日本と東南アジアの社会の違い。ルール厳守かユルくいくか?

 

4月15日の深夜、名古屋でこんな出来事があったのを知ってますか?

出発時刻になって高速バスが動き出すと、乗り遅れた客が「どんどんどん!」とドアをたたく。
でも高校生の恋愛と同じで、走り出したら止まれない。
運転手はとびらを開けることなく、走り続ける。
すると乗客の男はバスの前に立ちふさがって「自分を乗せろ」と言う。
運転手は「絶対に無理ですって」と大声で言っているのだけど、男は聞く耳を持たない。
「警察呼びますんで!」と言って運転手が警察に通報すると、やっと男はあきらめてその場を去っていった。

目の前で高速バスが走り去るツラさは分かるけど、バス停以外でバスが乗客を乗せることは法律で禁止されている。でも、ドアをたたけるぐらいだから、運転手はバスを止めてあげてもよかったのでは?
ということで、ネットを見ると反応が分かれていた。
ここで「賛」と「否」の意見を見てみよう。

〇運転手の対応に賛成の人

・義務教育受けてたら時間に遅れるのは良くないとどんなアホでも学ぶだろう
・融通もクソもない
ルール通りやればいいだけ
・こういうことを許せる/許せないの分岐は社会人経験の差になる
大人になるほど、許しちゃいけないことを理解していく
・これを許して乗せちゃったら後々「あの時は乗せてあげてたのになんで」ってゴネるのが出てくるからね
運転手の対応は正解

〇「否」の人たち

・乗せればいいだろ、何が問題なんだよ。
・ダメなものはダメなんだろうけど
切れ者だと知恵で乗り切るんだよなあ
乗せるための方便をサクっと思いつく。
器量のある人間とはそういう人間。
・ほぼバス停から動いていない状態だったら、乗せてあげればいいのに・・・と思う。
高速バスでしょ?長距離だよ??
・そもそも裁判官でもないのに、法律に書いてあるからと言って乗車拒否できる権限をこの運転手が持ってるわけ?

意見が分かれるということは、唯一絶対の正解はないということ。
でもこれは「どっちもどっち」ではなくて、乗り遅れた男が悪くて運転手は正しい対応をした。と思う。
この出来事が世間に広まったのは、バスの車内にいた乗客がその様子を記録してツイッター(インスタグラムかも)に投稿したから。
「本当はダメだけど、それじゃかわいそうだから特別ですよ」と男を乗せたら、「これっていいの?運転手がしたのは違反行為じゃないの?」と投稿されるかもしれない。
動画撮影する人は投稿することを前提にしているだろうし。

そうなったら別次元の問題になってしまうから、「そういう決まりですから!」で乗車拒否をつらぬいたほうがいい。
あとは本社に連絡して指示をあおいで、必要なら警察にまかせるしかない。
でも「決まりですから!」で、目の前で高速バスに乗り損ねたときの絶望感は理解できる。

 

 

これが外国だったらどうだろう?

ここからはボクの経験による意見だけど、韓国や中国だったら法より情を重視して、ドアをたたく乗客がいたら運転手は乗せてくれると思う。
でもって、乗客もそれを問題視しない。
だれも問題視しないから、こんなことは問題にもならない。

東南アジアだったら、ドアを開けない運転手のほうが責められそうだ。
日本人はルールや決まりをよく守るから、バスや電車の運行は世界でもっとも時間に正確といわれる。
でも柔軟性に欠けるから、日本の社会は融通がきかない。

東南アジアの国はこれと正反対で、すごくユルユル。
インドネシア・カンボジア・タイ・ベトナム・ラオス・インドでバスや電車で移動するとき、出発時刻は「希望値」でしかなく、参考ていどにしかならなかった。

下はカンボジアの旅行会社にあったバスの出発時刻だけど、実際には30分や1時間は平気で遅れた。

ラオスやインドネシアも同じで、それらに比べるとタイはまだ正確だった気がする。

 

到着時刻が書いてあっても正確には「着いた時間が到着時間」で、1時間2時間遅れても運転手は何も言わない。
それがふつうだから、カンボジア人の乗客は誰もなにも言わない。
いまでも東南アジアでの移動は、全体的にはこんなぬるい感覚だと思う。

日本に5年間いたタイ人がタイに帰国したあと、日本とタイの違いを聞いてみたことがある。

「日本の社会は決まりやルールが厳しいけど、タイの社会はのんびりしているからすごく楽。仕事中にスマートフォンで友だちとやり取りをしてもいいし、昼ごはんで10分ぐらい遅刻しても誰も何も言わない。」

この雰囲気は東南アジア全体に当てはまる。

 

途中で車が故障することも日常ちゃめし事だったから、そもそも到着時刻の意味がない。

 

でもその分、東南アジアの社会では融通がきく。
たとえばカンボジアでは、「到着時刻を短縮することもできる」という話を聞いた。
「私は急いでいるから、早く行ってほしい」と運転手に5ドル(約550円)わたせば、途中休憩をすっ飛ばして、最速で目的地に行ってくれるという。
この裏技を教えてくれたヨーロッパ人旅行者は実際にこれをやったという。

韓国でも似たような話を聞いた。
タクシードライバーに割増料金を払うと「弾丸タクシー」になって、最高速度も信号も無視しておそろしい速さで運んでくれるという。
ネットを見ると、いまでも「弾丸タクシー」はあるらしい。おすすめはしないけど。

 

話を東南アジアにもどしますよ。
逆にカンボジア人が日本に来ると、融通がまったくきかないから大変だ。
知り合いのカンボジア人が浜松の街でしこたま酒を飲んだあと、バスに乗って家路についた。
すると途中で、急激な尿意に襲われる。
「こ、これはヤバい」と思った彼は信号待ちのとき、運転手に「おしっこをするから降ろしてほしい」と保育園の遠足のようなことを頼んでみた。

「それはいいですよ」と言われたけど、それには条件があった。
バス停でしか降ろすことはできないし、あなたを待つことはできない。
この日本のあたりまえにカンボジア人が驚いた。
カンボジアだったらすぐにバスを止めてくれて、おしっこが終わるまでドライバーも乗客も待っていてくれるという。
日本社会に絶対に求めてはいけないのはその感覚だ。
そういう意味での融通は、日本ではまったくきかないから。

バスチケットの買いなおしはイヤだから、結局そのカンボジア人は死ぬ思いで耐えに耐えて、バス停近くのコンビニにかけこんで九死に一生を得ることができたという。

 

この人はタイの観光バスのドライバー
客が博物館に入ったあと、ハンモックを取り出して、優雅に携帯をいじっていた。
素足にサンダルだけど、シャツは着ている。これ以上は求めてはいけない。

 

東南アジア諸国といっても、国によって価値観や考え方はそれぞれ違う。
でも、ルールや時間を厳守する日本に比べたら、どこの国もとってもユルイ。
だから、「義務教育受けてたら時間に遅れるのは良くないとどんなアホでも学ぶだろう」というのはそのとおりだけど、きっと運転手はバスを止めてくれるし、乗客は誰も気にしない。
そんな違いがあるから、東南アジアでは魂が解放される。

こんなことも東南アジアなら、生徒にトラブルがなかったらきっと不問にされる。
朝日新聞の記事(2019/04/23)

京都で修学旅行中、校長らが昼から利き酒 福岡の中学校

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。