日本と韓国の歴史観の違い①ベルリンオリンピックの孫基禎の銅像

 

ソウルを旅行したときにこんなバス停を見た。

 

 

「韓日強制併合」の「日」はもちろん日本のこと。
これは何のことか分かりますか?

1910年に日本と韓国で何か起きたか?
「韓日強制併合」とは、日本でいう「日韓併合」のこと。

日韓併合

日露戦争を経て、朝鮮統治を進めた日本は1905年、当時の大韓帝国を「保護国」とする日韓保護条約を締結。10年に日韓併合条約を結び、植民地支配を完成させた。

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

韓国側では、不法に結ばされたという不満があるから「韓日強制併合」という表現をしている。

 

では、この時代の国際社会はこれをどう考えていたのか?
「合法で問題なし」として、日韓併合を認めている。

このことは、満州国のときの国際社会の反応と比べたらよく分かる。

日本が満洲国を保護国化しようとしたときには、世界で多くの国が異議を唱えた。
国際連盟は、満州にリットン調査団をおくって調査させていた。

日韓併合のときには、こんな動きは一切ない。
つまりこのとき国際社会は、「日韓併合は合法で問題はない」と認識していたということになる。

 

 

今回の記事は、そんな日韓の歴史認識にかんする話。

最近、韓国の各マスコミがいっせいに伝えたニュースがある。

韓国の国民の関心を大いに集めたそのニュースは、パククネ大統領のことではなくて孫基禎(ソン-ギジョン・そん-きてい)という韓国の英雄のこと。

じつはこの人は日本と深い関係がある。

 

 

孫基禎(ソン-ギジョン・そん-きてい)は日本統治時代の1912年に生まれ、1936年のベルリン五輪では日本選手として出場し金メダルを獲得した。
戦後の韓国では国民的英雄で、1988年のソウル五輪で聖火ランナーをつとめた。

現在でもそうだけど、オリンピックで金メダルを取ったとなれば韓国で英雄になる。

でも孫選手は、1936年のベルリンオリンピックに「日本代表」として出場していた。

このとき朝鮮半島は日本の支配下(1910年に日韓併合)にあって、韓国という国は存在していなかった。
だから、彼は「日本人」として、ベルリンオリンピックに出場することになった。

 

ただ、自分は朝鮮人だと考えていた孫基禎にとっては、「日本代表」ということには不満があり、ベルリン滞在時には外国人へのサインに「KOREA」と記していた。

孫選手としては、「朝鮮(韓国)代表」としてオリンピックに出て金メダルを取りたかったことだろう。

現在の韓国人も、「彼の国籍が韓国だったら良かったのに」と強く願っている。

 

でも、IOC(国際オリンピック委員会)の公式記録では、孫基禎はあくまでも日本国籍の金メダリストということになっている。

孫の金メダリストとしてのIOC公式記録によると国籍は日本となっている。朝鮮南北双方が自国籍と表記するように要請をそれぞれしているが変更はない。

(ウィキペディア)

そういえば、孫選手は韓国の選手だろうか?
それとも、北朝鮮の選手なんだろうか?

そのことで、韓国と北朝鮮の認識は一致しているのかな?

 

韓国人としては、「孫を韓国国籍の金メダリストにしたい」という願いを持っているけど、彼が日本代表としてベルリンオリンピックに出たという歴史の事実を変えることはできない。

日本人ならここであきらめるだろう。
願いがあっても、歴史を変えることはできないのだから。

韓国人はそこが違う。
過去の史実を変えることはできなくても、現在の韓国人の考え方や価値観に合わせて新しい歴史をつくり出してしまう。

 

孫基禎の場合、彼の国籍が日本だということが気に入らない。
だから、IOCに韓国籍への変更を願い出たけど、IOCからは拒否された。

さらに、韓国はベルリンに立っている孫基禎の像にある「日の丸」が気に入らない。
これでは、孫が「日本代表」になってしまう(実際にはそうだけど)。

 

そのため、現在の韓国人の価値観に合うように、これを無理やり「韓国代表」に変えてしまった国会議員がいた。

1970年には当時韓国の国会議員であった朴永禄(パク・ヨンロク)が夜間にベルリン五輪記念スタジアムに不法侵入し夜間零時過ぎから約5時間かけて、記念碑に刻まれた孫の国籍「Japan」を金槌と鑿で削り、「Korea」と彫り込む公共財産破壊容疑事件を起こし、逮捕状が出るやいなや、韓国へ逃亡するという刑事事件を起こしている。

(ウィキペディア)

これは、もう無理やりというレベルではない。
国会議員が歴史を変えようと、外国で犯罪行為までしたのだからこれはとんでもないことだ。

日本の国会議員だったら、考えられない。

 

さすがに、韓国でもこれ以来はこんな行為はしていない。
でも、「孫選手が韓国代表であってほしい」という願いは持ち続けていた。

そこで、新しい試みを考え出す。
日の丸ではなくて、韓国の国旗である「太極旗」をつけた孫基禎の像をつくって、それをベルリンに建てようと考えた。

像は2006年にできていて、今回ようやくその像がベルリンに立てられることになった。
韓国の国旗を胸にした金メダリストの像が外国で立てられるということは、韓国人にとっては民族的な自尊を満たして、とても気持ちが良い。

 

そういうことで、韓国のマスコミがこのニュースをいっせいに伝えることになる。

下の記事は、そのことを伝える中央日報の記事。

ルリン五輪マラソン金メダリスト孫基禎の銅像、胸には日の丸ではなく太極旗

1936年ドイツ・ベルリン・オリンピック(五輪)でマラソン決勝ラインを1位で通過する姿が彫られた孫基禎(ソン・キジョン)選手の銅像が現地に設置された。胸には日の丸(日章旗)ではなく太極旗が彫られている。

「胸には日の丸ではなく太極旗」という言葉から、誇らしい気持ちや喜びがにじみ出ている。

韓国人にとっては、感無量だろう。

韓国人にとってはね。
でも、韓国人の国民感情をもっていない外国人はどう思っていたのか?

ドイツ人はどう思ってたのか?
日本人はどう思ったのか?

そのことを次回に、書いていきます。

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。