平和を考えた⑦ 「国連を分かってなかったから、調べてみた」

 

 

はじめの一言

「日本人は私がこれまで会った中で、もっとも好感のもてる国民で、日本は貧しさや物乞いのまったくない唯一の国です(オリファント 幕末)」

 

 

タイで会った日本人旅行者からは、「国連でも、戦争を認めているよ」ということを聞いて驚いたことがある。

国連っていうのは、武力の行使を否定して、平和的に問題を解決するところじゃないの?

「違うよ。何で国連が戦争を否定しているなんて考えるようになったの?」
と、言われても答えられない。「何となく」そう思っていただけだから。

「でも、国連ってどんなところか、知ってる?」
と、言われても答えられない。「何となく」知っているつもりだったから。

でも、「国連が戦争を認めている」というのは、本当だろうか?
むしろ反対で、国連は戦争を起こさせないためにあるんだろう。
でも、確かに、ボクは国連のことをあまり知らなかったなあ、と思ったから、国連のことを調べてみた。

 

SONY DSC

 

そうしたら、その旅行者が言ってたように、国連は確かに戦争を認めている。
でもその前に、国際連合という組織について知っておこう。

「国際連合(United Nations)」

1945 10月に発足した国際平和機構。本部は、ニューヨーク。『連合国』の名称をそのまま使用し、原加盟国は51ヵ国。戦争を防止できなかった国際連盟の失敗を教訓とすべく、総会での多数決制、安全保障理事会の権限強化および拒否権などを採用した。『冷戦』終結後は、地域紛争や内戦への対応が主な課題となった

(世界史用語集 山川出版)

 

ここで質問。

第二次世界大戦で戦っていたのは、どことどこか?
答えは、連合国と枢軸国(すうじくこく)ですね。
枢軸国は、日本・ドイツ・イタリアの三国のことで、連合国は、「米英仏ソ中」を中心とした国々のこと。

結果は、歴史の授業で習ったように連合国の勝ち。
で、その戦勝国がつくったのが、「国際連合」になる。
というか、その連合国が国際連合になっている。

 

このことは、英語を見ると分かる。
英語だと「連合国」も「国際連合」も、まったく同じで「United Nations」になる。

でも、日本語だと、第二次世界大戦中は「連合国」で、戦後は「国際連合」と別の言葉になっている。これだと、戦中と戦後では、「まったく別の組織」という印象を受けちゃうかもしれない。

 

もちろん、「連合国」と「国際連合」が「United Nations」になっているからといっても、まったく同じ組織ではない。組織の目的も制度もまったく違うしね。
でも、現在の国連は、連合国の延長にあるものとも考えていいでしょ。

 

戦後の国際秩序は、戦勝国だった連合国の「中心メンバー」が決めている。

「米英仏ソ(露)中」が国連の常任理事国になっていて、これらの国だけが拒否権をもっている。自分の気に入らないことは国連では決めさせないという「特権」がある。
でも、彼らは戦争に勝った側にいたのだから仕方がない。

 

SONY DSC

 

ちょっと話はそれてしまう。

第二次世界大戦が終わって50年以上がすぎて、枢軸国という言葉は完全に過去のものになったと思ってた。けど、2002年に久しぶりにこの言葉を聞いた。
この年、アメリカのブッシュ大統領が「悪の枢軸国」という言葉を使って話題となったのだ。
下は、ウィキペディアよりからの引用になる。

「悪の枢軸国」

悪の枢軸(あくのすうじく、axis of evil)とは、アメリカ合衆国のジョージ・W・ブッシュ大統領が、2002年1月29日の一般教書演説で、北朝鮮民主主義共和国(北朝鮮)、イラン・イスラム共和国、イラク(バアス党政権)の3か国を名指で批判する際に使った総称である。

アメリカではこの前年に同時多発テロ事件が起きており、対テロ戦争の一環としてアフガニスタンに侵攻した。「悪の枢軸」発言はこれが一定の成果を収めた翌年の2002年1月に一般教書演説において、当時ならずもの(あるいはテロ支援国家)とされていた国々を念頭にして発言されたものである。

 

「悪の枢軸」という表現は第二次世界大戦における「枢軸国」と、ロナルド・レーガンの「悪の帝国発言」を組み合わせたものと見られる。

こういうことを知ると、今でも世界からは、枢軸国という言葉には「悪者」という印象が消えていないんだなあ、と思う。
さらに、このときは、日本はアメリカ側についていたから、枢軸国と戦う「連合国」になったようで不思議がしないことはない。

 

 

国連に話を戻す。

さっきの世界史用語集にある「戦争を防止できなかった国際連盟の失敗を教訓とすべく」というところを読むと、「やはり、国連は戦争を禁止しているじゃないか!」と思ってしまったが、実際は、そうではないようだ。

そもそも、朝鮮戦争のとき、国連は国連軍を組織して戦争を行っている。
これまた、ウィキペディアよりからの引用になる

イギリスやオーストラリア、ニュージーランドなどのイギリス愚連邦占領軍を含むイギリス連邦諸国、さらにタイ王国やコロンビア、ベルギーなども加わった国連軍を結成した。なおこの国連軍に常任理事国のソ連と中華民国は含まれていない

なお、朝鮮戦争において国連は、国連軍司令部の設置や国連旗の使用を許可している。しかし、国際憲章第7章に規定された手順とは異なる派兵のため、厳密には「国連軍」ではなく、「多国籍軍」の一つとなっていた

 

ボクが、韓国で「DMZ(非武装地帯)ツアー」に参加したときに、韓国人ガイドが話していたことを思いだした。
「現在でも、ここには国連軍の兵士がいます」

「Life in Korea」という韓国の旅行サイトのHPにも、このようにある。

「板門店を管轄する部隊は韓国軍地域の中で唯一に国連軍が管掌しており」

そういえば、高校生のころの世界史の授業でも、朝鮮戦争で国連軍が戦ったことを習ったような気がする。すっかり忘れてた。
こうなると、自分が「国連は戦争をしない」なんて思い込んでいたのか分からなくなる。

 

さらに国連憲章を見ても、やはり国連は武力の行使(戦争)を認めている。

国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、 共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し(国際連合広報センター)

 

この文章を読めば、「共同の利益」のためであって、正しい手続きを行なえば、武力を用いることができるということが分かる。
その具体例が朝鮮戦争なのだろう。

でも、国連が「戦争を認めている」というのは、言い過ぎかもしれない。
「共同の利益」のためであったら、「それ以外に解決の手段がないときは、戦争という選択肢も排除しない」ということだと思う。
とにかく、国連が戦争を否定してはいないのは確かだ。

ことろで、自分がA型の性格のせいか、細かい語句が気になる。
「戦争」と「武力衝突」は何が違うのか?

 戦争

軍隊と軍隊が兵器を用いて争うこと。特に、国家が他国に対し、自己の目的を達するために武力を用いる闘争状態をいう
(大辞泉)

武力衝突

武力衝突とは、武力を持った組織と民兵などが、武力で争う事を言う。                 (ウィキペディア)

 

国連が「武力を用いる」となれば、これは武力衝突ではなく、戦争やそれに近いものだろう。

とはいえ、当然のことながら、国連がすべての戦争を認めているわけではない。

さらに、もう少し国連のことを調べていくと、むしろ、「戦争を起こさせないための戦争」や「平和のための戦争」なら認める、というように見える。

次回に続きます。

 

コメントを残す

ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。