日本にはない、キリスト教やユダヤ教の「神との契約」という考え方。

 

最近、イスラエルの大臣がユダヤ教徒らしい理由で大臣を辞任した。

ユダヤ教の安息日(シャバット)に鉄道工事がおこなわれたことに、リッツマンという保健相が激怒する。
そして抗議の辞任をしてしまった。

朝日新聞の記事(2017年11月27日)にこう書いてある。

イスラエルのリッツマン保健相は26日、ユダヤ教の安息日シャバットに鉄道の補修工事が行われたことに抗議し、辞任した。リッツマン氏はユダヤ教超正統派の政党「ユダヤ教連合」の党首で、「もう大臣としての責任を果たせない」とした。

「安息日の鉄道工事、是か非か イスラエル閣僚が抗議辞任」

エルサレム
手前がユダヤ教の聖地「嘆きの壁」
奥の丸屋根の建物がイスラーム教の聖地「岩のドーム」

 

ユダヤ教やキリスト教には、「安息日」という日がある。

ユダヤ教・キリスト教で、仕事を休み、礼拝を行う聖なる日

「デジタル大辞泉」

この安息日はお祈りをする日で、仕事は休みになる。
というか、仕事(労働)をしてはいけない。

「新約聖書入門 三浦綾子」によると、キリストが生きていた2000年ほど前は、安息日に次のようなことが「労働」とみなされ、禁止されていた。

当時安息日に禁じられていたことの、一部をここに紹介してみよう。いかなることがあろうと、次の事項は、絶対禁止されていたのである。

・種まき ・刈り入れ ・売買 ・点火 ・夫婦生活
・食事の用意 ・九百メートル以上の歩行

この考え方は、今でもイスラエルに息づいている。

ユダヤ教の安息日は、土曜日(金曜日没から土曜日没まで)とされている。
ボクがイスラエルに行った時は、ほとんどの店は閉まっていたし、バスや電車も運行しないと聞いた。
*イスラーム教の安息日は金曜日だから、イスラーム教徒の店は開いていた。

 

イスラエルのユダヤ教徒には、安息日に料理をつくったり(食事の用意 )、電気をつけたり(点火)しない人もいる。
部屋の明かりをつけるためにボタンを押すことも、”労働”になるから禁止されている。
それで昔は、異教徒である日本人が安息日にユダヤ教徒の家に行って、電気をつけるというバイトがあったらしい。

この聖なる安息日に鉄道工事をしたということが、熱心なユダヤ教徒である保健相にはガマンできなかった。

 

 

「安息日に労働はしない」というのはユダヤ教徒が神と交わした契約だから、絶対に守らないといけない。
絶対に、だ。

旧約聖書には、安息日にシリア人から襲われたユダヤ人が全滅したと書いてある。

安息日を文字どおり死守した極端な例として、これも「旧約聖書入門」で書いたことだが、一群のユダヤ人が、安息日に攻撃を加えてきたシリア人に対して、安息日を犯すよりも、甘んじて死を選らんだことはあまりに有名である

「新約聖書入門 三浦綾子」

武器を持って敵と戦うことも、”労働”になってしまう。

だからユダヤ人は、安息日にシリア人から攻撃を受けた時、「神との契約を破って戦うか?」「戦わずに死を選ぶか?」の二つにひとつを選ぶしかなかった。

そしてユダヤ人は信仰(神との契約)を守ることを選び、無抵抗のままシリア人に殺されてしまった。

 

 

キリスト教、ユダヤ教、イスラーム教では、信者は神との契約を絶対に守らないといけない。

でも日本人にはこの考え方がよく分からない。

それは、日本にはこうした神と人との「上下契約」という考えがないだという。

日本人にないのはおそらく「上下契約」だけである

「聖書の常識 聖書の真実 (山本七平)」

評論家の山本七平氏は、神と人間の上下関係を次のように説明している。

たとえば日本にも『忠臣』がおり、『忠臣蔵』もある。
しかし当時の家臣は殿様との間に契約を結んでいたわけではなかった。
また、この契約を完全に履行するのが『忠』だという発想があったわけでもない

もちろん第二次世界大戦中にも、天皇との間の契約を結んでも死んでも絶対に守るといった発想はなかった。
絶対者なる神との契約を絶対に守ることが『信仰』すなわち『神への忠誠』なのである。

したがってその意味は、日本人のいう『信仰』』『信心』といった言葉と非常に違う。聖書の宗教が『契約宗教』と呼ばれるのは、『神との上下契約』という考え方がもととなっている

「聖書の常識 聖書の真実 (山本七平)」

戦争中の日本人には、天皇を神のような存在と考える人もいた。
それでも天皇は、キリスト教徒にとっての神のような「絶対的な存在」ではなかった。

だから、「天皇との間の契約を結んでも死んでも絶対に守るといった発想」が日本になく、キリスト教でいう信仰や神への忠誠という考えもなかったという。

 

 

日本では伝統的に、「神と人との上下契約」という考え方がなかった。
だから日本人には、「神との契約は死んでも守る」という聖書の考え方が分かりづらい。

ふつうの日本人なら、「神との契約よりも、人間の命や平和の方が大切」と考えるだろう。

イスラエルの保健相が「安息日に鉄道工事をしたから」という理由で大臣を辞任してしまった背景には、この「神との契約」という考え方があったはず。

国民の多くが無宗教で、伝統的に「神との契約」という考え方がなかった日本人には、分かりにくい出来事だと思う。

 

 

キリスト教では、日曜日が安息日になっている。

この考え方から、フランスでは長い間、日曜日にデパートは休みになっていた。
それが今、変わりつつある。

今年(2017年)には、「フランスのデパートが日曜日も営業する!」ということがニュースになった。
現地の旅行会社のブログにこうある。

フランスでは日曜日はほとんどのお店がお休み。これはキリスト教の「日曜日は休息の日」という教えに由来しているものですが、時代の流れとともにどんどん変わり始めています。
(中略)しかし!ついに!!パリのデパートも!!!日曜営業が開始しますー!

ついにパリのデパートも日曜営業が開始しますー!

忙しすぎてプレミアムフライデーすら定着しない日本は、フランス人から「バカンス」について学んだほうがいいかもしれない。

 

 

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今まで、東南アジア、中東、西アフリカに旅をしてきました。外国に行って初めて気がつく日本の良さや特長があります。以前、歴史を教えていたので、その経験もいかして、日本や世界の歴史や文化などをテーマに、「読んでタメになる」ようなブログを目指します。