中国の“文明化”、トイレで顔認識からトイレットペーパー設置へ

 

「日本人は、安全と水はタダだと思っている」

ユダヤ人がこう指摘したのはいまから40年ほど前のこと。
*といってもこの人は、本当は日本人なんだろうけど。

厳密にいえばタダじゃないけど、外国に比べれば、いまの日本でもこれは当てはまる。
いままでの海外旅行(東南アジア・中東・西アフリカ)の経験から言わせてもらうと、水と安全に加えて日本ではトイレもタダ。
海外では有料のところが多いのだ。

韓国を旅行した日本人のブログで、カフェのトイレを使おうと思ったら、トイレに入るのにパスワードが必要と知って驚いたというのを見たことがある。

日本ではトイレットペーパーが無料ってところもうれしい。
海外ではトイレの使用料を払ったうえに、ペーパーが必要ならそれも購入しないといけないことがほとんどだった。
トイレットペーパー付きの無料公衆トイレがあるのは空港だけだったような気がする。

 

トイレ使用料はいまのレートで16.5円。

 

中国語の「手紙」はレターではなくて、トイレットペーパーのこと。

 

さて、ここからは中国の話。

いまや中国は世界第二位の経済大国で、新幹線(高速鉄道)を走らせるほどの技術力も持っている。
でも残念ながら、市民のマナーや道徳意識はまだまだ。

CNNにそんな中国を象徴するようなニュース(2017.03.21)があった。

公衆トイレに顔認識ソフト、ペーパー泥棒を防止 北京の公園

首都北京にある天壇公園の公衆トイレでは、トイレットペーパーをつけると「待ってました」とばかりにすぐ盗まれてしまう。
上の記事では、1940~50年代生まれのお年寄りがペーパーをカバンなどに詰め込んで持ち去っているようだと書いてある。
いくつかの個室を回って、「回収」していたのだろう。
インタビューに応じた中国人は、「あの時代の人々はとても貧しかった。彼らは今も貧困を恐れている」と遠くを見つめて言ったとか。

そんな出来事が後を絶たなかったため、トイレの管理当局はついに顔認識ソフトウェアの導入を決定。

利用者がペーパーを引き出すためには、まずコンピューターの画面を見つめて顔面を認識させる必要がある。ペーパーが供給されるのは1人につき1回のみ。報道によると、同じ人物が追加のペーパーを必要とする場合は、そのまま9分間待たなければならない。

日本人よ、これが中国だ。

 

中国の公衆トイレにトイレットペーパーをつけたら、泥棒が出てくることは想像できたけど、顔認識ソフトが登場するとは思わなかった。
人民の良心を信じるより、機械にまかせた方が早いし確実という発想はさすが中国。
でもこれじゃ、市民の意識はいつまでたっても変わりゃしない。

 

中国でよく見た「文明」ということば。
マナーやルールを守るとか秩序を保つという意味らしい。
こういう啓発活動のせいか、駅や地下鉄では列のようなものができていた。

 

そんな中国にも文明化の波は広がっている。

レコードチャイナにこんな記事(2019/02/24)があった。

公衆トイレにトイレットペーパーが設置された!―中国メディア

ある中国人が正月(春節)に故郷の重慶市に帰ったとき、公衆トイレでトイレットペーパーを発見!
「正直、これはとても便利になった」とよろこんでいる。
人々の生活がよくなったおかげでこんな快適ライフが実現した。
もちろんペーパー泥棒はいるけど、紙がなくなったら補充すればいい。
これも経済成長のおかげだ。

顔認識ソフトではなくて、宣伝や教育によってそういう行為を減らしていこうと考えている。
時間や手間はかかるけど、「社会の文明レベル」というのは、そういうことの積み重ねで高まっていくと記事は指摘する。

小さなトイレットペーパーの背後には「できまいと恐れをなして、市民の進歩を阻むなかれ」という大きな道理があった。

 

人類ではじめて月に降り立った宇宙飛行士アームストロングはこう言った。

one small step for man one giant leap for mankind.
「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」

いまの中国にとって、トイレットペーパーの設置がまさにこれ。

 

社会は発展した。
次は人々のマナーだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。