客のニーズに応えると、黒人差別になる日本の社会。

 

山本幸三議員が「差別発言をした」とたたかれている。

発言の内容が「何であんな黒いのが好きなんだ」なのだから、問題になってたたかれても仕方がない。

本人は後になって、「アフリカは『黒い大陸』と呼ばれていた。差別的意図はない」と釈明していたけれど、これは火消しにはならないだろう。

毎日新聞の記事によると、日本アフリカ学会がこんな抗議している。

声明は「『黒い大陸』『暗黒大陸』は多くの苦しみをもたらした旧宗主国の表現に由来し、現在使われることはない差別的な言葉」として、釈明も的外れで差別を助長すると批判。「根底には蔑視の意識がある」と反省やアフリカ社会への理解を求めた。

「日本アフリカ学会有志 山本前地方創生相に抗議文」

インターネット上でも、一部の例外をのぞけば批判一色だ。

・「何であんな黄色いのが」と自分がどっかの国で 人種差別されなきゃわからねーのかな、
・いつ辞任するん?
・よくこんなんで代議士やってられるな
・出家させてどこかの寺に預けた方がいい

なかには、サッカー・ワールドカップで日本がセネガルと対戦することにひっかけて、揶揄(やゆ)するコメントもあった。

・さっそくセネガルに盤外戦しかけてんだろ
どこまでサッカー好きなんだよ山本センセイ

 

 

日本の政治家が黒人への差別発言をしてしまって、問題になることは今までにもあった。

1986年には、当時の中曽根康弘首相が「黒人は知能が低い」といった発言をして大問題になっている。

「thepage」の記事から。

中曽根氏の発言は米国で非難の的となり、日系企業には抗議の電話が殺到。米国の主要紙には意見広告が掲載されました。その2年後、渡辺美智雄元副総理も「黒人は破産することなど何とも思わずアッケラカーのカーだ」と発言してやはり問題となっています。

政治家失言暴言録(2)「黒人は知能が低い」

政治家ではないけれど、2015年には、ガンバ大阪で活躍していた黒人のパトリック選手にたいして、「黒人死ねよ」とツイートした人がいて、これも大きな問題になった。

このツイートをしたのは高校生で、後日謝罪している。
くわしいことは日刊スポーツの記事をどうぞ↓

浦和レッズは30日、ガンバ大阪のFWパトリックに対してツイッターで人種差別的な投稿をした埼玉県内の高校生から、学校を通じて謝罪の申し入れがあったと発表した。

人種差別投稿の高校生が謝罪…パトリックも理解、クラブ処分はなし

高校生なら「ごめんなさい」ですまされるかもしれない。

でも、言葉に重い責任をもつ政治家だとそれではすまされない。

ただ、「アフリカは『黒い大陸』と呼ばれていた。差別的意図はない」なんて言うより、素直に「ごめんなさい。差別発言をしてしまいました」と頭を下げたほうが好感は持てる。

 

ここまでひどくはないけれど、ボクの身近でも、黒人にたいする見方について考えさせられることがあった。

数年前、英会話スクールを開いている日本人の知り合いから、こんなことを頼まれた。

「今、英語を教える先生がほしいんだよ。いい外国人がいたら教えて」

ということで、早速知り合いのイギリス人にメールを送ってみた。

「だれかいない?」と聞くと、「いるよ!」とすぐに返事が来る。
ただ、その外国人は黒人だった。

 

それを日本人の知り合いに伝えると、彼が気まずそうな顔をする。

「実は、黒人はマズイんだよ」

これを聞いてビックリ。
英会話を教えていて国際人を育てているはずの彼が、こんな非国際的なことを言うとは!
でも話を聞くと、彼を一方的に責めることはできない。

 

 

彼自身は、英会話の講師が白人でも黒人でもまったくかまわない。

でも、日本人の生徒が嫌がる。

前に黒人の英会話講師を雇ったら、幼稚園の子どもたちが「コワい~!」と言って大泣きしてしまった。
それで、まったく授業にならない。
母親がそばにいて子どもに声をかけても、どうにもならない。

かといって、3、4歳の子どもに「黒人にコワいと言うな!」「それは人種差別的な言葉だ!」と怒っても、これもどうしようもない。

その後、親から電話がかかってきた。

「ウチの子がそちらにいると迷惑をかけてしまうので、スクールをやめさせてもらいます」

子どもだけではなくて、日本人の大人の生徒からも、黒人の先生を嫌がる声が上がった。

本人は「英語を教えるのに肌の色は関係ない」と考えていても、生徒が黒人の先生を嫌がってやめてしまったら、経営者として考えないといけなくなる。

 

英会話スクールではなくて、これは結婚式場の話。
むかしバイトしていた結婚式場の会社でこんなことを聞いた。

「結婚式の神父は白人がいい。黒人だと新郎新婦が嫌がるんだよ」

結婚式場の側に差別的な意図はなくても、”客のニーズ”には応えなくてはいけない。
でも、英会話スクールにしろ結婚式場にしろ、客のニーズに応えて黒人を採用しないと「差別」だと非難される。

 

 

日本の政治家が「何であんな黒いのが好きなんだ」とか「黒人は知能が低い」とか差別的な発言をすることより、「英語の先生が黒人だと生徒が嫌がる」とか「結婚式の神父は黒人以外で」といった日本の社会にある”プチ差別”のほうが大きな問題だろう。

 

おまけ

タイ・バンコクのカオサンロード

世界中の人が集まる「メルティング・スポット」。

 

 

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アメリカ 「目次」

日本 「目次」

 

2 件のコメント

  • 政治家の発言については、ただただ「……馬鹿が」と思ってましたが、英会話スクールや結婚式場の話は、
    ……なんか、悲しい気持ちになりますね。

  • これは悲しいし難しい問題です。
    客商売は客が求めることを提供しないとダメですし。
    一般の人が意識を変えることが大事ですけど、それは本当に時間がかかるし難しいです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。