祝・地下鉄開業!で表れたインドネシア人と日本人の「国民性」

 

「今日は文明開化だ」

インドネシアで初めての地下鉄が完成して、首都ジャカルタでおこなわれた開業式典でジョコ大統領が「文明開化だ」と高らかに宣言した。

この地下鉄建設を全面的に支援していたのが日本。車両も日本製だ。
地下鉄が無事開通してめでたしめでたし、といったところなのだけど、これを通じて見えてきた日本人とインドネシア人の“国民性”がある。
これからそれを書いていこうと思う。

 

まず、インドネシアの人たちは日本人とは時間の感覚がちがう。
これはもう絶望的で埋められないほどのちがいだ。
日本人の視点からハッキリ言えば、彼らは時間にルーズでだらしない。
でも、インドネシアではそれが常識になっているから、相手は待たされても気にしないし怒らない。
その点ではある意味、心が銀河系のように広い。

インドネシアでは約束の時間や納期がのびることがよくあるから、「ジャムカレット」という言葉もある。
これはジャム(時間)とカレット(ゴム)を組み合わせた言葉で、予定の時間が30分や1時間、事業の場合は半年、1年とどんどんのびてしまうのだ。

むかしインドネシアを旅行中に、そんな「ゴム体験」をした。
ジャカルタでホテルのスタッフにタクシーを頼んだところ、約束の時間になっても、ドライバーがまったくちっとも現れない。
「ドライバー、いつ来んねん?」とスタッフにきいても、「ちょっと待て」「あと5分だ」というのを3回ぐらいくり返して、40分遅れでようやくドライバーが到着。
おまえは宮本武蔵か。

「すみません」と言う前に、ドライバーは「渋滞だったから仕方ない」とまずは言い訳をはじめる。
「と言う前に」なんて書いたけど、ドライバーもホテルスタッフも「ソーリー」なんて言わない。
客を待たせたぐらいでいちいち謝罪しないのだ。
でもこれはやっすいホテルだから、高級ホテルだったら大丈夫と思う。

でも「郷に入っては郷に従え」で、インドネシアでは日本人が銀河の心を持って接しないといけない。
この南国ではいろいろと忍耐を試された。

 

 

時間感覚でいえば、インドネシアと日本は正反対だ。
「ジャムカレット」のようなゴム感覚は許されず、日本では時間は絶対、もはや神。
人の事情に時間を合わせるのではなくて、人が時間に合わせないとこの社会ではやっていけない。

「時間=ゴム」のインドネシアでも、日本が支援した地下鉄は目標通りの「3月開業」に間に合った。
インドネシアでの事業といえば、日本には、高速鉄道の建設を土壇場で中国に奪われた苦い記憶がある。
で、その後、あれはどうなったのか?
中国が請け負った高速鉄道は数年単位で完成が遅れている状況で、いつになったら開業するのか見当もつかない。

こう考えると、3月開業を目指して3月に開業させた日本ブランドのすばらしさが際立つではないか。
これも、「人を時間に合わせる」という日本人の国民性の表れだ。

でもすると今度は、インドネシア人の「らしさ」があらわれてしまったようだ。

事実通信の記事(3/24)

日本企業に不満も=「支払い滞り赤字」-インドネシア地下鉄

このタイトルがすべてなのだけど、責任とプライドをもって仕事をしてきた日本企業への支払いがのびている。
くわしい事情は記事を検索してもらうとして、なんだかんだと「不合理な払い渋り」が続いていて、受注した日本企業からは「支払いが滞り、赤字になった」という悲痛な声が上がっているとか。

日本側とインドネシア側で、「いつだよ?」「ちょっと待て」「あと〇日後だ」というやり取りが交わされていると想像する。

こんなことをしているとジョコ大統領、インドネシアの「文明開化」はまだまだ遠いですよ。
それとも、これものばしてしまうのだろうか。

 

 

 

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2 件のコメント

  • “日本式”導入が、利用者のマナーや時間に対する感覚の改善につながったりしたらいいですね。
    顧客のためにコストを切り詰めたりして頑張っても、政府機関?などのルーズな事務処理(感覚?)で支払遅延が発生すると金利が発生して赤字になる。
    経済発展を目指すのなら、政府自らルーズなしきたりを一新しないと、信用をなくし世界の一流企業との取引も出来ない。

  • そのとおりです。
    これがいろいろな意味での始まりになってほしいですね。
    ただ、インドネシア人は時間やお金に関してはルーズなところがあります。
    人を待たせても、友だちなら謝らないと言います。友だちならそれぐらいの失礼を許すのが当たり前で、それも親しみのひとつとか。
    インドネシア人との付き合いは、時間感覚や礼儀の面では正直ストレスを感じます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。