平和を考えた。⑥ これでも、韓国人に「戦争は絶対にダメ!」と言えますか?

 

記事に入る前に、初めて読む方のために、もう一度朝鮮戦争の確認をしたい。 もう知っている方は、先に進んでほしい。
くどいねえ、ごめんねえ。

 

現在の韓国は、北朝鮮との「分断国家」という状況におかれている。 この点で韓国は、現在の世界で、ほとんど他に例が見られないような特徴をもつ。

分断国家(ぶんだんこっか)とは、一つの国民国家になんらかの歴史的経緯を経て2つ以上の政府が同時に存在しそれぞれが当該国家の唯一の合法的政府であり、それ以外は違法であると主張している状態の国家である。それぞれの政府は当該国家の一部を実効支配しているが公式には領土全域の主権を主張している

(ウィキペディア)

 

この分断国家に似た例を日本に求めれば、14世紀の「南北朝時代」だろう。
その当時、日本は南朝と北朝の二つに分断されていた。 このときは、足利義満という大人物が現われて南北を統一させたことは、誰でも中学校で習っただろう。

韓国の分断状態に決定的な影響を与えたのが、朝鮮戦争だ。

「朝鮮戦争」

1950~53

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から大韓民国(韓国)への侵攻で始まった戦争。北朝鮮軍に対し、アメリカ軍を中心とした国連軍が韓国を支援して介入(かいにゅう)した。
戦況が逆転して国連軍が鴨緑江(おうりょくこう)にせまると、中国が人民義勇軍を派遣して、のち38度線を挟んで戦局が膠着(こうちゃく)した。1953年に休戦協定が結ばれ、国家の弁列は固定化された

(世界史用語集)

 

この北朝鮮に対して、平和的・友好的に対応しようとした韓国の政策が「太陽政策」と呼ばれるもので、これは、うまくはいかなかったということを前回までに述べた。

 

くり返しになるが、ボクには韓国人の友人がいることもあり、「韓国寄り」の見方になっていると思う。北朝鮮には、北朝鮮からの見方があり、どちらが本当に正しいかは分からない。

 

 

ここから、今回の記事になる。

金大中(キムデジュン)が行ってきた「太陽政策」について、現在の韓国人がどう考えているかを、朝鮮日報のコラムから見てみる。
この朝鮮日報は、韓国で最も多く読まれている新聞で、この新聞の意見が韓国人の一般的な認識と考えていいだろう。

 

「日本のように核を落とされた後に千羽鶴を折っても意味はない(2016/02/28 05)」というコラムで、次のようにある。

 

飢えに苦しむ北朝鮮の同胞たちに暖かい光を差し伸べようという慈善イベントが相次いで企画され、うぬぼれによる達成感は最高潮に達した。

そうしている間に北朝鮮は核とミサイルを開発した。専門家たちは北朝鮮の製造した核爆弾について、日本の広島・長崎に投下された原子爆弾と同じレベルだと指摘する。
ミサイルは韓国製よりもはるかに優れ、大気圏を突き抜けて宇宙へと飛んでいった。

 

南北問題の平和的な解決のために行われた太陽政策とは、結局は、韓国人の「うぬぼれ」であって、その間に北朝鮮は核とミサイルを開発していた、と韓国側はみている。
韓国は、北朝鮮の核開発の動きを見て、「うぬぼれ状態」から目を覚ましたのか、今年の3月7日から過去最大規模となる米韓軍事演習を行っている。

 

毎年春の恒例である米韓合同軍事演習が、先週から来月末までの日程で始まった。核実験やミサイル発射など相次ぐ北朝鮮の挑発行為を受け、その規模は過去最大だ、『斬首作戦』として要人を暗殺する訓練が行われたとの報道もある。
(ニューズウィーク2016/03/22)

 

さらに、現在の韓国国内では、「核武装論」まで飛び出している状態だ。

「圧力を用いず、人道支援・経済協力・文化交流などを通じて将来的に南北統一を図ろうとする(大辞泉)」という太陽政策は、完全に過去のものになっている。
少なくても、現時点では、太陽政策のように「平和・友好的に南北問題を解決する」ということは現実的な選択肢としては考えられない。

 

ただ、あくまで現時点での話であって、これからの将来に太陽政策のようなことが再び行われるかもしれない。
2000年に、敵対していた南北の首脳が握手した映像を、信じられない思いで見ていた人は世界中でいただろう。

 

しかし、その後に始まった太陽政策でも、結局両国の「雪解け」はならなかった。あのときの首脳会談から現在のような状態になってしまったことも、また、信じられない気がする。

 

陳腐な言い方になるが、今から振り返れば、あの首脳同士の握手は、「終わりの始まり」だったようだ。
ただ、「信じられない」ようなことが続いて起きたのだから、この先、また「信じられない!」と思うようなことが韓国と北朝鮮との間で起こるかもしれない

