W杯・日本代表の時間稼ぎ。西野監督は勝海舟じゃね?

 

きのうのポーランド戦で日本代表がしたことが、いま日本のネットで大きな議論になっている。

日本はラスト10分間、時間稼ぎのためにひたすらパスを回していた。
そのまま試合は終了。
日本はポーランドに負けたけど、決勝トーナメントに進むことができた。

日本人はいいとしても、外国人がこの試合を観たら「ふざけんな!」「何やってんだよ!」と怒ると思う。

日本は横にパスするだけで、まったく攻撃をしない。
だから、全然ほめられた戦い方ではない。

時間稼ぎのパス回しは、正直言ってつまらないし好きでもない。
だからといって、あの試合で日本人が恥じることはない。

 

あれを決断した西野監督は正しかった。
得点することより、日本が決勝トーナメントに進むことを優先して正解だった。
やっぱりまだ、ワールドカップで日本の試合を観てみたい。

海外メディアのなかには「残念な試合」とか「もう日本を応援しない」という声もあったけど、そんなのは無視してOK。

 

 

歴史好きの人間としては、ここで幕末に活躍した勝海舟について書かせてほしい。

少しサッカーの話から離れるけど、日本人としては、ワールドカップよりもこっちのほうが大事だと思う。

 

勝海舟は幕府にいた人間だけど、「徳川将軍が天皇に日本の統治権を返上する」という大政奉還を支持していた。
そして、薩摩藩や長州藩を中心とする新政府軍との全面対決を避けるために、江戸城の無血開城を決意する。

これは高校日本史の超重要事項だから、知っておこう。

江戸〔無血〕開城

1868年の官軍の江戸攻撃に際し、徳川慶喜の恭順、山岡鉄太郎の裏面工作、勝海舟・西郷隆盛の会見などにより、幕府は江戸城を無血で明け渡した。

「日本史用語集 (山川出版)」

 

歴史作家の司馬遼太郎氏は、この勝海舟の決断と行動を手放しでほめている。

‘日本国’に、一発の銃声もとどろかせることなく、座をゆずったしまった人なのです。

(「明治」という国家 司馬遼太郎)

 

勝海舟本人は江戸城の無血開城について、どう考えていたのか?
後年、勝はこう語っている。

おれが政権を奉還して、江戸城を引き払うように主張したのは、いわゆる国家主義から割り出したものさ。三百年来の根底があるからといったところで、時勢が許さなかったらどうなるものか。

かつまた都府(首都)というものは、天下の共有物であって、けっして一個人の私有物ではない。

江戸城引き払いのことについては、おれにこの論拠があるものだから、だれがなんといったって少しもかまわなかったさ

「氷川清話 (講談社学術文庫)」

 

戦わずして、新政府軍に江戸城を渡してしまった勝海舟を「卑怯者」と言う人もいた。

でも、江戸(首都)は幕府の私有物ではなくて、日本のもの。
勝海舟にはそんな信念があったから、「だれがなんといったって少しもかまわなかったさ」と言う。

日本代表の西野監督がこの勝海舟と重なる。
「西野監督の判断は卑怯」という声もあるけど、ものごと全体を考えたら、あれが正しかった。

 

決勝トーナメント進出より、自分が思う「日本人の美学」を優先して、ポーランドに攻め込むのは日本代表の私有化になる。
ワールドカップで大事なことは、ルールを守ったうえで次のステージに進むこと。
「時間稼ぎのパス回し」はいいことではないけど、卑怯なことでもない。

それにこの試合で、日本は主力メンバーを休ませることができた。
日本は万全に近い態勢で、次の試合を戦うことができる。
日本にとってはこれが最善だ。

 

イギリス人やロシア人が「残念な試合となり、茶番に変わった」、「もうロシア人は日本を応援しない」と言っていたけれど、だれがなんといったって少しもかまわなかったさ。

 

 

日本代表のパス回しについて、政府が”公式見解”をしめしている。

菅官房長官は記者会見の場で、西野監督の決断を「戦略」と評価した。

「ルールの中でさまざまなことを考えた上での戦略だったと思う。陣頭指揮を執る監督の決断だったのではないか」

終わったことをあれこれ言っても、何も変わらない。
いま大切なことは、決勝トーナメントでベルギー戦に勝つこと。

 

