ヨーロッパの恐怖の記憶:文明破壊のヴァンダリズムとは?

 

このまえ知人のアメリカ人が日本の神社で起きているこんなニュースをシェアしていた。

海外メディア「nextshark」の記事(2019/11/22)

Prayer Boards in Japan’s Shrines are Being Vndalized With ‘One China’

いま香港で、中国や香港政府に対する激しいデモが活動がおこなわれている。
それが日本へも飛び火して、デモを支持する内容が書かれた神社の絵馬には、それを否定するような落書きがされていた。
そんな絵馬がいくつもあって、いま日本人がウンザリしている。

 

 

親中と反中国のそれぞれに主張があるのはわかるけど、その対立を日本に持ち込むのはヤメテクレ。
奈良、大阪、香川の神社にこんな絵馬があったというから、全国的に広がっているらしい。

香港の話はこれで終わりとして、ボクが注目したのは「Vndalized」という表現。
絵馬に落書きする行為を外国人はこう呼ぶのか。
これは「vandalism」(ヴァンダリズム)という名詞が動詞になったも言葉で、辞書(研究社 新英和中辞典)にvandalismの意味がこう書いてある。

「芸術[文化,建物,公共物など]の故意の破壊(行為); 暴力行為」

「acts of vandalism」だと野蛮行為になる。
他人の物を傷つけたり壊したりすることがヴァンダリズムだから、絵馬への落書きもこれに該当する。
日本の法律でいうと器物損壊罪になるけど、ヴァンダリズムという言葉には単に物を壊すということだけでなく、もっと深い世界史的な意味が込められているのだ。
それをこれからみていこう。

 

ヴァンダリズムの一例

 

中学校の歴史の授業で、ヨーロッパの民族移動(民族移動時代)についてならったと思う。
300年から700年代にかけて人類が大移動した時代のことで、これによって古代が終わってヨーロッパの中世が始まったといわれる。

このときの民族のひとつではじめはローマ帝国の外にいて、その後ローマを荒らしまわって去っていったヴァンダル人という民族がいた。
高校世界史では必ずならう重要事項だ。

ヴァンダル人

5世紀初めにローマ帝国領内に侵入後、略奪をおこないながらイベリア半島に入り、その後ガイセリック王の下で北アフリカに王国を建てた。

「世界史用語集 (山川出版社)」

5世紀の民族大移動。青線がヴァンダル人の移動ルート

ヴァンダル人に破壊・略奪されるローマ(455年)

 

ヨーロッパ文明の中心地・ローマがヴァンダル人という「野蛮人」に破壊されつくされた。
このときの記憶はヨーロッパ人に深く刻まれて、恐怖の歴史となって語り継がれることとなる。

ルネサンスから啓蒙主義の時代にかけてローマは理想化されたが、そのローマを破壊したヴァンダル族やゴート族は文明に対する破壊者として負のイメージを持たされるようになった。

ヴァンダリズム

 

18世紀にフランス革命が起きたとき、混乱から宗教芸術や建築物が破壊されるのを見て、フランスの司祭がヴァンダル人の野蛮な破壊活動にたとえて「ヴァンダリズム」という言葉を使った。
これがヨーロッパに広がって、特に文化や芸術を破壊する蛮行を「vandalism」と呼ぶようになる。
その後、海を越えて世界中へ伝わっていき、いまでは「ヴァンダリズム」という日本語になった。
神社の絵馬へ落書きするというヴァンダリズム行為には、こんな世界史が秘められていた。

ちなみに、スペインのアンダルシアの語源もこれと同じ。
ここはもともと「Vandalusia」と表記されていた。

 

これもヴァンダリズム

 

 

こちらの記事もいかがですか?

ヨーロッパ 目次

旅行・歴史雑学:ヨーロッパ主要国が誕生した時代ときっかけ。

歴史の違い。日本にあって韓国や中国にないもの。幕府と天皇!

「日本」カテゴリー目次 ⑤ 韓国や中国から知る日本

 

2 件のコメント

  • よく分からんが、他人の奉納した絵馬に落書きするのではなく、自分で絵馬代をお支払いして、自分の願いを書いた絵馬を奉納すればいいんでないの?
    他人の絵馬に便乗したって、願いは叶えてくれないと思いますが。ま、そんなことも理解できないなら野蛮人と言われてもしょうがないですね。

  • 自分でお金を払って絵馬に書きこむと、ルールを守って主張するのなら問題ありません。
    でもこういうことをする人間は嫌がらせの意味で、上から書いて否定したいのでしょう。
    蛮行ですよ。

  • コメントを残す

    ABOUTこの記事をかいた人

    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。