 

韓国に何人かの友人が住んでいるボクとしては、南北問題が平和的に解決することを願うだけしかできないけれど。

 

 

以前の記事でも書いたが、ボク自身は、「戦争に良い戦争も悪い戦争もない。すべての戦争はやってはいけない」という考えは、正しいと基本的には思っている。

 

でも、今までの記事で書いてきたように、韓国では、最近でも「天安沈没事件」や「延坪島砲撃事件」が起きて軍人や民間人までも犠牲者を出している。
国内においても、民防衛という日本ではあり得ないような軍事訓練を毎月行っている。

 

ソウルナビの記述にそうあるのだから、現在でも行っているのだろう。
南北問題を戦争ではなく、平和的に解決しようするために、韓国は太陽政策も行ってきた。

 

こうしてみると、韓国は、北朝鮮の脅威を感じて戦争にそなえつつも、それを避けるために、平和的に解決することにも全力を注いできたことが分かる。
しかし、現実に北朝鮮が韓国に攻めてきたら、韓国はこれに応戦して戦争になるだろう。

 

そうしたことを考えた上で、韓国人の友人に「戦争に『良い戦争』も『悪い戦争』もない。どんな戦争も絶対にしてはいけない」ということを、強く言う自信はボクにはない。
韓国の憲法には、国を守ることが、「神聖な義務」であると、はっきり書いている。

「国軍は、国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される」とされ(第五条)、
さらに「すべての国民は、法律の定めるところにより、国防の義務を負う」という条項(第三九条一項)をもっている」

(「市民」とは誰か 佐伯啓思)

 

日本の憲法で、国を守ることを「神聖な義務」と明記することは、考えられない。
日本と韓国では、国の安全保障という面では、価値観や常識があまりに違う。

 

韓国が日本に望んでいることは、北朝鮮と戦争にならないように日本が協力することだろう。
しかし、実際に戦争になったら、日本人に対しては「戦争反対!」と言う声をあげることよりは、「可能な限り、韓国を支援してほしい」ということを願うだろう。

その声があがったときに、日本がお隣りさんの国にどのようなことができるのかは、ボクには分からない。

 

ここまで「戦争」という言葉を多く使ってきた。
日本は、世界的にも長い平和を誇ってきたこともあり、戦争の危険性についても他国の人よりは、認識が薄いだろう。
しかし、一番怖いことは、戦争について考えたり話したりするがなくなり、忘れてしまうことだと思う。

 

天皇陛下も、昨年12月の誕生日の会見では、先の戦争について触れられていた。
これは、日本人が戦争を考えなくなり、人々の記憶からあの戦争が風化してしまわないようにするためだろうと思う。

下は宮内庁のHPからの引用。

今年は先の大戦が終結して70年という節目の年に当たります。この戦争においては,軍人以外の人々も含め,誠に多くの人命が失われました。平和であったならば,社会の様々な分野で有意義な人生を送ったであろう人々が命を失ったわけであり,このことを考えると,非常に心が痛みます。

 

「戦争に『良い戦争』も『悪い戦争』もない。どんな戦争も絶対にしてはいけない」という考えをボクがもっていても、自信をもってそれを言えなくなることは、韓国人だけではなく、他の国の人に対してもあった。

 

外国は、日本とは歴史や置かれている環境がまったく違う。
共通の考え方や価値観もあるが、安全保障につていの考え方は、隔(へだ)たりがあると感じることが多い。

 

海外に旅行する前は、「どんな戦争も絶対にしてはいけない」という考えは世界に通じると思っていたが、こうした現実の「壁」に当たると、実際には、世界で通じるものではないと今は思うようになった。

 

しかし、この考え方は、今でも基本的には間違っていないし、日本でなら広く通じるものだとも思っている。
ただ、その理想をそのまま外国に当てはめて、そこに住む人に言ったとしても、その人から理解を得ることはなかなか難しい。

 

「もちろんそうだ!戦争はいけないことだ。しかし、実際には、避けられない戦争もある」ということを言われて、外国人との認識との「壁」を感じてしまうことが何度かあった。

 

外国との壁ならまだいいが、「世界との壁」を感じたことがある。
タイで会った日本人旅行者からは、「国連でも、戦争を認めているよ」ということを聞いて驚いたことがある。
「何で国連が戦争を否定しているなんて考えるようになったの?」

 

と逆に質問されたが答えられなかった。
国連は、武力の行使を否定して、平和的に問題を解決するものだと「何となく」思っていたからだ。

 

しかし、国連が戦争を認めているというのは、本当のことだろうか?
むしろ反対で、国連は戦争を起こさせないためにあるんじゃないのか?と思って、国連憲章を見ると、確かに国連は戦争を認めていた。

 

続きは次回で。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。