鎌倉武士の価値観②女性を尊重し、意外と気配りな人たちだった。

 

「夏目雄大」という俳優が、過去にこんなツイートをしていた。

「ぶすに人権はない」
「妊婦さんに膝カックンして絶望させる遊び」

これで所属事務所をこの俳優を解雇する。
こういう女性蔑視は、鎌倉時代の武士ならあり得ない。

北条重時が残した武家の家訓「極楽寺殿御消息(ごくらくじどのごしょうそく)」を読むと、鎌倉武士の価値観が見えてくる。
そうすると、女性に「ぶす」と言うことは武士のすることではない、ということが分かる。

前回、そんなことを書いたどす。

鎌倉時代の価値観①「ぶすに人権はない」は武士としてダメ!

 

今回はその続きどすえ。

鎌倉時代の武士は、どんな価値観や精神をしていたのか?

さっそく「極楽寺殿御消息」の内容を見ていこう。
以下の引用は「日本人とは何か。 山本七平(PHP文庫)」から。

北条重時は「女や子供だからといって、バカにしたり軽く見たりしてはいけない」と言う。
その理由として、天照大神の存在をあげる。

女わらべとて、いやしむべからず。天照大神も女躰にておはします。

 

神道の最高神・天照大神は女性。
日本中の武士が天照大神を深く尊敬、崇拝していた。
その天照大神は女性だから、女や子供を「いやしむ(劣ったものとして、軽蔑する)」ことはいけないという。
*女神は珍しくないけど、女性が最高神というのは世界でもあまりないらしい。アメリカ人がこれを知って驚いていた。

さらに重時は、新羅に攻め込んだとされる神功皇后も例に出している。

 

結婚について、妻は「一人をさだむべし」とある。
「一人の女性としか結婚してはいけない」ということ。

一夫一妻制は、いまの日本ではあたり前。
でもこれは、当時の東アジアの常識を打ち破っている。
13世紀ごろの中国や朝鮮では、支配者階級の人間は一夫多妻がふつう。
この点、日本の武士は違っていた。

もし他に妻をめとったら、必ず「地獄にもおちぬべき也」と重時は言う。

 

 

北条重時は、女性にはこう接しろと書いている。

いかなる賤の女なりとも、女の難をいふべからず。(中略)よき事をば申も沙汰すべし(よい事なら言って評判にしてもよい)あしきをかくし給ふべし。是を思ひわかぬ人は、わが身にはぢがまし事有べし。すこしも高名ならず。

「日本人とは何か 山本七平 (PHP文庫)」

 

どんなに身分の低い女性でも、「女の難をいふべからず(悪いことを言ってはいけない)」。
「よき事をば申も沙汰すべし」で、その女性の良いところをまわりに言いなさい。
女の悪いことは心にしまっておけ(かくし給ふべし)。

こういうことが武家の家訓に書いてある。

こういう鎌倉時代の武士の考え方からしたら、女性に「ぶす」と言うことは絶対にいけない。
すこしも高名にはならない。

ましてや、「ぶすに人権はない」とか「妊婦さんに膝カックンして絶望させる遊び」という言葉は、鎌倉武士の価値観からしたらあり得ない。

 

 

「女わらべとて、いやしむべからず」
「いかなる賤の女なりとも、女の難をいふべからず」
「よき事をば申も沙汰すべし(よい事なら言って評判にしてもよい)あしきをかくし給ふべし」

こういう女性を尊重する見方は、当時のヨーロッパ(キリスト教社会)でもなかったらしい。

「女は男より劣った存在」という認識は、中世のヨーロッパでは当たり前。
北条重時と同じ13世紀、中世最大のスコラ学者トマス・アクィナスは「女は失敗作」と言っている。

十三世紀、聖トマス・アクィナスはこう述べた。女は神がおつくりになった失敗作である。

「万物の創造においては、いかなる欠陥品もつくられるべきではなかった。したがって、女は万物創造の際に生み出されるべきではなかったのだ。」

ヴィッテンベルクに住むルター派の信徒たちは、女が本当に人間かどうかをめぐって論争した。
正統派は、すべての罪の責任は女にあると考えていた。

「キリスト教封印の世界史 徳間書店」

鎌倉武士はヨーロッパ人よりずっとフェミニストだった。

 

 

武士を「戦う男」と考えたら、鎌倉の武士は江戸時代の武士より、よっぽど武士らしい。
平和な江戸時代に生きた武士は、実際には、ただの公務員だったから。
剣を握って敵と向かい合うより、筆をとって紙に文章を書いたりお金の計算をしたりするほうが多かった。

承久の乱や元寇があった鎌倉時代は、そんなのんびりした時代ではない。
江戸の武士よりは、鎌倉の武士のほうがずっと多くの修羅場をくぐり抜けて来た。

そんな男たちは女性をとても尊重していたのだけど、さらに言えば、鎌倉武士は”気くばりの人”でもあった。
「極楽寺殿御消息」にはこんな教えもある。

・葬式がおこなわれている近くでは、笑ってはいけない。
・前から人が来たら、相手がだれでもあっても自分から道をゆずれ。
・酒のつまみやお菓子は、他人にたくさんとらせろ。
・料理は人より多く取るな。
・旅をするときは、人夫や馬に重い物を持たせるな。
・借りた物はすぐ急いで返せ。
・理由もないのによくしてくれる人は何かあると思え。
・物を盗まれて相手を訴えたとしても、その人間の一生を台なしにしてはいけない。
・農家の人が家の中に植えた果物をほしいと思うな。
・他人と議論をするな。

*くわしいことを知りたかったら、「日本人とは何か。 山本七平(PHP文庫)」を読んでください。

これが鎌倉武士の価値観や考え方どす。
平成のいまでも立派に通用するどすやろ。

 

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