たちはあなたと共にいる)」と全力でアウンサンスーチー氏を支持している。
今ミャンマーでは、こんなプロフィール画像にしている人が数十万人もいるらしい。

 

アウンサンスーチー氏がこうした国民の声を無視することなんて、できるわけがない。

今ミャンマーでは逆転現象が起きている。

国際社会がスーチー氏を非難すればするほど、ミャンマー国内ではスーチー氏への支持が集まっている。
世界がスーチー氏を厳しく批判するからこそ、国民はスーチー氏を守ろうとする。
それがミャンマーを守ることにつながると考えるから。

内外の声のギャップが大きくなればなるほど、スーチー氏の立場はより厳しく難しいものになる。
「わたしはアウンサンスーチーを断固支持する!」という声が本人を困らせていると思う。

 

 

ミャンマー人はロヒンギャ問題をどう考えているのか?

「ミャンマー政府は、イスラーム教徒(ロヒンギャ)を殺すのをやめて」というこの投稿に対して、ミャンマーの人たちは次のように反応している。

「Muslim are killing Burma」

「Not killing Muslin , killing terrorists. Don’t trust fake news」

「We don’t kill Muslim. We protect our country from terrorists」

・ムスリム(イスラーム教徒。ロヒンギャのこと)がミャンマー人を殺している。
・ミャンマーはイスラーム教徒を殺してはいない。わたしたちは、ミャンマーをテロリストから守っているだけ。
・フェイクニュースを信じるな。

また、「ロヒンギャは難民をよそおって、ミャンマーの土地を奪おうとしている」というコメントもあった。

 

国際社会とは正反対だ。
欧米や日本のメディアのように、「ミャンマー政府はロヒンギャ迫害をやめろ!」という意見は1つもなかった。

これがミャンマー国民の声と考えていいだろう。
スーチー氏を批判する声もあるとは思うけれど、実質的には“ない”といっていいと思う。

毎日新聞の記事(2017年9月20日)によると、ミャンマー国民はロヒンギャに対して冷たい視線を送っている。

ただミャンマーは国民の約9割が仏教徒であるうえ、ロヒンギャは長く不法滞在者扱いされてきた。最大都市ヤンゴンではロヒンギャの悲惨な状況に「同情しない」と話す人もおり、問題解決は簡単ではない。

ロヒンギャ問題 市民、反応は冷ややか

ロヒンギャはラカイン州に100万人ほどいるとみられている。
ミャンマー政府は彼らに国籍を与えれていない。
ロヒンギャはミャンマー国民ではなくて、「不法移民」と考えているから。

ミャンマー軍の最高司令官はロヒンギャについて、「そのような民族はミャンマーにはいない」とハッキリ言っている。
多くのミャンマー国民も同じ。
ロヒンギャを不法移民やテロリストと見ている。

 

 

バングラデシュ人は「ミャンマーは人殺しをやめろ」と訴える。
でもミャンマー人は「We Sand With You(私たちはあなたと共にいる、アウンサンスーチー)」と訴える。

このどちらかを支持するのはむずかしい。
もう一方の友人の意見を「それは違う」と否定することになってしまうから。

この苦しさを数千万倍に広げると、きっとアウンサンスーチーになる。

 

 

でもあえて言うなら、バングラデシュ人の意見に賛成だ。
アウンサンスーチー氏は国連の調査を受け入れていない。

日本経済新聞の記事(2017/9/21 )から。

ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相は20日、首都ネピドーで日本経済新聞の単独取材に応じた。イスラム少数民族ロヒンギャが迫害を受けているとされる問題で、これまで拒否してきた独立した国連調査団の受け入れについて「態度を変えていない」と明言した。

スー・チー氏、国連調査の拒否変えず ロヒンギャ問題

単純に考えて、国連に調査されるとミャンマー政府や自分にとって都合が悪いからだろう。
ミャンマー国民からしてみたら、「Don’t trust fake news(偽情報を信じるな)!」となるのだろうけど。

もし、アウンサンスーチー氏がミャンマー国軍を批判したら、軍も国民もアウンサンスーチー氏の敵に回るはず。
そうなったら、スーチー氏はミャンマーにいられなくなって、どこかの国に逃げ出さないといけなくなるかもしれない。

これではロヒンギャと同じだ。

 

壁の高いところにアウンサンスーチー氏の写真をはっている国民がたくさんいた。

 

ロヒンギャ問題については、いろいろな考えや立場がある。
どんな考えを支持するかはその人の自由。

ただ、正義は立場の数だけある。
1つの正義の立場から、相手を一方的に非難するのマズイ。

でもそれよりもマズイのは、今ミャンマーで何が起きているのか知らないこと。
「わたしはその問題に興味はない」という無関心なら、まだいい。

「今世界で何が起きているのか?」という情報が入って来ないような環境に身を置いていることが一番マズイ。

 

 

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今まで、東南アジア、中東、西アフリカに旅をしてきました。外国に行って初めて気がつく日本の良さや特長があります。以前、歴史を教えていたので、その経験もいかして、日本や世界の歴史や文化などをテーマに、「読んでタメになる」ようなブログを目指します。