ユダヤ・キリスト・イスラム教は同じ源「アブラハムの宗教」

 

このまえ優雅にSNSを見てたら、イスラム教徒のインドネシア人がした投稿に友人が「Ya Allah」というメッセージを送っていた。
これがイスラム教の神「Allah」というのは想像がつくけど、全体の意味が分からない。
気になって機械翻訳したら「オーマイガー」と出てきた。
なるほど。
イスラム教徒だと「なんということ!」が、「オーマイアッラー!」てな言い方になるのか。
でもこれは「おむすび・おにぎり」みたいに呼び方が違うだけで、どっちも本質はまったく同じだったりする。

 

一神教のキリスト教・イスラム教・ユダヤ教はそれぞれ、ゴッド・アッラー・ヤハウェ(YHWH)を神として崇拝する、まったくの別の宗教だ。
と、そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

でも昔、中国旅行で出会ったイスラム教徒のモロッコ人と話しているときに、「え、オマエ知らないの?」という言葉とともにそんな認識がぶち壊された。
そのモロッコ人いわく、ユダヤ・キリスト・イスラム教はそれぞれまったく別の場所を流れる、太さや水量も違う「川」。
でも源流は同じだから、その流れをず~っとたどっていくと、この三つの宗教は「アブラハムの宗教」というひとつの水源に行きつく。
ユダヤ、キリスト、イスラム教にはすべて、聖書の預言者アブラハムの神を受け継ぐ宗教という共通点がある。

つまりこの三教は呼び方が違うだけで、信じる神はまったく同じだった。
おむすびと呼ぼうがおにぎりと呼ぼうが、その実態はまったく同じであるように。
違うのはその神の言葉を人々に伝えた預言者で、ユダヤ教ではモーゼ、キリスト教ではイエス、そしてイスラム教ではムハンマドになっている。
この預言者は尊敬に値する人だけど、アッラーの前ではムハンマドも他の信者と同じく、イスラム教徒の一人にすぎない。

このモロッコ人の話では、モーゼもイエスも神に選ばれた尊い存在で(ただしムハンマド以下)、イスラム教はユダヤ・キリスト教の聖書の内容を基本的には認めている。

そして彼的にはここが超重要なポイントで、最後の預言者であるムハンマドが神の言葉を伝えて成立したイスラム教こそがこの3つの中で一番正しい。
ユダヤ教とキリスト教の情報は、いわばアップデートされる前のもの。
間違った考え方がいくつもあるから、本当は彼らはイスラム教を選ぶという正しい選択をしないといけない。
そんな話を身振り手振りを交えて、「ツバ飛ばすな」とこっちが閉口するほど熱心に説明してくれた。

これ以上のことはここを見てほしい。

これら三宗教は、「砂漠の一神教」、「聖書宗教」、「啓典宗教」など多くの「総称」を持ち、「アブラハムの宗教」もそのひとつである。

アブラハムの宗教

 

ただ同じ母親から生まれた子どもでも、その後の成長過程で個性や人格を身につけていくワケだから、仲の悪い兄弟は果てしなく悪い。
お互い目を合わさない、口をきかない、下手したら殴り合うという不幸な兄弟はどこの国にもいる。

キリスト・イスラム・ユダヤ教という三つの「川」も、1000年以上の歴史の中でまったく別の場所を流れる川になったから、いまさら交わることはむずかしい。
というかムリ。
大ざっぱにみて現在はキリスト教とユダヤ教はわりと仲良しだけど、イスラム教はこの二つの宗教といがみ合っていることがよくある。

まえにドイツ人とネットで、メッセージのやり取りをしていたときに宗教の話が出てきた。
ドイツにいるイスラム教徒の中にはキリスト教やユダヤ教に敵対心や憎悪を持って、宗教施設に落書きをしたり信者を襲うような事件が起きているという。
特にユダヤ教徒がターゲットになることが多い。
それで彼は、一神教の人たちがSNSで言い争いをしているのを見ると悲しくなると言う。

I see monotheistic people fight each other on social media and it makes me sad.

こういう異なる宗教を攻撃することをヴァンダレイ・シウ、じゃなくてヴァンダリズムという。
これは有名な英語だから、知らなかったら知っとこう。

ヨーロッパの恐怖の記憶:文明破壊のヴァンダリズムとは?

 

そんなふうに嘆く彼に、これまでの一神教の常識を覆す世界初となる建物がドイツに登場することを伝えてみた。

ニューズウィーク誌の記事(2021年6月7日)

ドイツで3つの宗教の合同礼拝所が着工、平和と対話を促す施設目指す

通常ならまったく別の建物で礼拝をしているユダヤ・キリスト・イスラム教の三教が、ひとつ屋根の下に集まった合同礼拝所「ハウス・オブ・ワン」の起工式がことし5月、ドイツのベルリンでおこなわれた。
この「一つの家」にはユダヤ教のシナゴーグ、キリスト教の教会、そしてイスラム教のモスクがつくられ、中央の共有スペースでは、それぞれの信者や一般の人が知りたい宗教について自由に学ぶことができるという。

この話を知らなかった彼は、「それは素晴らしいアイデアだ。その三つの宗教は預言者が違うだけで信じる神はまったく同じだし、価値観も基本的には似ている。互いに理解を深めて、敵対しないことはきっとできるはずだよ。いままではその機会がなかったんだ」とうれしそう。

「ハウス・オブ・ワン」は一種の先祖返りで、あのシンボルマークのように「アブラハムの宗教」に近づく試みと言える。
ただこういう発想が出てくるというのは、それとまったく違う現実があるからで、これが成功するかはまったくの未知数。
でも世界初の出来事として多くのメディアが取り上げていたから、三教の融和を願う人が多いのは間違いない。
ま、日本はその理想をとっくに実現してますけどね!

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。