悪人に慈悲:日本人と中国人&韓国人のやさしさ・価値観の違い

 

きのうイソップ物語の「アリとキリギリス」から分かる西洋人と日本人の価値観の違いについて書きやした。

夏の間、まじめに働いていたアリと歌を歌って楽しく過ごしていたキリギリス。
冬になると、キリギリスは食べ物がなくなって困ってしまう。
でも最後にはアリが食べ物を分けてあげた、という心温まる終わり方が日本の「アリとキリギリス」。
一方、「それは自己責任」と笑ってキリギリスを見殺しにするのが西洋の「アリとキリギリス」。

これは価値観の違いで、どちらが良い悪いの問題ではない。

くわしいことはこの記事をどうぞ。

「アリとキリギリス」でわかる日本人と西洋人の価値観の違い

 

個人的な見方だけど、欧米の価値観は基本的に自分を自分で助ける「自助」で、日本人は助け合う「互助」だと思う。
これは西洋人が狩猟民族で、日本人が農耕民族ということに由来するのかも。
そういえばイギリス人のスマイルズが「自助論」で、「天は自ら助くる者を助く」なんて書いていたし。

こんな感じで日本の「やさしい」は、欧米では「甘い」とみられることがあると思う。
でもそれは西洋だけではなくて東洋でも同様。
日中韓の「やさしさ」の価値観を比べると、日本人は中国人や韓国人よりも甘い。
これからそれを見ていきませう。

 

四文字熟語に「七縦七擒(シチショウシチキン)」というのがある。
中国で生まれた言葉で、日本ではあまり使われないけど辞書には載っている。
これは「七回擒(捕まえ)、七回縦(解放した)」という故事に由来する。

ここで三国志ファンにはピンと来たのでは?

これは諸葛孔明が中国南部に遠征したときの話だ。
孔明は敵将孟獲と7回戦い全て勝ち、そのたびに孟獲を逃がした。
何度戦っても孔明には勝てない。
それ以上に、捕まえても殺さず、何度も逃がす孔明の人徳の大きさにまいってしまい、孟獲は心から孔明に服従することにした。

こういうストーリーは中国人や日本人の価値観に合う。
「徳」を重視する韓国人もきっと好きな話だ。

 

でも、「東郭(とうかく)先生」の物語はどうか?
*中国と韓国で「先生」は「ミスター」の意味で、「~さん」といったところ。
「東郭先生」の内容はざっとこんな感じだ。

ある日、農夫の東郭さんは寒さで震えているヘビを見つけた。
かわいそうに思った東郭さんは、そのヘビを胸に抱いて温めることにする。
するとヘビは東郭さんに噛みつく。
そして東郭さんはヘビの毒で死んでしまった。
*ヘビではなくオオカミのバージョンもある。

まさに「恩を仇で返す」で、心やさしい人が善行をしたら殺されてしまったというオチ。
夢も希望も、身もふたもない。
読後感としては最悪のレベル。

でも、韓国人はこの話から人生で大事なことを学んでいる。
朝鮮日報のコラム(2017/07/23)から。

毒ヘビと知らずに抱いたのだとしても愚かなことだが、毒ヘビと知っていて抱いたのなら、相手の本質を把握できない無知な人間にすぎない、という教訓を伝える。

「毒ヘビをいたわってもかまれて死ぬだけ」

 

ヘビを助けた東郭さんは「愚か」か「無知」のどちらかなのだ。
つまり「アリとキリギリス」のように、ヘビを見殺しにするべきだったってこと。
韓国ではこんな物語が小学校の教科書に載っているというから、日本とはやっぱり感覚が違う。

この物語は韓国でわりとポピュラーらしい。
中央日報のコラム(2006年10月25日)でも引用している。

農夫は東郭先生に「野獣の性情はなおらない。あなたがオオカミに仁慈をかけるのは愚かな行為」という訓戒を残す。状況の本質を無視したり悟ることができず、愚かさで一貫したうその仁慈に対する風刺だ。 東郭先生はこのため、今でも中国で「無分別な慈善家」として多くの人に語られる。

東郭先生

 

この韓国紙は「読者らの予想を越えない話の構造だ」と書いているけど、日本人には「まさか」の展開だろう。
日本の物語で「無分別な慈善家はバカでしかない」というのはあったっけ?
あったとしても、小学生の教科書には載せないだろう。

日本なら「東郭さんを噛もうと考えていた毒ヘビは、やさしさに触れて改心したのでした」と、またハートウォーミングな展開に変えてしまうと思う。
この物語が韓国に伝わっているということは、日本にも来たのだろう。
でも「七縦七擒」と違って、日本人には絶望的に受けなかったら消えてしまったのでは?

 

でも、「東郭先生」が伝えていることは正しい。
どんな人間にも慈悲が通じることはない。
やさしさを行うかどうかは、相手を理解してから判断したほうがいい。
悪人に善行をしても、善意を利用されて自分が滅ぼされる。

日本人の価値観には受け入れがたい話だけど、韓国人や中国人の間ではこんな考え方が強いのだろう。

このへんのことは下の記事をどうぞ。

日本人と外国人の考え方の違い。毒ヘビにやさしさは無意味。

 

くり返しになるけど、この考え方は正しいし現実的だ。
世の中には、善意が通じる相手とそうでない相手が必ずいる。
自分が出会う人は善人ばかりだ、なんて思うのは非現実的。
たとえ悪人であっても自分の慈悲は通じる、なんてのは思い上がりを超えてごう慢だ。
「愚か」か「無知」のどちらかでしかない。

「郷に入っては郷に従え」というから、少なくとも中国や韓国社会で住むのなら、こういう心がまえでいたほうがいい。

これも中国・韓国と日本のどちらが良い悪いではなくて、「やさしさ」に対する価値観が違うだけのこと。

 

いままでの海外旅行で、何かトラブルがあったときに「だまされ方や盗まれた方も悪い」という見方をする外国人が多くて違和感をもっていた。
でもいまはその考え方もわかる。
被害にあった側が悪いとは思わないけど、油断やスキがあった人も多い。
ズボンの後ろポケットに財布を入れていて、スリにやられても同情はできない。

やっぱり日本人の価値観や考え方は、全体的に平和ボケしていて甘いと思う。
外国人が無人販売所を見て、「これが成立するなんてさすが日本だ」とよく感心する。
世界で無人販売所が珍しくない国は本当に珍しい。

 

中国で無人販売をしたらどうなるかは、この記事を見てほしい。

中国人やインド人が見た日本人。「背筋が凍る」ほど信用重視。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。