アラブ・イスラム世界の“精神文化”:最大級の侮辱は「靴投げ」

 

書く材料を集めて満を持していたら、タイミングを逃してしまった。
10日ほど前、サッカーアジア杯でこんな野蛮な行為があったことを知ってますか?

サッカーメディア「ゴール」の記事(2019/01/30)

カタールと断交のUAE、ファンが国歌斉唱でブーイング…靴やペットボトルを投げ込む蛮行も

いまカタールとUAE(アラブ首長国連邦)はめっちゃ仲が悪い。
国交を断絶して絶交状態にあるから最低最悪だ。
そんなUAEでアジア杯準決勝が行われ、カタール代表がUAE代表と戦った。
結果は0-4でUAEの惨敗。
カタールにとってこれは歴史的勝利で、初めて決勝に進むことができた。
ということは、UAEのファンにとってはムカつくことこの上なし。

2点目を取られたあたりからファンの怒りが爆発。
それが上の記事にある蛮行で、「怒り狂ったUAEサポーターが観客席から靴やペットボトルを投げる蛮行を働いてしまう」と書いてある。

 

さて、ここからが本題。

怒ったファンがペットボトルを投げ込むことは日本でもありそうだけど、さすがに「靴」はない。
UAEサポーターがピッチに靴を投げ込んだ理由はなにか?

怒りを表す方法には、その国の精神文化があらわれている。
たとえば日本人は黙ってしまう。
「何も言わないことで何かを伝える」という以心伝心は日本人の精神的文化だ。
でも外国人にはこれが通じないから、「何を考えているのか、ハッキリ口に出してほしい!」とよく文句を言う。

アラブ諸国の多くでは、「相手に靴を投げる」ということが怒りをあらわす方法になる。
いろいろな物を踏みつける靴は汚いものの象徴とされている。
だからそれを投げつけて、相手の顔に靴底が当たることを最大の侮辱とする“文化”がアラブ・イスラーム世界にある。

相手の顔を足で踏みつけることを思えば、これ以上ない侮辱行為ということが分かる。

ペットボトルより、靴を投げ込むほうが怒りのレベルが高いのだ。
アラブで相手を侮辱する行為のランクは、「ブーイング<ペットボトル投げ<<<靴投げ」だと思う。

でも、UAEサポーターはやり過ぎた。
事態を重くみたAFC(アジアサッカー連盟)はこの件を調査する予定だ。
これからUAEに何らかのペナルティーがあたえられるかもしれない。
相手チームに靴を投げたら、とんでもないものが返ってきそうだ。

 

さて、日本語版ウィキペディアにはないけど、英語版には「靴投げ」の項目がある。
これを見て初めて知ったのだけど、靴を投げたり靴底を相手に見せたりする“侮辱文化”は世界の多くの国であるようだ。

Modern incidents where shoes were thrown at political figures have taken place in Australia, India, Ireland, Taiwan, Hong Kong, Pakistan, the United Kingdom, the United States, and most notably the Arab world.

List of shoe-throwing incidents

 

政治的な抗議として靴を投げる行為はアラブで特に多いけど、アジア・ヨーロッパ・アメリカの各地でも行われている。
こいつは初耳だ。

「靴投げ」で有名なのは欅坂46の「エキセントリック」だけど、世界でもっとも有名な靴投げは間違いなくコレ。

2008年にイラクのバグダッドでアメリカのブッシュ大統領が記者会見をしているとき、会場にいたイラク人記者が大統領めがけて靴を投げつけた。
隣にいるイラクのマーリキー首相があわてて手を出す様子にもご注目。

 

飛来する2足の靴をかわしたブッシュ大統領は、このあと「靴のサイズは28センチだった」と冗談を飛ばした。
さすがの余裕っぷりだ。

 

ブッシュ大統領に靴を投げつける抗議活動はカナダの都市モントリオールでも行われた。
英語版ウィキペディアにはこんな写真と説明がある。

「In Canada, protesters threw shoes at a poster of George Bush in front of the U.S. consulate in Montreal during a protest against the wars in Iraq and Afghanistan. 」

「カナダでもこんなことをするんだ!」と意外に思ったから、カナダ人に聞いてみた。
するとこんな返事がきた。

「No, it’s not common at all. But it is common in Iran and/or Afghanistan (can’t remember which) so I guess they were showing support that way.」

こんなことは普通はしない。
イランやアフガニスタンのどっちかでよくあることだから、カナダにいる移民がこの抗議をしたかもしれない。

やや意訳だけど、そんなことを言う。
靴を投げることで最大級の怒りや侮辱をあらわすのは、やっぱりアラブ・イスラーム世界の“文化”のようだ。

まあそれは分かるとして、スタジアムに靴を投げ込んだUAEのサッカーファンは裸足で帰ったのだろうか?
それとも、はじめから投げ込み用の靴を持っていたのか?

 

おまけ

アラブ人が多く住むイスラエルで、去年こんなことがあった。

産経新聞の記事(2018.5.8)

安倍首相に出された「靴のデザート」話題に イスラエル

イスラエルを訪問した安倍首相のために開かれた夕食会で、「靴の形の容器に入ったデザート」が出てくる。
これには当時、「客に対して失礼では?」という批判の声が上がっていた。

ネタニヤフ首相も同じ物を食べたのだから、安倍首相に対する侮辱ではないはず。
イスラエル側は「シェフの創造的発案」と説明したけど、このデザートは微妙だ…。

 

 

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Chocolate selection from the world 🌎 by #SegevArt ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ / A metal shoe by @tomdixonstudio

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。