日本好きイスラーム教徒の悩み。蒸し暑いし、墓地がない。

 

知り合いに、日本人の男性とつき合っているイスラーム教徒の女の子がいる。

その子は静岡に住んでいる20代の女性で、彼氏とのつき合いは3年ほど。

そろそろ結婚を考えているのだけど、越えないといけないハードルがある。
それは、彼氏をイスラーム教徒にすること。

インドネシアにいる親がそれを結婚の絶対条件にしている。
だから、これは動かせない。

彼女はそれに悩んでいたのだけど、幸い彼は宗教よりも愛を選んだ。
イスラーム教への改宗には前向きらしい。

 

もしその男性がイスラーム教徒になったら、もう豚肉とアルコールを口にすることはできなくなる。
豚骨ラーメンや日本酒ともおさらばだ。

その日本人は人生最後の豚肉料理とアルコールに、何を選ぶのだろう?

 

 

イスラーム教徒が食べていいものは「ハラル・フード」といわれている。
ハラルとはアラビア語で「許されている」という意味の言葉。

ノンアルコールビールは「ハラル」ではないらしい。

 

イスラーム教徒として日本で生活するのなら、食べ物以外にも重大な問題がある。

先ほどとは別のインドネシア人ムスリム(イスラーム教徒)の知り合いがいる。
彼は研修生として日本にやって来て、3年間住んでいた。

そのインドネシア人は日本が大好き。
電車や地下鉄は時間に遅れないから、計画を立てればそのとおり実現する。
街にはゴミが落ちてなく、きれいで快適。
トイレも清潔で、まるで天国。

ただ、日本の夏にはまいっていた。
湿度が超高い日本の夏は、インドネシアの夏よりも過ごしにくい。
部屋の中にいても汗が出るなんてことは、インドネシアの夏にはなかったらしい。

ラマダンの期間と日本の夏が重なったとき、彼は生まれて初めて水を飲んでしまった。
「飲まなきゃ死ぬ!」と、彼は本気で思ったから。

 

彼は日本を好きだったけど、日本で一生を過ごしたくはないと言う。
インドネシアにいる家族と離れてしまうのもイヤだけど、イスラーム教徒として重大な問題があるから。

それは埋葬法。
イスラーム教徒は火葬ではなく、土葬することになっているのだけど、日本ではそのための場所を確保することがむずかしい。

 

インドネシア人のイスラーム教徒

 

前回、アメリカでの土葬を希望する中国人について書いた。
中国人もイスラーム教徒と同じく火葬がイヤで、土葬を望む人が多い。

この記事を書いていて、知り合いのインドネシア人ムスリムの言葉を思い出した。

「日本ではイスラーム教徒を埋めてくれる場所がないんです。だから、日本で一生住みたくはないですね」

 

イスラーム教ではキリスト教と同じく、死後、人は復活すると信じられている。
そのためには肉体が必要だ。
だからイスラーム教で火葬は禁止されている。

地獄に落ちた人間が体を火で焼かれることになっている。
だからイスラーム教徒にとって火葬は、罪人が罰せられているというイメージがあるという。
それで余計イヤがる。

 

日本にいるイスラーム教徒にとって「土葬ができない」というのは重大な悩みで、最近も西日本新聞にこんな記事(2018年01月12日)があった。

九州のイスラム教徒が「死後の行き場がない」と悲鳴を上げている。

イスラム教徒のカーン・ムハマド・タヒルさん(50)=別府市=は「誰かが亡くなっても、その人のために何もできない」と嘆く。埋葬できず、飛行機で自国へ遺体を持ち帰る人もいるという。

「イスラム教徒墓難民 九州土葬用施設なく 偏見や抵抗感…新設に壁」

九州にはイスラーム教徒の受け入れ墓地がないため、死体は今、キリスト教(カトリック)の墓地に埋葬されているという。

 

 

日本の法律では、土葬は禁止されていない。
だから場所さえあれば、日本での土葬は可能。

でも8年前、栃木県にイスラーム教徒を埋葬する墓地を作ろうとしたけれど、住民の反対運動が起きて市はその計画を許可をしなかった。

これは仕方ない。
住民の反対を押し切って墓地をつくったら、きっと別の問題が生まれる。
そんな強引な態度では、多文化共生ではなく「強制」になってしまう。

時間をかけて、イスラーム教に対する誤解や偏見を解くしかないだろう。

 

浜松市でおこなわれた音楽フェスティバルでは、イスラーム教徒用のこんな礼拝所がつくられていた。
中をのぞく市民の姿もあった。
こんな感じにイスラーム文化を広く紹介するのはいいことだ。

 

 

 

こちらの記事もどうぞ。

キリスト教 「目次」

イスラーム教 「目次」

本人の宗教観(神道・仏教)

 

1 個のコメント

  • 興津の山奥(ってほどでもない)にイスラム墓地があったような?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。