新型コロナウイルスの感染拡大が進み、熱心なイスラーム教徒の多いイランで政府が「金曜日の礼拝はやめてね」とお願いしたところ、「コロナを撃退するにはみんなで祈るのが最善の方法だ」と宗教指導者が信者によびかけたことで、いつも以上に信者が殺到して感染がさらに広がってしまった。
そんなことを前回に書いた。
今回は、この記事を書いているときに思いついた歴史の雑学を書いていこうと思う。
無謀な信仰は現実に返り討ちにされてしまう、という中国の話。
およそ120年前、日清戦争で負けた中国は、ハゲタカのようなヨーロッパ列強に「租借地」という形で領土を奪われてしまう。
欧米列強に踏み荒らされる20世紀はじめの中国
当時の中国には憲法の使い手が集まる「義和拳」という武術集団がいて、キリスト教勢力と争い、教会を襲うこともあった。
義和拳は一種の宗教団体でもあり、齊天大聖(孫悟空)や三国志の趙雲などを神格化、崇拝していた彼らは何やらアヤシイ儀式をおこなっていた
そして呪術によって不死身となった肉体には刃物が効かないし、銃弾も跳ね返すと信じていた。
義和団事件
彼らは日本の空手(からて)のような拳術を習い、呪文(じゅもん)を唱えると神通力を得て刀や鉄砲にも傷つかないと信じていた。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
義和団の兵士
のちに「義和団」へと名前を変えた彼らは「扶清滅洋」(ふしんめつよう:清を扶〔たす〕けて西洋を滅ぼす)というスローガンを叫んで、中国国内にいた日本や西洋列強に宣戦布告する。
でもイギリス、アメリカ、ロシア、フランス、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、イタリア、それと日本からなる「八カ国連合軍」に勝てる勢力が当時の世界に存在するわけない。
義和団は蹴散らされて、彼らを支援していた西太后は北京から逃げ出した。
「呪術によって、この肉体には刃物や銃弾も通じない!」なんて信仰(迷信)は、言ってみれば“中二病”。
妄想で現実を打ち負かすことはできない。
八カ国連合軍に北京を占領されて「敗戦国」となった中国は、一切の拒否権を認められない形で日本や欧米と屈辱的な北京議定書を結ばされた。
公使館周辺区域の警察権を列国に引き渡したり、海岸から北京までの諸拠点に列国の駐兵権を認めるといったものは、清朝領域内でその国権が否定され、列国が統治する地域が生ずるものに他ならなかった。
このほかにとんでもない額の賠償金を支払わされて、国力と威信は大きく低下する。
「西洋を追い出せ!」と義和団事件を起こした結果、中国は欧米列強の半植民地となってしまった。
信仰と現実的な認識は両立させないと、手痛い一撃をかまされる。
それは120年前の中国もいまのイランも同じ。
天津でのたたかい
おまけ
明清時代の街並みが残る街・鳳凰
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>信仰と現実的な認識は両立させないと、手痛い一撃をかまされる。
うーん、て言うか、「現実に対する認識と両立しないような信仰」はもはや宗教ではなく、単なる「迷信」ですよね。宗教指導者が迷信を煽っちゃだめでしょ。そういうことやっていれば、そのうち、その宗教自体が滅びます。
その一方で、民族の敵と戦うためには、信仰がとても重要となる場合だってあります。
多民族を弾圧・虐殺するのに、残念ながら、信仰がその動機付けとなっている場合もあるし。
それがいわゆる過激派の人たちで、他の大多数からみたら迷惑でしかないでしょうね。