前回の記事で、セネガル代表のシセ監督の言葉を紹介した。

セネガルはイエローカード2枚の差で、決勝トーナメント進出を逃してしまう。
日本に対して一番怒っていいのがこのシセ監督なんだけど、彼は一切不満を言っていないし、日本を非難してもいない。

「ゴール」の記事から。

フェアプレーによって敗退が決まったが、私はこのチームを誇りに思う。これもルールの一つだ。ルールをしっかりと頭に入れ、予想しなければならなかった。

セネガル指揮官、“フェアプレー”での敗退にも潔し「ルールの一つ。このチームを誇りに思う」

シセ監督も、これはルールで認められた行為と言っている。

日本はルールを守ったうえで、決勝トーナメントに進んだ。
これが客観的な事実。
それをどう解釈するかは、その人の主観による。

でも、日本にとってこれが最善の結果なのだから、やっぱり西野監督の決断は正しかった。
監督は「だれがなんといったって少しもかまわなかったさ」と言っていい。

 

それに、「日本はズルい」と海外から言われる一方で、日本人サポーターのゴミ拾いでは、世界から賞賛を受けている。
日本の「上げ下げ」をトータルで見たら、どっちが上か分からない。

でも今回のことで、世界での日本の評判を下げたのは事実。
だから、これから日本代表がフェアプレーを続けることで、汚名を返上すればいい。
とりあえず、ベルギーには勝ってほしい。

 

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4 件のコメント

  • 確かに勝海舟は江戸城の無血開城を行い、その結果無用な流血が防がれたとして称賛されましたが、それはあくまでも高度な政治的判断によるものだったからです。
    政治、あるいは軍事であれば、スポーツマンシップなど何の価値もなく、ただただ結果にのみ評価が下されたことでしょう。
    勝てば官軍という言葉が示すように。
    しかし今回の場合はどうでしょうか。
    サッカーは政治活動でしょうか、それとも軍事行動なのでしょうか。
    自分はサッカーはスポーツだと思っていますし、スポーツなら、結果よりももっと大事なものが確かにあると思っています。
    今回日本チームは、決勝トーナメントに進むためにわざと負けました。
    それは結果として正しい政治的判断だったのかもしれませんが、スポーツマンシップに背き、世界中のサッカーファン並びにサッカーという競技そのものを侮辱する行為だったと思います。
    ルールに反していないという声もありますが、「わざと負ける」などというのはルール以前の問題でしょう。八百長じゃないですか。
    自分の考え方が固いのかもしれませんが、世界で最も人気のあるスポーツで、最も権威のある大会で、他でもない日本チームがこんな試合を披露したことを悲しく感じています。
    日本選手団は、いつから政治家になってしまったんでしょうね。

  • その通りですよ。
    私も試合を観ていてガッカリしました。
    海外の反応を見て落ち込みました。

    でも、私は日本代表が好きでまだW杯で戦うのを観たいと思います。
    だから、日本代表を非難するより支持したいです。
    今回の記事はそういう方向性で書いたものです。

    「いろいろな議論がある」ということは、「正解はない」ということです。

  • いろいろな議論、その通りですね。
    私は高校時代に弱小ラクビー部にいました。
    そこでは勝てずとも失点を少なくするプレイに努めました。点を取るリスクよりも取られるリスクを重くみての判断でした。スポーツマンシップに欠けるといわれる話でしょうか。
    私が日本のプレイに思ったのは、フィールドにいた日本選手の力量では同点にする能力よりもより失点しかねないと監督に判断された事実です。その判断が的確かはアレですが寂しさを感じました。

  • 何を目的にするか?ですね。
    時間稼ぎのパス回しはプレーとしては最悪です。
    でも、次に進めたので結果オーライですかね。
    日本も外国から非難されるぐらいしたたかなことをしてもいいと思います。

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    今まで、東南アジア、中東、西アフリカなど27の国・地域に旅をしてきました。以前、中学生に歴史を教えていた経験もあります。 また、日本にいる外国人の友人も多いので、彼らの目から見た日本も知っています。 そうした経験をいかして、日本や世界の歴史・文化・宗教などをテーマに、「読んでタメになる」ブログを目指しています。