中国は「世界の安全大国」だった。その理由と“犠牲”とは?

 

いま新型のコロナウイルスが猛威を振るっていて、死者は1500人、感染者は6万人を超えている中国だけど、じつはわりと安全な国というのはご存知ですか?
新型肺炎はおもに公衆衛生の問題で治安とは関係ない。

3年前の記事だけど、中国メディア・今日頭条で「世界でもっとも安全な10の国」としてこんな国があげられていた。

オーストラリア、日本、カナダ、フィンランド、スイス、中国、ニュージーランド、オーストリア、デンマーク、アイスランド

行ったことのない国がほとんどだけど、この結果にはおおむね納得。
中国を除けば。
「画竜点睛を欠く」の逆で、上のランキングは中国が入っていることで信頼性を大幅に落としている気がしてならない。

なんで中国が世界的に安全な国といえるのか?
その理由はレコードチャイナの記事(2017年9月18日)に書いてある。

夜に帰宅するときでも恐怖を感じることはなく、多くの外国人も安心だと感じていると紹介。物を無くしてもすぐに戻ってくることや、歩いていて強盗に襲われることはないので安全だとした。

世界で最も安全な10カ国に中国がランクイン=中国ネットは賛否両論

 

ちなみに日本については財布を後ろポケットに入れていても大丈夫とか、たとえ財布をなくしても警察で戻ってくるといったことが安全理由になっている。
これは在日外国人の「あるある」だ。

ただ賛否両論とあるように、これに同意する人もいれば、「北京市から武装警察を全員撤退させたらどうなるだろうね」「中国は犯罪率の低い国だが、安全な国とは言えない。トイレに行くにもだまされるかもしれないのだから」と懐疑的な見方をする人もいる。

日本人の反応を見ると、意外にも「中国は世界の安全大国説」にうなづく人が多い。
でもそれは市民の道徳性に由来するものではない。

・安全なのは確かかもな
人民を見張る公務員が多いから
・都市部だとテロやデモ警戒で街角にいる保安関係者が多いから安全といえば安全かねえ。
・決して民度からくる治安の良さじゃない事はわかる

日本人の場合はカメラ撮影で捕まるケースがあるからそれには要注意。

また日本人がスパイ容疑で逮捕!中国旅行では写真撮影やGPSに注意を。

 

これまで中国には7回ぐらい旅行したことがあるけど、ウォークマン(もはや死語)を置き忘れて盗まれたとか、こちらの不注意からトラブルが起きたことはあるけど、都市の移動や外出で不安や恐怖を感じたことは一度もない。
でも、それは上からの力によるものだ。
中国では政府や地方当局の権限が大きくて、その分市民の自由や権利は小さくなっている。

 

以前、中国旅行でこんなことがあった。
中国人ガイドと一緒に上海から高速鉄道に乗って黄山へ行って、そこのホテルで一泊したとき、ボクがチケットをゴミ箱に捨てると、「ちょっと待ってください」とガイドがそれを拾いだした。
台湾ではレシートに番号があって宝くじのようになっていたから、中国の乗車チケットにもそんなシステムがあるのかな?と思ったボクの脳みそは春のお花畑。

そのチケットはガイドが事前に購入したものだけど、そのさいは彼のIDカード(中華人民共和国居民身分証)の情報が必要だった。
日本の新幹線じゃ考えられないけど、中国では、いつ誰がどの席に乗ってどこへ移動したのかが当局に把握されているのだ。
チケットには個人情報があるから、それを悪用されないために、彼はボクが捨てたチケットを細かく破っていた。

「本当は燃やすのが一番安全なんですけね」と言うガイドのセリフは、もはやスパイ映画のそれ。
おまえはゴルゴ13か。

 

新型肺炎の拡大がつづくいまの中国がその“らしさ”をみせた。

朝日新聞の記事(2020年2月15日)

中国、ビッグデータが感染者追う 「まるで指名手配犯」

これ以上事態を深刻化させないために、地方政府がビッグデータや最先端技術を積極的に活用している。
というのはいいのだけど、そのために市民のプライバシーが犠牲にされることに懸念の声が上がっているという。

たとえば中国各地の地方政府のホームページでは、「この便に乗っていた人を至急探しています!」と個人が特定できるような情報がずらりとならんでいて、だれでも見られるようになっている。

情報は具体的で、感染者が乗った高速鉄道や飛行機、バスなどの便名や運行日時、車両番号などが掲載されている。

 

ふだんから国民の動線が政府にばっちり把握されているから、非常時にはすぐにこんなことができてしまう。
プライバシーや個人の自由も大事だけど、それを守ると同時に感染拡大を防ぐ夢のような手段があったら、ぜひ中国政府におしえてあげてください。
現時点ではこれもしかたがない。

こんなふうに政府が個人の情報を収集しているし、他にも街には常に無数の監視カメラが市民の行動を記録している。
こんな息苦しい社会は嫌だけど、これが「世界で最も安全な10カ国」に中国がランクインされる理由にもなっている。
安全にはそれなりの理由があるわけで、お金をかけるか時間をかけて国民を教育するしかない。

 

中国の黄山

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。