あなたの街にもイスラム教徒。日本での共生OK、強制NG。

 

2月27日にこんな記事を書いた。

伊勢神宮の近くに、イスラーム教徒の礼拝所ができるらしい。

伊勢神宮のある三重県伊勢市が「観光案内所の一部を改修して、イスラーム教徒が礼拝できるスペースをつくる」と発表した。
お祈りのためのマットを用意して、天井にはメッカの方向をしめすもの(たぶん矢印)をつける予定だとか。

伊勢神宮に来るイスラーム教徒が増えていることから、こうした場所がつくられることになったという。

 

日本を訪れるイスラーム教徒の数は本当に増加している。
東京ディズニーシーもイスラーム教徒が礼拝できるよう配慮しているし、2017年には、東京駅にイスラーム教徒が礼拝できるスペースもできた。

いまの日本は「イスラーム教徒をどう迎えるか?」ということで、各地でその準備が進められている。

伊勢神宮の近くに礼拝スペースができたのもそのひとつ。
ただここは「礼拝もできる多目的ホール」で、イスラーム教徒専用の場所ではない。
だから、「モスク」とはまったくちがう。

 

個人的にはこれに賛成。
こんな多目的ホールができたところで、伊勢神宮に参拝に来る日本人には影響がないし、イスラーム教徒がたくさん来た方が経済的にもプラスになると思う。

 

 

でも、一週間ほどでこの話はなくなった。

伊勢市は観光案内所に多目的ルームはつくるけど、イスラーム教徒の礼拝所にはしないことを決めた。

さっきの報道のあと、電話やメールなどで苦情や問い合わせが殺到したから。

伊勢新聞の記事(2018-03-09)にはこう書いてある。

伊勢神宮など市内の他機関にも問い合わせがあり「市民に迷惑を掛けられない」と判断。多目的室は予定通り設置し、授乳室などとして使う。

「伊勢市 観光案内所に設置予定の多目的室 ムスリム礼拝所には使用せず 苦情殺到で方針転換 三重」

 

じゃあ、しょうがない。
ボクとしてはこの案に賛成だけど、市民の理解が得られないのなら止めた方がいい。

そこに住んでいる人たちの協力や支援がなかったら、多文化共生がうまくいくはずない。

 

 

ボクは外国人との交流が好きだから、「多文化共生」には基本的に賛成だけど、その強制には反対。
「多文化共生が正しい考え方だ!」と市民に押しつけても、かえって「外国人嫌い」を増やすだけ。

最近の日本ではこの多文化共生が進んでいる。

今年1月には、「東京23区の成人式では、新成人8人のうち1人が外国人だった」というNHKのニュースを見て驚いた。

東京23区で成人になった人はおよそ8万3400人で、そのうち1万人ほどが外国人。
新宿区なんて45.7%で、新成人のほぼ半数が外国人だ。

 

 

ボクが住んでいる静岡県浜松市は「多文化共生都市ビジョン」を打ち出しているくらい、多文化共生が進んでいる。

これからの日本の地方都市も、こうなるところがきっと増えていく。
だから、「自分の住んでいる街で、そのうち起こること」として読み進めてほしい。

 

浜松市にはイスラーム教徒が多く住んでいてモスクもある。
子どもを市内の学校に通わせるイスラーム教徒の親もいる。

イスラーム教徒が日本の学校で生活するばあい、「食」に困ってしまう。

宗教の教えによって、彼らは豚肉を食べることはできないし、アルコールを飲むこともできない。
イスラーム教徒が食べられるものは、「ハラルフード」とよばれている。

ハラルフード

イスラム教の戒律に沿った食べ物。ハラルはアラビア語で「許された」などを意味し、豚肉や酒類を禁じている。

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

 

日本の学校給食はこのハラールフードではない。

それで去年、浜松に住んでいるイスラーム教徒が市民にこんなことをうったえた。

静岡新聞の記事(2017/2/7)から。

エフィさんは、ハラール対応の給食を出す福岡県内の私立保育園や金曜日の礼拝を例外的に認める浜松市内の学校などを紹介し、「ルールだから駄目というのではなく柔軟な対応を検討してほしい」と理解を求めた。

学校生活、給食など苦慮 ムスリムの子に「理解を」

 

気持ちはわかるけど、これはムリだろう。
ハラール対応の給食を出すためには、どれだけの税金や手間が必要になるのか。
それは市民の理解を得られるのか。

現実的にはむずかしい。

 

 

ボクにはイスラーム教徒の友人がいて、ふつうの日本人よりはイスラーム教徒に対する理解はあると思う。
成人式で暴れまわる日本人よりも、イスラーム教徒のほうが友だちになれる気もする。

だから浜松市、東京駅、伊勢神宮の近くにイスラーム教徒の礼拝スペースをつくことには賛成だ。

でも、学校給食のハラール対応はどうだろう。
浜松の学校給食の事情についてはよく分からないけど、市民の理解を得られて担当者がかまわないと言うのならそれでいい。

「ルールだから駄目というのではなく柔軟な対応を検討してほしい」と、外国人が意見を表明する機会は大切だけど、市や学校が検討した結果にはしたがわないといけない。

「ルールだから駄目」という一方的な態度はいけないけれど、外国人も日本人も守らないといけないルールはある。

 

多文化共生には基本的に賛成。
でもそれは正解ではなくて、ひとつの考え方でしかない。

日本の地方自治体のホームページには、「民族や文化の違いを乗りこえることが大事です」「いろいろな価値観を尊重することが必要です」なんてことがよく書いてある。

それはその通りなのだけど、そればかりを強調しているのを見ると、逆に不安になってしまう。
そういうひとつの見方を押しつけて、市民に嫌悪感をもたせたら、多文化共生はダメになる。

 

伊勢神宮近くの礼拝スペースが「なし」になっても、それは仕方ない。
市民の反対を押し切って強制的に進めたら、「イスラーム嫌い」が増えるだけだから。

外国人と一緒に生活するのなら、「いろいろな価値観を尊重することが必要です」という態度と「ダメなものはダメ」と一線を引くことが大切になると思う。

 

 

おまけ

観光庁が「ムスリムおもてなしガイドブック」を作成して公表している。

興味があったら見てください。

ムスリムおもてなしガイドブック
*これは開いても大丈夫なやつです。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。