【中国の犬食】賛成反対の理由は?玉林”犬肉祭り”の現状

 

犬はもともとは狼だった。
長い年月をかけて、人が狼を飼いならすことによって、いまの犬が誕生したのだった。

狼を家畜化して犬にしたのは、現在の中国にいた人たちだと考えられている。

人類の友である犬をつくったのは中国の人たち。
にもかかわらず、いまの中国人は犬を食べる。
言い方は悪いけど、”友喰い”だわな。

 

毎年6月、中国の玉林市で世界最大級の犬の祭りがおこなわれる。

といっても、犬好きは、絶対にその祭りを見に行ってはいけない。
心に傷を負うから。
一生悪夢にうなされるから。

玉林市でおこなわれるのは犬を食べる犬肉祭り。
日本で土用の丑の日にウナギを食べるように、ここの中国人は夏の暑さを乗り切るために、犬肉を食べて栄養をつける。
この犬肉祭りで1万匹の犬が殺される。

ロイター通信のブログ(2015年6月26日)を見ると、ここは犬の地獄だ。

ハンマーで殴られて気絶させられ、絞め殺される犬たち。その後、丸焼きにされ、吊るされた状態で店頭などに並ぶ。この光景は、中国南部の広西チワン族自治区玉林市では、夏の「風物詩」となっている。

ブログ:中国の「犬肉祭り」に思うこと

犬が生きたまま調理されたりすることもあるというから、「風物詩」というよりもはや「風物”死”」。

 

地元の人にとっては「祭り」でも、動物愛護団体からしたら犬の大量虐殺でしかない。
それで中国だけでなく、世界中から「残酷だ」「野蛮だ」と非難されてきた。
狼を人類の友にした中国人はいま、悪魔になってしまった。
*もちろん、犬肉食に反対する中国人もたくさんいる。

中国の金華市の場合は激しい抗議を受けて、600年以上続いていた「金華湖犬肉祭」を2011年に廃止してしまった。

 

玉林市の犬肉祭りについても、賛成派と反対派で激しく対立している。

「これは、この地でずっと続いてきた伝統であり文化だ!」と怒鳴る人がいれば、「動物の命を尊重しろ!国際化時代にそんな野蛮なマネはするな!」と怒鳴り返す人がいる。

中国人は基本、聖帝サウザー。相手にゆずることを知らない。
「譲り合いありがとう」なんてお花畑理論は、この修羅の国では通じない。

でも争いが激化すると、「まずは落ち着け。けんかはするな」と仲裁する人ぐらいは出てくる。
レコードチャイナの記事(2013年6月22日)で、北京大学の教授がこう言っている。

今、重要なのは衝突を避けることだ。社会の文明が進歩するにつれ、民間で受け継がれてきた犬食文化もゆっくりと変化するはずである

「犬肉祭り」に非難殺到も現地政府「廃止は難しい」、伝統か倫理観か―中国

 

ボクは犬を食べないし、食べたこともない。
韓国で日本人旅行者に誘われて、迷ったことはある。

でも、犬食文化には興味があったから、いろいろな中国人に、犬肉食について意見を聞いたことがある。
ボクの聞き取りでは、若い人は反対でおっさん以上の人に賛成派が多い。

上海の20代の女性

「国際化の時代で犬を食べるなんて恥ずかしい。いまの中国は世界の大国です。オリンピックや万博も成功させました。そんな中国で犬食なんてしていたら、野蛮な国だと思われてしまいます。他の国から見て、恥ずかしくない国にならないとダメですよ」

 

杭州の40代の男性。

「中国はもう大国です。だから、欧米人の言うことに左右される必要はありません。犬食は中国の食文化で伝統です。外国は関係ないですよ。中国のことは中国人が決めればいいんです」

2人とも「中国はいまや世界の大国で、大きな影響力を持っている」という認識は同じ。
でも、そこから導き出される結論がまったくちがう。

 

それぞれ納得できる部分はある。

でも、ボクは杭州のおっさんに賛成。
その国の食文化はそこに住む人が決めたらいい。
日本人はクジラを食べて欧米からぶったたかれるけど、そんなのカンケーねえ。

欧米の価値観を先進的・最善と考えて、それに合わせる必要はない。
欧米人が何か言ってきたら、「あなたとは違うんです」とでも言えばいい。

 

 

「玉林市の犬肉祭りは、いまどうなっているのか?金華市みたいに、なくなってしまうのかな」と思っていたところ、「news-vision」というサイトにその記事がのっていた。

これを読むと、中国での犬肉食の現状が見えてくる。

犬食については、欧米人がよく怒る。
玉林市の祭りは世界的に有名だから、欧米のメディアがよく取材に来る。
でも、地元の人にとってはこれが不愉快きわまりない。

欧米人が街中を好き勝手に歩いては写真を撮る。
そして「これほど残酷なことがおこなわれている!」と世界に伝える。
それを見て怒った人たちが、国の内外から王林市にやって来て激しく抗議する。

それで今では、人目のつくところに犬肉を置かなくなったという。

記事(2018年4月17日)では、国内に限れば、反対派の声も小さくなっている。

「北部(北京や上海など)のやつらは自分たちは犬を食べないから犬肉食を反対する人たちも多かった。でも最近はほとんどの人が、反対していないよ」

一時は、ボランティア団体が犬を助けたらしいが、餌やりなどが続けられず、結果殺してしまったらしい。

犬を助けるくらいなら、恵まれない子供におカネやボランティア力を回すべきだという流れになっているという。

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この記事を読むと、中国での犬食は、杭州のガイドが言っていた方向に進んでいるようだ。

「犬を救え!」と思って救ってみたものの、育てるにはお金がかかる。
「餌やりなどが続けられず」というのは、要するに、そのための費用が出てこなかったということだろう。
動物保護を叫ぶのはタダ。
でも、それを実践して続けるためには費用がかかる。

それで、「犬を助けるくらいなら、恵まれない子供におカネやボランティア力を回すべきだ」という流れになっているらしい。
ということは、中国での動物愛護は「ブーム」でやっていた人が多かったのだろう。

 

 

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2 件のコメント

  • 中国食歴4000年、食べるのは自由ですが、殺し方が酷過ぎます。これでも40代チャイナーおっさんの言う事、納得しますか?

  • 私は犬肉を食べませんし、賛成ではなくて反対の立場です。
    でも基本的に、中国のことは中国人が決めればいいと思っています。
    欧米から「日本人はイルカを残酷に殺す」という非難があっても、イルカ漁をやめるべきだとは思いません。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。