フランスと中国のブラックフェース(顔の黒塗り)に人種差別の声。

 

最近フランスと中国で、人種差別騒動があった。

やっていることは中国もフランスも同じ。
顔を黒く塗る「ブラックフェース」が黒人への人種差別になると問題視された。
これからそのことを書いていきたい。

 

まずはフランスから。

毎年おこなわれるフランス北部の伝統行事「黒人の夜」では、参加者がアフリカ人のまねをするために顔を黒く塗っている。
これが「人種差別的だ」と批判を受けて問題になった。

人種差別問題に取り組んでいる活動家はブラックフェースについて、こんな問題点を指摘する。

・19世紀にサーカスの見せ物に使われたアフリカの黒人を思い起こさせる。
・白人の俳優が顔を黒く塗って黒人を笑いものにするショーを連想させる。

こうした批判に対して市長は「顔の黒塗りは『笑う自由、一緒に楽しむ自由』」として、「黒人の夜」での黒塗りは差別にはならないと主張した。

フランスAFPの記事(2018年2月12日)では、こんな見方を紹介している。

「彼らは『黒人の夜』は伝統だと主張する。その通り。だが、人種差別もまた伝統になってしまっているのだ」

顔の「黒塗り」は差別か自由か…仏で仮装パレードめぐり論争

 

次は中国。

中国の春節(日本でいう正月)の大みそかになる2月15日の夜に、「春節聯歓晩会」という中国の国民的番組が放送された。
これは日本の紅白歌合戦のような番組だけど、その視聴者は全世界で8億人というからけた外れだ。

この放送の中で、中国人女優のブラックフェースが「黒人への人種差別ではないか」と問題視された。

毎日新聞の記事(2018年2月17日)から。

主役級の女性を演じる中国人女優は顔を黒く塗り、尻を大きくした扮装(ふんそう)で舞台に立ち、「中国が大好きだ」と述べて会場を沸かせた。

中国版紅白番組で「寸劇が黒人差別」と物議

これを見た中国の視聴者から、「ひどい人種差別だ」「顔を黄色く塗った白人を見たらどう思うのか」といった批判の声が高まった。

 

このニュースに対して、日本のネットではこんな反応がある。

・アジア人は大晦日に黒塗りするのが伝統なのか
・セリフかなんかで本物の黒人には無理だったんだろ
これからは黒人を表現するの禁止にしろ
・キングコング対ゴジラとか絶対放送できんな。
・黒人が肌を黄色く塗って中国人の真似するようなもんやろ
不快だとわからないのかな
・この夏、日焼けしたら訴えられるからな!
・これで「ジャングル黒べぇ」は、極悪アニメとして日本バッシングの急先鋒に。

 

 

「顔の黒塗り」といえば、日本でも年末の番組でダウンタウンの浜ちゃんがそれをやって、欧米のメディアから「人種差別だ!」とかなりの批判を受けた。

Jリーグの黒人選手に対して、「黒人死ねよ」とか「黒人ウザイわ」とSNSでメッセージを送ることは黒人差別であることはすぐ分かる。
*これは実際にあった。

でも、今までは見逃されていたブラックフェースにも、「黒人を差別するつもりはなかった」とか「これは伝統行事だから」といった理屈が通じなくなっている。
これは世界的な流れで、顔を黒く塗ることはもう高校の文化祭でもダメだろう。

 

日本のテレビでブラックフェースを見るのは、これが最後かも。

 

そんな日本だけど、人種差別問題に関しては世界に誇っていいことがある。

それは、第一次世界大戦後の1919年に日本が出した「人種的差別撤廃提案」というもの。

人種差別禁止(撤廃)案

人種平等案ともいう。パリ講和会議で日本が提出。背景にアメリカ・オーストラリア・カナダでの日本移民排斥があった。英・米の反対で不採択になるが、支持する国も多かった。

「日本史用語集 (山川出版)」

日本が国連で、「人種差別の撤廃を明記するべき」と提案した。
こうした国際会議の場で、人種差別撤廃を主張した国は日本が世界で初めて。

このことについて、ヨーロッパに住んでいた作家のデュランれい子氏がこう書いている。

何かあるたびにフランス人は、「自分たちはフランス革命で自由・平等を勝ち取った」という話をします。そんなときに私が、「日本だって第一次世界大戦の後に、人種差別撤廃条約の提案をしたのよ」と言うと、若い学生たちは皆一様に驚きます。

「意外に日本人だけ知らない日本史 (講談社+α新書)」

このことは、日本人として知っておいてほしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。