日本とイスラエル:なんでユダヤ人は飛騨高山に行くのか?

 

今までに、いろいろな外国人を白川郷や飛騨高山に連れて行ったことがある。

アメリカ人・イギリス人・タイ人・香港人・インド人などなど。

白川郷の合掌造り集落や「小京都」と呼ばれる高山市には、みんなよろこんでいた。
でも、お気に入りのポイントは人によって少しちがう。

例えば、香港人は東京や大阪より、白川郷や高山の方がいいと言う。
香港はビルが林立する世界的な都市。
ショッピングやグルメは香港で満たされる。

だからその香港人は、日本の都会にはまったく興味がない。
ビルなんて見たくないし、夜景なら香港の方がいい。
その人の話では、日本に来る香港人は自然と素朴を求めているという。

「自然を見たいなら、中国に行けばいいじゃん」とボクが言うと、「中国はコワいからイヤです」と香港人が言う。
そんな香港人からしたら、白川郷の自然や高山のこじんまりとした雰囲気は、とても魅力的らしい。

 

また、白川郷に案内したインド人は「ここはリシュケシュだ!」と言っていた。
リシュケシュはガンジス川が流れる街で、ヒンドゥー教の聖地になっている。
ヨガはここで生まれたとも言われる。

白川郷を見てリシュケシュを連想するなんて、さすがインド人。

 

白川郷にあるこのつり橋が、下のリシュケシュのつり橋に似ているという。
「山・川・つり橋」があれば、インド人には全部リシュケシュになる気がする。

 

いま、飛騨高山を訪れるイスラエル人(ユダヤ人)が急上昇しているらしい。

「飛騨高山とユダヤ人」という組み合わせには意外性を感じたけど、理由を知れば納得納得。
今回は日本とイスラエル、岐阜とユダヤ人の結びつきについて書いていこうと思う。

 

 

イスラエル人(ユダヤ人)の間で、飛騨高山が大人気。

高山市に宿泊するイスラエル人の数は、2016年に初めて1万人を超えた。
これは2013年の3倍以上。
今ではヘブライ語を覚える飲食店の店主もいるとか。

ちなみに、ヘブライ語で「こんにちは」は「シャローム」と言う。
シャロームとは「平和」という意味。

でもあのへんは、テロばっかりあるような?
エルサレムは「平和の都」って意味だけど、あのへんは、平和からずい分遠く離れているような?
まあいいや。

とにかく、高山市はイスラエル人からモテモテ。
これに気を良くした高山市長は、「圧倒的じゃないか、我が地方は」と言ったという(うそ)。

 

浜松市には「謝老夢(シャローム)」という老人ホームがある。

 

なんでユダヤ人は飛騨高山をめざすのか?

ボクにはこれが分からなかった。
イスラエルと飛騨高山を結びつけるものに、まったく心当たりがない。

「日本とイスラエルの関係」だったら分かる。
杉原千畝(ちうね)だ。

ナチス=ドイツに殺されそうになったユダヤ難民を助けた日本人。
彼らにビザを出して亡命を手助けし、数千人の命を救った。

高校の日本史ではこう習う。

杉原千畝

リトアニアの首都カウナスの日本領事館代理の時、ナチスの迫害を逃れたユダヤ人らに、日本通過のビザを発給。1969年、イスラエル政府から『イスラエル建国の恩人』として表彰された

「日本史用語集 (山川出版)」

ユダヤ人を救った「命のビザ」

 

ピコーン!思い出した!
杉原千畝は岐阜の出身だった。

命の恩人である杉原の名はイスラエルでも有名。
それで近年では、たくさんのイスラエル人が岐阜県八百津町にある「杉原千畝記念館」を訪れている。

 

 

「これだ!」

岐阜県の自治体はこのイスラエル人旅行者に目をつけた。

彼らが記念館に行くついでに、高山や白川にも足を運んでもらおうと、「杉原千畝ルート」という観光ルートをつくった。
そして海外に出むき、観光客の誘客活動をおこなう。

イスラエルの首都テルアビブで、「杉原千畝ルート」を紹介したときの様子はこんな感じだったらしい。

「東洋経済オンライン」の記事(2018年05月05日)から。

「命のビザ」を持ったユダヤ人難民が上陸した日本で唯一の港である「人道の港 敦賀」に関する映像の上映が行われると、涙を流して見入る参加者の姿もあったという。

飛騨高山にイスラエル人観光客が集まる理由

 

岐阜県のキャンペーンが大当たり。
どんどんパフパフ。

こうしたワケで、飛騨高山を訪れるイスラエル人の数は、いま急上昇しているという。

すべては杉原千畝さんのおかげですね。
それと、イスラエル人の動線に目をつけて、うまく観光キャンペーンをした岐阜県の勝利。

 

 

こちらの記事もどうぞ。

日本人の誇り・ユダヤ人を助けた杉原千畝と樋口季一郎。

ナチスによるユダヤ人迫害の実態・”絶望の航海”とホロコースト。

”国のない民”ユダヤ人とクルド人①日本にはないディアスポラ

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。