慰安婦を“性奴隷”と言えなくなった韓国政府。日韓合意の成果。

 

前回、中央日報のこんな記事(2018年01月17日)を紹介した。

韓国京畿道、「『日本軍慰安婦』を『日本軍性奴隷』に正したい」

 

新年早々、飛ばしてますね。
この記事の中で、韓国の議員がこう言っている。

日本軍によって強制的に連行されて過酷に性暴行にあわざるを得なかった歴史的事実が日本軍の制度的かつ組織的な犯罪であることをよく表現できるように言葉を正す必要がある

こういう考えから、慰安婦を「日本軍性奴隷」と呼ぶことにしたいらしい。

韓国でこれは、常識的でふつうの認識。
韓国の新聞を長年読んでいる人間にしてみれば、「何だ、いつもの韓国か」というていど。

「日本軍が朝鮮人女性を強制連行した」
「慰安婦は日本軍の性奴隷だった」

本当にこんなことがあったという根拠がない。
だから、事実と言うことはできない。
でもほとんどの韓国人は、これを歴史の真実だと信じている。

 

まあ、こちらにはこちらの、向こうには向こうの事情がある。
事情はあるけれど、慰安婦を「日本軍性奴隷」と呼ぶことはどうだろう?

実は、韓国政府が性奴隷を”否定”していたのだ。
これが日韓慰安婦合意での成果でもある。

 

去年、韓国が2015年の慰安婦合意を検証した結果を発表した。
その内容が韓国人に衝撃をあたえる。
2015年の合意で、日本政府が韓国政府に「これからは、性奴隷という言葉を使わないでほしい」と要求していた。
そんな実態がなかったのだから、これは当然。

ハンギョレ新聞の記事(2017-12-29)によると、このとき韓国政府はこう答えた。

「性奴隷」という表現を使わないという約束はしなかったが「公式名称は『日本軍慰安婦被害者問題』のみ」と確認した。

日本側「挺対協説得」「性奴隷の単語禁止」…ほとんどすべて聞き入れた韓国側

これから韓国政府は「性奴隷」ではなくて、「慰安婦被害者」という言葉を使うことを確認した。
韓国の新聞はこれによって、韓国政府が慰安婦を「性奴隷」と言うことが”禁止された”と書いている。

日韓合意のとき、韓国政府は「性奴隷というよび方は正しい。だから、日本の要求は断る」とは言わなかった。
「性奴隷とは言わないでほしい」という日本の要求を受け入れて、韓国は「もうその表現は使わない」と確認している。
これは実質的に、韓国政府は「慰安婦=性奴隷」を否定したと見ていい。

 

 

2015年に韓国政府は、「慰安婦を性奴隷とは呼ばない」ということで日本と合意した。

これで今の政権が苦しくなる。

文政権は、この慰安婦合意を「間違っていた」と公式に言った。
この合意を”誤り”と否定するのなら、韓国政府は慰安婦を「性奴隷」と認識することになる。
そうなったら、これから韓国政府は「慰安婦被害者」ではなくて、「性奴隷」という言葉を使う必要がある。

でも2015年に、韓国は「性奴隷ではなく、慰安婦被害者と言う」と日本に約束してしまった。
だから、今の政権が「性奴隷」と言ってしまうと、「韓国は合意を破った」と日本や国際社会から見られてしまう。

そんな韓国政府のジレンマが朝鮮日報の記事(2017/12/29 )にある。

そうならば、文在寅政権としては海外での少女像設置を支援し、「性奴隷」という表現も使わなければならないことになる。しかし、それでは国際社会に対して「合意破棄」という負担を抱えることになる。

慰安婦合意:文大統領が事実上合意を白紙化、「第3の案」を模索

結局、韓国政府は2015年の慰安婦合意について、「内容は間違っていたが、正式な合意だった。だから破棄や再交渉はしない」と発表する。

つまり韓国政府は、これから「性奴隷」という言葉を使うことができなくなったわけだ。
それがハンギョレ新聞の記事にあった「性奴隷の単語禁止」ということ。
自分で自分を封印したようなものだけど。

だから、韓国政府が「性奴隷」という言葉を使ったら、日本は「あれ?合意破棄するの?」とツッコめばいい。

 

京畿道(キョンギド)の議会で条例案が改正されたら、京畿道では「日本軍性奴隷」という表現を使うことになる。

韓国の地方で慰安婦を「性奴隷」と呼んでも、政府はその言葉を使うことができない。
韓国政府は、「慰安婦被害者」と呼ばなければいけない。
そうなると、きっと地方や国民が怒り出す。

でもそれは、韓国の国内問題。
日本に火の粉を飛ばさなかったら、それでいい。
韓国政府が苦しい立場に立たされても、自分のしたことが自分に返って来ただけのこと。

2015年の慰安婦合意で、日本が韓国に「性奴隷ではなくて、慰安婦被害者と言う」ということを確認させたことは、とても大きな成果だ。
後になって良さが分かってくる。
まるでスルメイカのよう。

 

ちなみに慰安婦合意では、少女像(慰安婦像)を撤去するために、韓国政府は「関連団体説得に努力する」ということでも合意した。
また、日韓以外の第3国で少女像を建てることについて、韓国政府は「支援しない」ということも確認している。

約束は破るためではなくて、守るためにあるはず。
これから韓国政府は、自分が言ったことをしっかり実行してくださいな。

I have a dream.

桜が咲くころには日本大使館前の慰安婦像はなくなっているのだろうか?
なんて思ってたら、慰安婦像の横に徴用工の像が建ってたりして。

 

 

こちらの記事もいかがですか?

韓国 「目次」

当時の慰安婦が否定する今の韓国人の常識「過酷な性奴隷」説。

韓国が伝えない慰安婦の”真実”、実際はどんな生活だったのか?

日韓の慰安婦問題、海外の反応は?アメリカ、イギリス、中東での表現

韓国の反日感情の「原点」1945年8月15日、悔しさの理由

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。