ねずみさん激怒!ヨーロッパでのペスト流行と「死の舞踏」。

 

以前、イギリス人の女の子2人と静岡市にある登呂遺跡に行った。

2人のうち1人は歴史が好きで、大学ではイギリスのチューダー朝について学んでいた。
もう1人は、歴史にまったく興味がない。
「好きなイギリスの時代?恐竜がいたころね。あんなに大きな生き物が歩いてるなんて、想像したらワクワクする」と言うバカ。

その時代のイギリスってなに?
恐竜なら日本にもいたわ。

 

そんなステキな2人と弥生時代の住居を見学していたときに、ねずみ返しを見つけた。
「大事な食べ物をねずみに食べられちゃたまんねえ」ということで、ねずみが倉庫に侵入できないように付けたアレ。

 

ねずみ返し(ウィキペディアから)

 

ボクがねずみ返しの説明をすると、頭のいい方がこう言う。

「ねずみか。ねずみはヨーロッパ人にとって、悪魔ような存在だったの」

するとバカな方がこう言う。

「ペストね。学校で習った」

へ~、恐竜以外のことも知ってるんだあ。
いやいや、失礼失礼。

それにしても、歴史にまったく興味がない人でも知っているこということは、ペストはイギリスやヨーロッパでは常識なんだろう。

ペスト(黒死病)とは学校でこう習う。

黒死病

14世紀後半以降、数度にわたりヨーロッパをおそった疫病。1348年からの大流行は人口の3分の1を失わせ、農業人口の激減による社会・経済をまねき、人々の死生観にも大きな影響を与えた。

「世界史用語集 (山川出版)」

太平洋戦争での犠牲者が約300万人といわれる。
当時の日本の人口(約7200万人)に対する割合は、24分の1になる。
「人口の3分の1」というと、2400万人と8倍になってしまう。

銃や爆弾を使わずにこれほどの死者を出すとは。
「Black Death(黒死病)」という英語も恐ろしい。

 

「人々の死生観にも大きな影響を与えた」の具体例は、「死の舞踏」だろう。

死の舞踏の絵画では、主に擬人化された「死」が、様々な職業に属する踊る人影の行列を、墓場まで導く風景が描かれている。行列は、皇帝、君主、教皇、修道士、若者、美少女などで構成され、すべて骸骨の姿で描かれるのが代表的な例である。

「ウィキペディア」

 

上下の絵画はウィキペディアから。
ヨーロッパでこうした「死の舞踏」の絵画が生まれた理由として、「ペストの大流行に、人びとが強い衝撃を受けたから」ということがよくいわれる。

 

 

話を登呂遺跡に戻す。

歴史好きなイギリス人の話では、この時代のヨーロッパの街のいたるところに死体が転がっていて、「死体を埋めた人が、すぐに埋められる側になる」という状態だったらしい。

興味深かったのは、ペストの流行でキリスト教(カトリック)が権威を失ってしまった、という指摘。
原因不明の恐怖におそわれた人たちが教会に救いを求めたのだけど、教会の聖職者もペストで死んでしまう。

どんなに教会で祈ってもペストは収まらないし、祈りをささげていた人びとは次々と死体に変わっていく。
「教会は無力だ」という考えがヨーロッパに広がって、人びとがキリスト教に不信感を持ったという。

歴史に興味がない方は、スマホに夢中でまったく聞いてねえ。
なあ、おまえ帰れよ。
なんで登呂遺跡に来たんだよ。

 

ペストにおそわれ、死体だらけになったヨーロッパの街(ウィキペディアから)

中世ヨーロッパにおけるペストの広がり。
ポーランドでは被害が発生しなかった。

 

海外旅行で利用する空港には、こんな検疫所がある。

この「quarantine」という英語にもペストが関係している。

1377年にヴェネツィアで海上検疫が始まった。当初30日間だったが、後に40日に変更された。イタリア語の40を表す単語からquarantine(検疫)という言葉ができた。

「ウィキペディア」

 

14世紀のペスト大流行の原因は、ねずみだったといわれている。

でも最近、財経新聞にこんな記事(2018年1月21日)があった。

14世紀ヨーロッパを襲った「黒死病」、原因はネズミでなかった可能性

 

この記事では、イタリアとノルウェーの大学がおこなった共同研究について書いてある。
研究の結果、オスロ大学の生物学教授はこう言っている。

「14世紀のペストの原因は、人間の体から体に移るノミやシラミが原因です。疫病がネズミを感染源にする場合は、14世紀のペストのような急速な流行はあり得ないからです」。

この研究は、「まさに歴史的にも大きな価値を持つ研究といえる」というものらしい。

 

 

ということは、今まで「おまえのせいだ!」と犯人扱いされていたねずみは「えん罪」だったことになる。
これにはねずみさん、全力で怒っていい。
EUに対する集団訴訟も視野に入れるべき。

 

2 件のコメント

  • 以前、渋谷ハチ公前の広場の植え込みにはネズミがうろちょろしていました。今は寒いから暖かいビル街にいるのでしょう。コラムを読んで病気を運ぶ悪い奴と思った事を反省しようと思ったのですが、運び手になりうる事には変わりないと思い直しました。時事ネタではないコラムも勉強になって楽しいですね。

  • そうですね。ネズミは駆除の対象ですからね。
    静岡県民のボクには、渋谷ハチ公のところにネズミがいたことに驚きです。
    けっこう汚いんですかね。
    また、のぞいてください。

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    今まで、東南アジア、中東、西アフリカなど27の国・地域に旅をしてきました。以前、中学生に歴史を教えていた経験もあります。 また、日本にいる外国人の友人も多いので、彼らの目から見た日本も知っています。 そうした経験をいかして、日本や世界の歴史・文化・宗教などをテーマに、「読んでタメになる」ブログを目指しています。