中国の犬肉食にアメリカ人が反対する理由・消えた日本の犬食文化。

 

東アジアや東南アジアには犬や猫の肉を食べる国があり、欧米人はそれを毛嫌いしている。
それで去年、アメリカの議会がそうした国に対し、犬や猫の肉の売買をやめるよう呼びかけることが決議された。

レコードチャイナの記事で議員がその理由を説明している。(2017年11月21日)

「米国の文化では犬や猫は大切にするものだ。彼らは普通の動物と異なり、人間を助けたり、癒やしたりすることができる。警察の爆発物や違法薬物の捜査を空港などで支援することもできる。人間のパートナーであり、かわいがる対象だ」

中国などアジア諸国に「犬や猫の肉の売買やめよ」、米下院で決議案

 

日本に犬肉を食べる習慣はなく、アメリカと同じように「犬や猫は大切にするものだ」という考え方がある。
日本の国会が「犬や猫の肉の売買やめよ」と、他国の食文化に口出すことは考えられないが、アメリカでは自国の価値観や文化を他国に“押し付ける”ことがある。
それは、日本人には「違いを認める」とか、「他国の価値観を尊重する」といった美点があるからというより、「和を以て貴しとなす」の国だから、相手と対立するのがイヤだからだろう。

日本に比べれば、アメリカやヨーロッパは外国にいろいろ言うし行動もする。
「アサド政権は子どもに化学兵器を使いやがった!許せない!」と米英仏はシリアにミサイルをぶち込んだけだけど、日本はそれに関わらなかった。
良くも悪くも、日本は外国と一定の距離をとっている。

 

バンコクの地下鉄にあった、日本の支援に感謝を伝えるプレート
日本はこういうことなら、けっこうやっている。

 

前回、中国の王林市でおこなわれている「犬肉祭り」のことを書いた。

このときには、1万匹の犬が殺されて食べられるという。
地元の人にとっては伝統行事だけど、これを毛嫌いする欧米人は山盛りいる。

最近アメリカ人と話す機会があったから、彼に意見を聞いてみた。
アメリカの議会が「犬や猫の肉の売買をやめよ」と呼びかける決議をしたことをふくめて。

彼は犬肉食には絶対反対の立場だ。

「犬はペットだぜ。なんでそれを食べるんだよ?他に食べるものがたくさんあるだろ。食用犬でも残酷だね」

このアメリカ人はハンバーガーやとんかつが大好き。
「他に食べるものがたくさんあるだろ」と言うけど、なんで豚や牛を食べていいのに犬はダメなのか?
犬と他の動物との違いをたずねると、彼はこんなことを言う。

犬には知性と心がある。だから犬はコミュニケーションができるし、感情も豊かで人間の気持ちも分かる。
分かるか?犬は人間の友だちなんだよ。
そこが豚や牛とは違うんだ。

どうやら、豚さんや牛さんは人類の友人にはなれないらしい。
インドで牛は神なんだが?

彼から逆にこう聞かれた。

「おまえが犬を豚や牛と同じ動物と考えているなら、なんで犬を食べないんだ?」

知らねーよ。
日本には、犬を食べる食文化がなかったからじゃないの?
牛や豚との違いや、犬や猫を食べない理由はよく分からん。

 

 

でも個人的には、犬肉を食べるかどうかは中国人の自由だと思っている。

「ボクは犬食には反対だけど、それを中国人に言うつもりはない。中国で中国人が何を食べるかは、彼らが決めればいい。外国人から『残酷だ』という非難を受けて、伝統の祭りがなくなったところもある。外国の価値観で、1つの伝統をなくしてしまうのは問題だ」

僕はキメ顔でそう言った。
だけど、アメリカ人からこう言われた。

「そういう態度は冷たいな」

冷たい?

「犬が解体される映像を見たことあるか?皮をはがされて、でっかい包丁でさばかれている様を。殺される寸前の犬の目を見ると心が痛くなる」

「そりゃ、豚も牛も同じだろ」と思うのだけど、彼に言わせると犬は違う。
「犬はコミュニケーションができるし、感情も豊かで人間の気持ちも分かる」というさっきの「人間の友だち理論」をくり返す。

だからといって、そういう価値観を外国に押しつけるのはどうなのか?
彼はキメ顔でこう言った。

「犬は言いたいことがあっても、伝えられないんだよ。だから、人間が助ける必要がある。アメリカの議会が『犬や猫の肉の売買をやめよ』と呼びかけたのは正しい判断だ」

面倒くさくなったし彼の考えは分かったから、この話はここで終了。

 

僕はもう疲れたよ
なんだか、とても眠いんだ・・・

 

おまけ

中国や韓国の犬食文化を知ると、「日本じゃありえねー」と思ってしまうけど、昔は日本も仲間だった。

江戸時代の日本人も犬肉を食べていた。

この食習慣に大きな影響をあたえたのが将軍・徳川綱吉(つなよし)。
綱吉といえば「生類憐みの令」ですね。

生類憐みの令

5代将軍綱吉が1685年以降に出した極端な動物愛護令。
1687年以降、特に犬に関して極端化し、95年に四谷・大久保・中野の犬小屋に野犬を養い、綱吉は犬公方と称される。

(日本史用語集 山川出版)

 

この命令が出てから、日本で犬を食べる習慣がなくなっていった。

これらの犬喰いの事例は、いずれも生類憐み令以前のことで、元禄時代以降、今日まで犬喰いの習慣は日本にはない。社会の価値観変化の一例である。

(詳細 日本史研究 山川出版)

 

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4 件のコメント

  • 犬食に反対はしない。犬を愛する人には辛いだろうけど、あなたの犬を食べる訳ではない。あなたが犬を愛する気持ちを否定するのでもない。犬食を反対する人はヒステリックだ。犬だけではない。鯨も同様。白人が豚を食べようが牛を食べようが、否定されない。きっと家畜とペットは違う、って主張するのだろうが、それはその人達の文化や規範。韓国や韓国人は余り好感が持て無いが、彼らの犬食は彼らの文化。白人が目くじらを立てるのには辟易してる。

  • こういうのは痛いニヒリズムだと思う。
    ただ哲学者であることを曝け出したくて、自身は答えを持っていないのに手あたり次第ぶつけるだけぶつけてくる。
    立場を考慮もしてくれない。ただ、マウント取りの道具として思想攻撃をする。

    あなたの気持ちもよく分かりますよ。
    2年前、大切な友人と宗教観念の違いで喧嘩して友を失ったクリスチャンです。
    僕がもう少し大人だったら、このアメリカ人のように彼をなだめられたのかもしれません。
    アメリカ人の友人はよっぽど大人で、地に足付けていますね。感心しました。
    せっかくの友人なら、傷つけてしまわないように。かといって議論を深めるには大切なセンテンスだとも思いますけどね

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。