ミャンマーから消える「タナカ」文化、欧米と日本のせい?

 

はじめの一言

「私は今でも、日露戦争と、日本が勝利を得たことを聞いたときの感動を思いおこすことができる(バー・モウ)」

「日本賛辞の至言33撰 ごま書房」

 

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バー・モウ(ウィキペディア)

1893年2月8日 – 1977年5月29日
ビルマ(現ミャンマー)の独立運動家で政治家。
初代大統領でもあった。

 

 

前回は、ミャンマーのチン族という少数民族の文化を紹介した。

チン族の女性は、顔に入れ墨をいれるというもの。
これは「立場の弱い女性がさらわれないように、わざと顔を醜くしていた」ということが由来らしい。

 

入れ墨を入れるときに女性が亡くなってしまうことがあって、この風習は政府によって禁止された。

今回はこれとは反対にミャンマーの「良い文化」を紹介したい。
それが「タナカ」というもの。

 

・ミャンマーの「タナカ」

ミャンマーを旅行したら必ず気づくものが、ミャンマー人の女性がほおにしている「タナカ」というもの。

 

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葉っぱ模様の「タナカ」

 

タナカ (ビルマ語: သနပ်ခါး、ラテン文字表記:Thanaka) は、ミャンマーで使用されている、天然の化粧品である。

色は主に黄土色で、茶色っぽいものから、白色っぽいものまである。化粧としてだけでなく、日焼け止めとしての意味もある。原料であるタナカの木から作られる。タイでも、ミャンマー国境近くを中心に見られる。ロンジーと共に、ミャンマーのお土産としても、人気がある。

(ウィキペディア)

この「タナカ」には、次のような効果があるらしい。

・毛穴のひきしめ
・黒ずみを除去する
・太陽光線やフリーラジカルから肌を守る
・肌の老化を遅くする
・シミやシワを薄くする
・肌の透明感
・どんな肌タイプでもOK
・肌の油分を整える
・ニキビや吹き出物を治す
・日焼け止め効果
・保湿

アメージング Tanaka に夢中。

これでは、万能薬ではないか。

このタナカはミャンマー人(ビルマ族)の象徴のようなもの。
ボクが会った日本人女性の旅行者が、このタナカをしてロンジーというミャンマーの伝統衣装を着ていた。

そうするとミャンマー人の受けがすごくいいらしい。
「あなたはミャンマー人だ!」と、レストランの店員やホテルのスタッフから喜ばれるという。

 

ミャンマーのシャン州というところが、このタナカの木の産地として有名。
シャン州の市場で、このタナカの木が山のように積まれてあった。

このタナカの木が育つには時間がかかり、良質のタナカは高額で取り引きされる。
ミャンマー旅行でその額を聞いて驚いた記憶があるけど、具体的な金額は忘れてしまった。
ソーリー。

タナカの木が、良質な原料として十分なほど成熟していると認められるまでには、少なくとも35年は必要とされる。

(ウィキペディア)

 
CAはタナカをしていなかった。

 

そして、このミャンマーの「タナカ」に日本人の名前の「田中」を重ねるのはミャンマーでの鉄板ネタになっている。

ボクもこの化粧を「タナカ」と呼ぶと知ったときは驚いた。

そんなヤンゴン、街中を歩いていると、あら?と驚くことがある。一目見てわかる、「タナカさん」だらけなのだ。
タナカといえば、日本の苗字ランキング4位という不動の地位を築いているが、ヤンゴンでお目にかかれるのはその「タナカさん」ではない。

ミャンマーにあふれる「タナカさん」とは?

ミャンマーでお世話にった現地のガイドはこんなことを言う。

「あなたの名前が田中だったら、ミャンマー人はすぐに覚えますよ。残念でしたね」

残念かどうかは分からないけど、ミャンマー人にしてみたら「タナカ」という人名があることに驚くかもしれない。

 

ちなみに、ミャンマー人には名字がない。
日本人にとってはこのことにも驚くかもしれない。

日本人で名字がない人といえば天皇陛下だから。

 

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タナカの木(ウィキペディア)

 

でも最近では、タナカをする女性が減ってきているらしい。
特にミャンマー最大の都市「ヤンゴン」に住んでいる若い女性には、タナカを「ダサい」とか「古い」とか感じる人が増えているという。

日本やアメリカなどの自由貿易の国とはちがい、ミャンマーでは長い間経済的に「鎖国状態」になっていた。

ミャンマーの経済規模は、日本の福井県とほぼ同程度になります。
1962年から1988年の間に行ってきた鎖国政策により、 他のアジア諸国と比べて大きく出遅れてしまいました。

民主化で経済発展が見込まれるミャンマーの経済

この「鎖国」によって、逆に外国の影響をあまり受けることがなかった。
このことがミャンマーの伝統文化を保つことができた理由にもなる。

でも、現在のミャンマーはこんな鎖国状態ではない。
2012年の選挙によってアウンサンスーチーが率いる民主党が勝利したことは決定的だった。

 

これによって、アメリカのオバマ大統領は公式の場で「ミャンマー」と呼んだ。
これはアメリカの大統領としては初めてのこと。
それまでミャンマーという国を認めていなかったアメリカは、必ず「ビルマ」と呼んでいたから。

 

2012年11月20日のAFPの記事にそのことがある。

「ミャンマー」と「ビルマ」、オバマ大統領の選択は?

米国は普段、「ビルマ」の名称を用いているが、ヤンゴン(Yangon)で行われたテイン・セイン(Thein Sein)同国大統領との会談では、オバマ大統領が選んだのは「ミャンマー」だった。会談中、オバマ大統領は「大統領がミャンマーで始めた民主化および経済改革のプロセスは、この国に素晴らしい発展と転機をもたらすでしょう」と述べた。

 

こうして、外国企業がミャンマーになだれこむことになった。
それにしたがって、ミャンマー人の生活が変化している。

そのひとつがタナカを使用する女性が減っていることだという。

「でも、他にも理由があります」
とガイドが言う。

「外国製の良い化粧品が増えてきたから、タナカよりもそれを使う女性が多いんですよ。特に日本製の化粧品は人気です。高いですけど」

日本製品がミャンマーで愛されているということはうれしい。
けどそれが原因で、ミャンマーの「タナカ文化」がなくなっているとしたらこれは微妙というか残念な気がする。

 

ミャンマーの市場
タナカをしている人もいる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。