明治天皇について。上に立つ人やリーダーの資質とは?

 

はじめの一言

「日本には、一種の連続性という絆があり、それは、おそらく、永遠ではないとしても、今なお存続しているのです(レヴィ・ストロース)」
「日本賛辞の至言33撰」「ごま書房」

 

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今回の内容

・明治天皇「自分は楽しむために生まれてきた人間ではない」
・ 権利はあったけれど、使わない。

 

・明治天皇「自分は楽しむために生まれてきた人間ではない」

日本学者のドナルド・キーン氏は、明治天皇の優れた資質として「克己心(こっきしん)」をあげている。

克己心
自分の欲望をおさえる心。自制心。 (大辞林 第三版の解説)

たとえば、憂鬱(ゆううつ)そうな様子をされていた明治天皇に、側近が気晴らしに京都に行くことをすすめた。
そのとき明治天皇は、側近にこうお応えになっている。

「朕は京都が好きである。故に京都には参らぬ」と答えた。

自分の好き嫌いに従いたくなかった。好きなことをやらないのが美徳だと考えていたのです。楽しみを断る、自分は楽しむために生まれてきた人間ではない、と儒学的な思想です。
「明治天皇を語る (ドナルド・キーン)」

「朕は京都が好きである。故に京都には参らぬ」
自分はそれが好きだから、それはしない。
これはまさに、克己心そのものだ。

明治天皇は、「自分が京都へ行ったら、迷惑がかかる」ということを気にされていたらしい。

自分が東京に行ったら、東京で人々が困る。自分は書類を見なければならない、いろいろ人にも会わなければならない、自分の都合で京都へ行くのは無責任だ、と思っていました。自分の仕事、自分のやるべきことは東京にあると信じていたからです。
(同書)

ご自身で、「天皇とはどんな存在か?」「天皇としてどう行動すべきか?」といったことを常にお考えになっていたのだと思う。
憲法とは別に、ご自身でも天皇という存在を規定されていたのだろう。

 

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清涼殿とガイドの後頭部。

 

その話で思い出したことがある。
京都御所に行ったときに、ガイドがこんなことを言っていた。

「明治天皇は、京都がとてもお好きでした」

御所の清涼殿の近くに、明治天皇が子どものころに遊んでいた庭がある。
その庭が大好きだったという。
この記事の上にある写真が、その庭。

 

 

明治天皇がどれくらい京都をお好きだったか?

こんなエピソードがある。

生前、天皇と皇后が夕食を共にしながら京都の思い出を語っていたとき、ふいに「私が死んだら陵は必ず桃山にするように」といったことがありました。
天皇が重体になったとき、皇后はそのときの天皇の言葉を思い出したのです。

「明治天皇を語る (ドナルド・キーン)」

ちなみに、明治天皇は一度も京都に行かれなかったわけではない。
お墓参りで京都に行かれている。

 

また、軍事演習をご覧になったとき、明治天皇はこのような姿を見せていた。

茨木に演習視察に出かけた際は、馬車を降り高地にのぼり、荒れ狂う風雨、時に雪が舞うような寒さの中、演習が終るまで一時間以上身をさらしたままでした。最高司令官として、不屈の精神の手本を示したかったのでしょう。(同書)

 

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ドナルド・キーン氏は明治天皇について、「感心すべきこと」というものをあげている。
それは明治天皇には権利があったけれど、それを使わなかったことだ。

総司令官である大元帥だったにもかかわらず、一度の戦争の作戦に干渉したことがないのです。ヨーロッパの皇帝などはしょっちゅうやっています。自分たちの好き嫌いで、この人は連隊長にしろといった命令を出していました。(同書)

ふつうの会社のなかにも、すぐに口を出す上司はいる。
「見守る」「まかせる」ということができずに、あれこれと口をだしてしまう。
それで部下たちを混乱させる困った上司というのは、どこの会社でもいるだろう。

「権利があるのに、口をださない」というのも、克己心のあらわれだ。
「言いたいけど、口をはさまない」ということは、強い自制心がなかったらできない。

「何も言わないとなると、自分は『だたそこにいるだけ』になってしまう。だったら、自分の存在とは何なのか?」
そんなふうに思ってしまうかもしれない。

 

 

 

そんな明治天皇の態度は海外にも伝わっていた。

明治天皇がお亡くなりになったあと、フランスの新聞がこう書いている。

偉大な王とは、例えばスペインのフェリペ2世のように国事を自ら操ろうと欲する者のことではない。優れた大臣たちに信頼を置き、王権の威光でこれを支援する者のことである。
(同書)

三国志では劉備玄徳という蜀の皇帝が出てくる。

劉備は知力では孔明に及ばず、武力で張飛や関羽に勝てるはずもない。
劉備自身に、とくに優れた能力があったようにはみえない。

でも、劉備は人徳をもっていた。
まわりの人間に、「この人ためなら」と思わせる徳をもっていたから、優れた武将がよろこんで劉備の下で働いていた。
劉備はまわりの人間の能力を活かす能力をもっていたと思う。
これと同じ資質は、水滸伝の宋江にもあてはまる。

「オレについて来い!」ということだけがリーダーシップではない。
「言わない」「動かない」という克己心や自制心も、優れたリーダーの資質だ。

 

 

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今まで、東南アジア、中東、西アフリカに旅をしてきました。外国に行って初めて気がつく日本の良さや特長があります。以前、歴史を教えていたので、その経験もいかして、日本や世界の歴史や文化などをテーマに、「読んでタメになる」ようなブログを目指します。