日本人・タイ人・インドネシア人の動物観の違い。やっぱ宗教?

 

いま全国の注目が九州のイノシシに集まっている。

福岡県北九州市にある砂防ダムに、2頭のイノシシが落ちてしもた。
高いダムの壁を駆け上がるなんて、イノシシにはミッション・インポッシブル。

脱出できないまま弱っていくイノシシがニュースで紹介されると、日本中から「かわいそう」という同情と「早く助けろ」という非難が北九州市に殺到する。

日本農業新聞の記事(2018/10/27)

同市の鳥獣被害対策課は鳴りやまない電話の対応に追われた。ほとんどが同課に対するクレーム。「なぜ対応しない。怠慢だ」「行政の責任だ。助けろ」。強い口調で担当者を叱責する人も多かった。1時間以上、怒鳴られた担当者もいた。

迷いイノシシ砂防ダム転落 同情電話 全国から殺到 賛否の中救出劇 農業被害深刻住民は“困惑” 福岡県北九州市

 

ただ、早く助けろという電話は「ほとんどが市外からだった」という。

というのは、地域住民にとっては害獣でしかないから。
イノシシによって野菜や稲が荒らされて、現地では深刻な農業被害が出ている。
子どもがイノシシに襲われることを警戒していて、夜間、子どもを外に出さない住民もいるのだ。

イノシシの数は増え続けているため、市は1500頭を捕獲する計画を打ち出し、地元農家や猟友会がイノシシ駆除に取り組むことも決まった。
地域住民にしてみれば、イノシシは殺害(駆除)されても仕方のない存在だ。

市の担当者もそれは分かっているけど、全国からの「イノシシかわいそう」の声には勝てない。

担当者は「住民のためには逃がすべきではないが、これだけ批判が大きいと対応せざるを得ない」と憔悴(しょうすい)し切った声で話す。

 

ネットの反応でも、住民や担当者の考え方と同じ人が多い。

・殺到する電話をシカトするか、電話した人を突き止めるくらいの国にならないと、イチイチ振り回されていたら話にならないよ。
・捕獲したあと山に逃がしててワロタ
・助けろと言うやつの家に着払いで送り付けてやればいいんだよ。どれだけ迷惑してるかがわかるから
・ハンターに頼んで普通に駆除すると思ってた
・こういう外野からのクレームを無視出来ない担当者の気持ちは分かるが
こんな話受け入れると色んな意味でマイナスしかないぞ
・穴に落ちたら保護して
外に出たら捕獲して処分される アホやで
・可愛そうってクレーム入れてるのは獣害に遭ってない都市部の人間なんだよな
・こういうのはマスコミに嗅ぎつけられる前に射殺しないとダメだな。
・どうせ狩猟期間になったら駆除しに行くのに

 

日本では賛否の分かれるこのイノシシ救助問題。
東南アジアの人たちなら、どう思うのだろう。

 

 

東にディズニー、西にUSJがあるのなら、中部には「のんほいパーク」がある。

タイ人とインドネシア人を連れてそこに行った時、それぞれの国での野犬対応について話を聞いた。
先ほどのイノシシ救助に重ねて言えば、大ざっぱにいってタイ人は「かわいそう」派で、インドネシア人は「駆除すべき」派に分かれる。

 

仏教の考え方で、生き物を殺すことは禁止されている。
この考え方が広く国民に浸透しているため、タイでは、例え狂犬病の可能性のある野犬でも殺処分には否定的な人が多いという。
話を聞いたタイ人も同じ考えだ。

仏教国のタイにタイして、インドネシアではイスラーム教の影響が強い。
イスラーム教で犬は「汚れた動物」と見られている。

ハディースでは、犬の唾液は不浄とされ体についたら七回洗うように指示されている。

不浄な生き物・イスラム教

 

インドネシア人の話では、ジャカルタなどの都市部では、野犬は殺処分されるからほとんど見ない。
でも、カリマンタン島やバリ島では野犬が多かったという。
バリ島ではヒンドゥー教の影響が強いし、カリマンタン島ではキリスト教徒などが多いから、その影響ではないかと彼は話す。

ダムに落ちたイノシシを助けるかどうかについて、日本人の宗教観はほとんど関係ない。
だから意見が分かれるのだと思う。

 

オランウータンとは、オラン(人)とウータン(森)で「森の人」という意味のインドネシア語。
カリマンタン島で見ることができる。

 

おまけ

この記事を書いていたら、栃木県で60代の男性がイノシシに襲われて腕などをかまれるというニュースを見た。
男性は病院に運ばれて手当てを受けている。

NHKニュース(2018年10月29日)から。

警察や市は、イノシシを見かけても決して近づかないよう、付近の学校や住民に注意を呼びかけています。

駐車場に突然イノシシが… 60代男性かまれてけが 栃木

 

やっぱり殺処分もやむを得ない。
このままでは、来年の亥年が中止になりかねない。

ちなみに日本の漢字でイノシシは「猪」だけど、中国語で猪は「ブタ」になる。
中国の漢字でイノシシは「野猪」。
だから「野ブタ。をプロデュース」の中国版は「野猪大改造」になっている。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

中国人から見た日本語「同じ漢字でも、意味が違いすぎっ!」

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。