イランの悲劇：コロナは悪霊！神に祈って撃退だ→感染激増

新型コロナウイルスの感染と同時に、いま日本ではデマも広がっている。

ネットでは「これなら新型肺炎を予防できる！」というウソ商品の広告が出回っていて、消費者庁が注意を呼び掛けた。
健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品などなど、こうした詐欺商品は本当に多種多様あって、人の弱みをチャンスにかえる商魂にはあきれますわ。
でも不安を金に換える人間はいつでもいるから、騙されない力を身につけることも大事。

くわしい情報は消費者庁のホームページを確認されたし。

消費者庁ホームページのキャプチャー

日本では悪徳商人がデタラメなことを言って、新型コロナとは別のウイルスをばらまいているけど、イランでは宗教指導者がいらんことを言ったことから社会が大混乱におちいった。

３月13日朝の時点で、イランでの新型コロナウイルスの感染者は１万人を超え（死亡者1075人）、世界で４番目となっている。
イランについて特に衝撃的だったのが、最高指導者ハメネイ師の側近だったミルモハマディ氏が感染して亡くなったこと。
日本でいえば官房長官が感染死したような事態か？
個人的には、カナダのトルドー首相夫人が感染したことのほうがビックリだけど。

今回イランで爆発的に感染が広がった原因に「信仰」がある。
でもこれは一部の過激な人たちのものだから、迷信や妄信とよんだほうが正確だ。

イランにはゴム市というイスラーム教シーア派の聖地があって、ここにはたくさんのムスリムが巡礼で訪れる。
くわしく知りたい人はここをクリック。

8世紀初頭頃、メルヴに滞在中の兄イマーム・レザーを訪ねてイランを旅行していたファーティマがこの町で客死したといい、彼女の墓を中心とした巡礼地が誕生して宗教都市となった。

ゴム

ゴムにあるモスク（イスラーム教の礼拝所）

信仰心のあつい信者はここに来ると、モスクでひざまずいてアッラーに深い祈りをささげる。だけならまだよかったのだけど、巡礼者はモスクの柱や壁に唇をつけるのだ。
これがのちに飛沫感染を招いたとみられる。

「集団と閉鎖空間」は新型コロナウイルスの大好物だから、イラン政府は国民に金曜日の礼拝を中止するよう指示した。
でもイスラーム教の宗教指導者たちはこれに反発。
「新型コロナの感染症は悪霊に違いない。撃退するにはみんなで祈るのが最善の方法だ」と信者によびかけやがりました。

その結果どうなったかは、国際政治経済学者・浜田和幸氏が書いている。
日刊ゲンダイDIGITALの記事（2020年3月6日）

そのため参加者が減るどころか、通常より多くの信者がモスクに殺到。信仰心のあつさを証明するため、モスクのあちこちに抱きつき、唇を接する行為を繰り返している。

イランは政府要人も次々コロナ感染 服役囚5万4000人釈放の異常事態

現地テレビはこうした信者の様子を映して、「こうして舐めることで他の巡礼者が安心してモスクに来られるようにしている」と言ったらしい。
信仰心のあつさを思うぞんぶん証明したことで、この直後、コム市で感染者が激増。
ウイルスを「持ち帰った」巡礼者も多く、影響は全国へ広がったという。

これに日本のネットの反応は？

・コントみたいだ
・＞モスクのあちこちに抱きつき、唇を接する行為を繰り返している
あのさぁ
・ペルシャ帝国だった頃の方がずっとよかったね
・日本の満員電車も同じだろ
・これで感染してたら祈りが届いていないことになりますね！
・まあ、すべては神の思し召しだしな。

もちろんこんな迷信による暴走は一部信者の所業で、一般のイスラーム教徒はこんなバカなことはしない。
それにこれがイランの日常でもない。

新型コロナの感染は悪霊のしわざではないし、「祈りの力で撃退する！」なんて無理にきまってる。
でも、宗教を絶対視する原理主義の人たちにはそんな常識が通じない。
新型コロナには日本も苦められているけど、国民のほとんどが無宗教という国ではこういう“人災”がないのはさいわいだ。

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