仏教文化”放生”に表れる、中国人と日本人の人間性の違いって?

 

5年ぐらい前、台湾人の友人が旅行で奈良にやって来た。

一緒に猿渡池のまわりを歩いていたとき、「ここは日本らしいところですね」と足を止めて写真を撮る。

台湾人の心をとらえたこの場所は、「奈良八景」のひとつとして有名。

 

猿渡池の歴史は古い。
ここは約1250年前に、放生(ほうじょう)を行うためにつくられた。

興福寺が行う「放生会」の放生池とし、天平21年(749年)に造られた人工池である。放生会とは、万物の生命をいつくしみ、捕らえられた生き物を野に放つ宗教儀式である。

猿沢池(さるさわいけ、さるさわのいけ)

 

放生は「生き物の命を大事にしなさい」という仏の教え(殺生戒)による。
仏教徒の多い東南アジアの国で、この放生がよく行われている。

ボクはカンボジアで、かごの鳥を逃がす放生をした。
カンボジア人に「アメリカドルで払ってほしい」とドル払いを要求されて、1ドルで2羽のスズメを解き放した記憶がある。

 

放生された猿渡池の亀たち

 

日本のお寺には、こんな放生池のあるところがある。
放生ができなくても、寺によっては、池の鯉にエサをあげることができる。

浜松市にもそんなお寺がある。
で、たまにそこへ外国人を連れて行く。
タイ人やミャンマー人などの仏教徒にとって、鯉のエサやりは仏教的な善行のひとつ。
だから、彼らにとっては宗教的な意味がある。

 

 

以前、そんなお寺に宗教心ゼロの中国人と行ったときのこと。
中国にも仏教徒がいてお寺もあるのだけど、彼は「放生」というものを知らなかった。

「中国には放生じゃなくて、放流ならよくあります」と話す。

放流は小さな魚を川や湖に放すことで、放生と似ているけど宗教的な意味はない。
日本には放生も放流もある。

幼稚園児が小さな魚を川に入れて、「大きく育ってねえ」と小さな手をふるほほえましいニュースはたまに見る。
でも彼の話によると、日本人と中国人では、そこに”人間性の違い”が表れる。

「中国で川に魚を放すと、その魚をすぐに捕まえる人がいるんですよ。本当に恥ずかしくなります」

彼の言う「恥ずかしい中国人」とは、このAFPの記事(2007年6月9日 )に出てくる人たちのことをさす。

生態系を維持するため、政府が大量の鯉を川に放したところ、下流で待ちかまえていた地元の中国人が「ヒャッハー!」と言って(たぶん)、次つぎとゲットしてしまう。

労働者3000人以上が2時間をかけて、7万元(約110万円)相当の鯉を放流した。しかし、作業が終了したとたんに、近隣や下流の住民らが網など捕獲の道具を手に、松花江河岸に殺到。放流したコイの多くは、簡単に捕獲されてしまった。

放流したトラック13台分のコイ、末路は下流で住民の食卓へ

 

トラック13台分の鯉を放したのだけど、多くが約1000人の住民に捕まえられてしまった。
放流を行った政府関係者は「頭を悩ませている」という。

政府関係者すら嘆くような”民度”がそこにはあった。

 

 

ただこれは、10年以上も前のこと。
20年以上前から中国を旅行しているボクから見ると、中国人のマナーはこの10年でかなり良くなった。

例えば去年、中国の安徽省で行われた「魚放生祭り」の様子を見てほしい。

この祭りで湖に放たれたのは、コイ科の「ハクレン」という魚。
「ハクレンは中国で古くから広く養殖、食用されてきた「中国四大家魚」の1つ(下の記事)」という。

スタッフがこのハクレンを湖に入れた瞬間、こうなった。
レコードチャイナの記事(2017年3月1日)から。

スタッフが魚を湖に放した途端、その様子を見守っていた多くの市民が一斉に手や網で魚を捕まえ始めた。市民らはやめるよう勧告を受けても全く意に介さず、目の前のハクレンを追いかけていたという。

中国の湖で魚を放生、すぐに市民が群がり乱獲=中国ネット「恥ずかしい」「これが伝説の中国式放生か」

 

友人の中国人は放生を知らなかったけど、ここでは放生が行われている。
それはいいとして、あっ、やっぱり中国人は10年前と変わっていなかった。

 

このニュースを知った中国人の感想は?

「恥知らず」
「まだ小さいのに捕まえてどうする」
「こういうモラルのない人が中国から早くいなくなることを願う」
「これが伝説の『中国式放生』か」
「捕まえるのはお金で買うより楽しいんだよな」

古代、日本に仏教を教えた国ではいま、こんな「中国式放生」が行われているらしい。
こういうニュースが世界に伝えられるから、海外にいる中国人は「本当に恥ずかしくなります」と頭をかかえることになる。

 

中国の地下鉄で見たポスター

「文明」とは、ルールやマナーを守るということ。
「つまり日本人みたいに行動しろ、ということです」と中国人の日本語ガイドが言っていた。

 

こういう「中国式放生」の様子を見ると、中国人が日本人の”人間性”をほめる理由が分かってくる。

まあぶっちゃけ、日本人のマナーの良さは世界的に有名だし。

な~んて思っていたら、最近日本でこんなことがあったとさ。

福岡の筥崎宮で放生会をおこなっているときに、その場にいた人たちが争いを始める。
「まーまー、落ち着いて」と警察官が間に入ったら、今度はその警察官が襲われてしまった。
これは完全に逮捕案件。

九州朝日放送のニュース(2018/9/14)から。

すると片方のグループの男3人が交通整理で使う停止灯を折ったり、警察官を羽交い絞めするなどしたため公務執行妨害の疑いで逮捕しました。

【福岡】放生会で警察官を・・・ 男3人逮捕

 

「生き物を大事にしなさい」という放生会で警察官に襲いかかるとか、仏教精神のかけらもない。
放流した魚を捕まえる中国人よりたちが悪い。

これには日本のネットもあきれ顔。

・警官上等って日本じゃないね
・死人が出なかった事がニュース
・野蛮人
・むしろ警官のほうが 「お前なに羽交い絞めされてるんだよ」 って署内で説教されてそう
・アホだな
警官に軽く触れただけでもアウトやのに
・「『放生会』だから逃してもらえると思った」とでも言い訳すればちょっと見直してやる。
・放生会なんだからそのまま川に放ってあげなさい
・地元民だが昔ヤンキー全盛期の頃放生会にミキハウス着ていったらミキ狩りに会うとか深夜屋台が引き払ったあとに路面を探したら小銭が落ちてて1日で50万円稼げるとか都市伝説めいた話があった

最後のコメントを読むと、同じ”岡”でも、福岡は静岡とはまったく違う。

それはいいとして、こんな騒ぎを起こすのは例外的な人間だけど、まだ”文明化”していない日本人はたしかにいる。
あおり運転もそうだけど、「中国人の民度は~」とバカにできない現実が日本にもある。

放生会という伝統文化は形骸化しているけど、「命あるものを大事する」という仏教精神は、まだまだ日本には必要だ。

 

こちらの記事もどうぞ。

日本・タイ・ミャンマーの仏教文化:放生とタンブン

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。