日本人の善意。「外国人に千羽鶴を送ろう」の良い例/悪い例

 

知り合いに、ホットドッグが大好きなアメリカ人がいる。
日本に来てからの5年間で、食べたホットドッグは数知れず。
でも、今までに2回イヤな経験をした

ホットドッグを注文した彼がアメリカ人と分かると、日本人の店員さんは「アメリカ人だから」とケチャップを多めにつけてくれた。
善意のサービスだ。

でも、彼はケチャップが嫌い。
大好きなホットドッグがケチャップで台無しにされてしまった。
たけど、相手はニコニコしているから、何も言えずにそれを食べてしまったという。
こんなことが今までに2回あった。

「なんでアメリカ人なら、ケチャップが好きだと思うのか?」
彼にはそれが分からないし、日本人の想像するアメリカ人に自分を当てはめられることも気分がよくない。

職場では「それはおかしいと思う」とか「なんで自分はそれをしなくてはいけないのか?」とか、自分の考えを率直に言う彼も、相手の好意には文句が言えなくなってしまう。

そんなありがた迷惑は、誰にでもあるはず。

 

 

前回、イギリスのサッカー選手が日本のファンから千羽鶴をもらって感激したことを書いた。

病院でリハビリ中のチェンバレン選手に、こんなサプライズが届けられた。

 

日本ではケガや病気の回復を願うとき、こんな千羽鶴を作ってわたすことがある。
他にも、災害の被災者に贈ることもある。

前者は千羽鶴の良い例だ。チェンバレン選手の笑顔を見てほしい。
問題は後者。
こっちの千羽鶴はときどき問題になる。
ハッキリ言って、ありがた迷惑になることが多い。

 

今年7月、西日本を中心に豪雨が降って、大きな被害が発生した。
このとき、「被災地へ折り鶴を贈るのは自己満足でしかないからやめるべき」というツイートが話題や議論を呼ぶ。

千羽鶴は必ずしも必要なものではないし、重いし場所もとってしまう。
それに心がこもっているから捨てにくい。

非常時や緊急時に千羽鶴は厄介にもなる。
だから被災地に贈るべきではない、ということは、東日本大震災や熊本地震などでも議論になった。

 

では、現場の人はどう考えているのか?

「ねとらぼ」のインタビュー記事(2018年07月11日 )で、熊本市復興総室の室長がこう話している。

千羽鶴や色紙を現時点で送るのは、先方が困られるので控えた方がいいと思います。というよりも、個人からの支援物資を送ること自体をやめた方がいいでしょう。

「被災地に千羽鶴はやめるべき」議論が西日本豪雨で再燃 熊本地震で現場はどうだったか、熊本市に聞く

 

ケチャップ・サービスと同じ。
「これをやったら、相手はうれしいはず」なんてイメージを押し付けてはいけない。

このことについてもっと知りたかったら、ここを開いて見てほしい。

東日本大震災や熊本地震以降、たとえ善意であっても処分するしかない千羽鶴を送られることは避難所での負担になるという指摘が被災経験者から行われるようになった。
評論家の荻上チキは著書「災害支援手帖」の中で、実際にあった「困った救援物資」の例として、寄せ書きや千羽鶴を挙げている。

千羽鶴・被災地への送付に対する批判

 

善人と良い人は違う。
でも、まだ日本国内であればよかった。

 

さて時は2010年、ハイチで大地震が発生した。
この地震による死者は約31万6000人という空前絶後のレベル。

このとき「被災者に千羽鶴を贈ろう!」という運動が、若者を中心にミクシィで盛り上がる。
全国に5つの支部が作られたというから、かなりの規模だ。
「家族を失い悲しむ人々に鶴を送ることで貴方は1人ではないとの思いを伝えたい」と呼びかけ人は話す。

この「千羽鶴作戦」にどんな反応が返ってきたか?
まあ想像のとおりですよ。

・千羽鶴をわたしたところで、調理の種火になるだけ。放火に使われるかもしれない。
・千羽鶴は場所をとる。そのスペースには医薬品や食料を詰め込むべき。

 

さらには、ハイチのブードゥー教で鶴は「悪魔の使者」とされているから、千羽鶴を贈るのは失礼に当たるという意見まで飛び出した。

日本のハイチ共和国大使館の関係者は、「千羽鶴の意味を伝えるのも、そんなに簡単ではないかもしれません」と言う。
略奪や放火が起きているときに、ハイチ人が千羽鶴の意味を知る必要はない。

結局、ホットドッグと同じだ。
ケチャップをつける前に、相手にそうしてほしいかを確認したほうがいい。
「善意があれば何でもできる」というわけではないのだから。
下手したらビンタされるかも。

 

でも、これよりはずっとマシ。

国連のPKO隊員が薬やベビー用品などと引き換えに現地女性に性交渉を要求し、220人以上が応じていたことが2015年に報じられた。

ハイチ地震・支援活動に乗じた犯罪

カンボジアで日本のPKO部隊が尊敬された理由が分かる。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。