【ソ連にマクド】“笑顔のサービス”が社会主義国に与えた衝撃

 

いまから102年前、1917年にロシアで革命が起きた。

このロシア革命によってロマノフ王朝が滅亡し(2月革命)、レーニンが人類史上初となる社会主義政権を成立させた(10月革命)。

中学高校で習ったと思うけど、「社会主義」ってのは辞書的にはこんな意味。

【社会主義】

生産手段の社会的共有・管理によって平等な社会を実現しようとする思想・運動。

(デジタル大辞泉の解説)

 

自分のシャープやノートを使わず、教室にあるシャープやノートを借りて勉強するようなもの。
同じ物を使うからみんな平等だけどツマラナイ。

 

1917年のロシア革命のあと内戦をへて、1922年に世界初の社会主義国家「ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)」が成立。
*世界で最初の社会主義国家は1917年の「ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国」という見方もあるけど、細かいことはケンチョナヨ(気にしない)。

 

社会主義のソ連では、国民は「上から言われたノルマ(仕事量)をこなすだけ」という生活をしていたのだと思う。
*「ノルマ」はロシア語。
だから、金もうけや「消費者にサービスをする」という発想がほとんどない。

アメリカや日本などの資本主義国を「敵」と見なし、対立していたソ連は1991年に崩壊。
でもその前年、モスクワでこんな出来事があった。

AFPの記事(2010年2月2日)

マクドナルドのモスクワ1号店が開店20周年、当時の幹部が冷戦時の苦労を語る

世界の社会主義国のボス、ソ連の首都に資本主義のシンボルともいえるマックができたのだ。
ちなみにオープンしたは1990年1月31日という極寒の日。

マクドナルド・ロシアの創始者は「開店前夜には、来店者が1人もいないという悪夢を見た」とこのときをふり返る。
でも、このフラグは当たらなかった。
凍えるような寒さの中、開店前にはすでに5000人ほどの行列ができていた。
その人波は途絶えることはなく、「アメリカ文化帝国主義の象徴」と言われたマクドナルドで食事を楽しんだ人はオープン初日だけで3万人を超えた。

ちなみにそれまでの1日あたりの来店者数の最高記録は、ハンガリーのマクドナルドが記録した9100人。
過去最高の3倍とか、ソ連国民はどれだけマックを待ち望んでいたのか。

ソ連にマックを出店しようとする計画は1976年にあった。
でも、79年のソ連軍によるアフガニスタン進攻や欧米諸国がモスクワ五輪をボイコットしたことなどで、なかなか実現しない。
それでも、23年間あきらめなかった創業者の熱意はすごい。

 

ソビエト国民がマクドナルドで衝撃を受けたのは、食べ物よりも従業員のサービスだったかもしれない。
「金儲け」の意識が薄いソ連では、お客様へのサービス精神もなかった。

失礼で乱暴な対応が普通だった国民にとって、アメリカ式のサービスは新鮮この上ない。
従業員の笑顔を見ただけでショックを受けたという。
笑顔でのサービスに慣れていなくて戸惑う国民がいたことから、マクドナルドでは笑顔を減らすよう店員に指示することもあった。

「ロシア・ビヨンド」の記事(2019年2月03日)によると、当時のマクドナルドはもはや「神」。

西洋諸国の食生活との違いに驚いた。人々はマクドナルドの使い捨て容器をお土産として家に持ち帰ったり、使い回したりする程だった。

ソ連のマクドナルド第1号店がいかにロシア人を熱狂させたか

 

マクドナルドに入るための行列はその後も続く。
オープン翌年の1991年、さらの次の1992年になっても、人々は何時間も並んでいたという。
その行列がなくなったのは、モスクワ以外に新しいマクドナルドができたから。

いまのロシアでマクドナルドは「生活必需店」。
2010年に掲載されたAFPの記事によると、マックの1日あたりの来店者数はヨーロッパ全体で1290万人で、ロシアはその約13分の1(95万人)を占めている。

核兵器を開発しても、マクドナルド以上のものを作れなかった社会主義は消滅する運命にあったらしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。