【日本と中国の関係】古代の生徒と先生が、近現代には逆転

 

いまの中国人は日本をどう見ているのか?

日本に興味のある外国人が集まるSNSグループで、ある中国人のこんな書き込みを発見。

 

 

大体こんな意味。

みなさん、こんにちは。
わたしは中国人で、日本が大好きです。日本はフレンドリーでモダンな国です。
1000年前、日本は中国から大きな影響を受けましたが、110年前には日本が中国に影響を与え始めて、現代の中国語には日本由来の言葉がたくさんあります。
ここで日本語を学んで、日本人の友だちと知り合いたいです。

 

短い文章だけど、中国と日本の関係をうまく表している。
奈良・平安時代の日本は遣隋使や遣唐使を派遣し、当時は世界最高レベルにあった中国文明を学ばせてそれを日本に持ち帰らせて国を発展させた。

平安京は唐の都・長安をモデルにしてつくられたし、平安という名称も長安を参考にしたものだろう。
そもそも「京都」という言葉は4世紀に生まれた中国語だ。

日本が701年に大宝律令を完成させて、法による統治(律令制度)を始めたというのは中学校の歴史でならうマスト事項。
法をつくりそれに基づいて政治をおこなった国は、唐をのぞけば古代東アジアで日本だけだったという。
くわしいことは律令制 をクリック。

日本人が仏教(というか宗教そのもの)を本格的に学んだのもこのころで、仏教・儒教・道教がミックスされて信仰されていた唐の「三教合一」の考え方は、異なる宗教を排除しないで同時に信仰にする日本の「神仏習合」に影響をあたえたはずだ。
いまの中国共産党には宗教を排除する傾向があるけど、日本人はいまでも神様と仏様を同じぐらい大事に考えている。

 

むかしの日本人は京都を洛陽(古代中国の都)と呼ぶことがあった。
いまでも京都を歩くと、ときどきこの言葉を見かける。

 

古代の中国と日本は言ってみれば先生と生徒の関係だったけど、時代が流れて19世紀後半になると立場は「逆転」する。

日本が明治維新を成功させて近代国家となると、今度が中国人が来日し、多くを学んで本国へ持ち帰るようになった。
その代表的な人物に清朝末期の外交官・黄 遵憲(こう じゅんけん:1848年 – 1905年)がいる。

 

 

日本という国を本格的に中国へ紹介したのは彼がはじめて。

清朝の改革にあたって明治維新に倣うべき点があると考え、同志の康有為や梁啓超にも影響をもたらした。

黄 遵憲

 

この時代に来日した中国人が学んだことで、現在でも残っているものに「言葉」がある。

西洋について調べたり学んでいた幕末・明治の日本人は、多くの外来語を日本語に翻訳した。
そのパイオニアが福沢諭吉で、例えばcompetition(コンペティション)という英単語を「競争」と訳したのもこのミスター1万円だ。

コンペチションと云う原語に出遭い、色々考えた末、競争と云う訳字を造り出して之に当箝め前後二十条ばかりの目録を飜訳して之を見せ

「福翁自伝 (福沢諭吉)」

*当箝めは「当てはめ」

 

福沢諭吉が「飜訳して之を見せ」たのは江戸幕府の要人だったけど、争うという言葉が穏やかではないという理由でこの訳語は嫌われた。
江戸時代には平和な世の中がつづいていたから、このころの幕府のサムライは「争」の字も見たくなかったらしい。

 

話と戻すと、明治の日本にやって来た多くの中国人が、こうした日本人による新しい言葉(和製漢語)を学んで本国へ伝えていた。

その結果、冒頭の中国人はこう言う。

「非常非常的多 ! 现代汉语里面,超过30%的词汇,都来自日本 ! 自从1890年以来,日本对中国的影响,和唐朝中国对日本的影响,是差不多的」

日本語由来の言葉はとてもたくさんあって、現代中国語では語彙の30%以上が日本からきている。
1890年以降の日本から中国への影響は、唐の時代の中国から日本への影響と似ている。

日本由来の語彙についてたずねてみたところ、「電報、電話、憲法、法律、血糖値、白血球など近代的な言葉は日本から中国に輸出された言葉」という。

ほかにもいまの中国語には、こんな日本由来の言葉がある。

文化、文明、民族、思想、経済、資本、階級、警察、分配、宗教、哲学、理性、感性、意識、主観、客観、科学、物理、化学、分子、原子、質量、固体、時間、空間、理論、文学、美術、喜劇、悲劇、社会主義、共産主義

くわしいことは和製漢語を。

ちょっと意味不明だけど、「虽然不想说出来但还是说了(言いたくないけど)」、「ntr(牛头人)ふたなり(扶她)」もそうだという。
ふたなり」はいいとして、ntrは寝取られ、牛头人はミノタウロスでいいのか?

 

古代の日本は中国から文化や政治制度などで大きな影響を受けていたけど、近現代になると、言葉を中心として中国が日本から大きな影響を受けるようになる。
古代の生徒と先生という関係が、近現代には逆転した格好だ。

はじめの中国人の意見には、他の中国人からこんなコメントが寄せられた。

・日本を好きになるのは自由ですが、この文章はそれほど正しくないと思う。
いまは経済的にお互いに影響を与えている。

・日本からきた中国語の言葉を知らない中国人はたくさんいる。

・日本にはもともと独自の文字がなく(日本原本没有自己的语言)、それをわが国に学びました。

それと予想していたけど、「いまの日本文化のルーツは中国にある」と言う中国人もいた。
でもいまの日本と中国を結びつけるものは、はやっぱり金(経済)だろう。

 

おまけ

明清時代の街並みがいまに残る鳳凰という街

 

 

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2 件のコメント

  • >ntrは寝取られ、牛头人はミノタウロスでいいのか?

    意味が分からなかったのでNETで調べてみました。すると、次のような発言が見つかりました。
    「ちなにみこれは豆知識なんだけどミノタウロスは中国語だと牛头人(牛頭人)と言って音がちょうどNiuTouRenなのでNTRを意味する。」
    どうやら、発音から牛头人→NTRのつながりがあるみたいですね。

  • ありがとうございます。
    ネットで調べたら、NTRを「寝取られ」とするサイトがあったのですが、牛头人のことかもしれませんね。
    どちらかハッキリわからないので、一応両方載せておきます。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。