【震えろ】犯罪抑止の見せしめ 日本の獄門・英国のギベット 

 

1879年の1月4日、1000年ほど続いた野蛮が日本から無くなった。
死罪となった者が首をはねられて、見せしめとしてその首を公開する(さらす)刑罰が「獄門」。
平安時代からあったこの刑罰は近代国家にはふさわしくないということで、明治政府が明治12年1月4日に正式に廃止した。

平安時代の京都には、西と東に罪人をぶち込む「右獄」と「左獄」があって、処刑された罪人の首はこの門でさらされたことから、「獄門」(=さらし首)という言葉ができたという。
ちなみに「打ち首」とは首を切断することで、「獄門」はその首を見せ物にすることで、そのコンボが「打ち首獄門」になる。
まあこの2つはセットだ。
その直前に「市中引き回し」をして、罪人に辱しめをあたえることも多い。
獄門は刑罰としては最大級のもので、江戸時代にこれに相当する犯罪は、強盗殺人、自分の主人の親類や地主・家主を殺害すること、偽の秤(はかり)や枡(ます)の製造などがあった。
米や酒なんかを誤魔化して利益を上げようと、ニセの秤や枡を作ったのだろうけど、これで処刑&さらし首というのは、いまの日本の感覚だと厳しぎ。
でも江戸時代には、こういうズルは絶対に許されなかったということだ。

こんな刑罰があったら、外国人を日本の法で裁く領事裁判権の撤廃に欧米列強は応じなかっただろうし、その意味でも獄門の廃止は明治日本には必要だった。
もちろんこの時期の西洋にも打ち首(処刑)はあって、20世紀になっても、フランス支配に抵抗したベトナム人がギロチンで首を切断されている。

 

庶民が誰でも見られる場所に、目を閉じた生首を置いておくのは、日本人がそれを見て楽しむドS民族だからではなくて、「一線を越えた者はこうなるからな」と警告するためだ。
犯罪抑止のために、罪人を見せ物にする発想はイギリスにもあった。

大学入試でも必要ないだろうけど、英語には「gibbet」(ギベット)という言葉がある。
名詞だと「絞首刑のためのさらし台」、「罪人を見せ物にするために吊るす器具」といった意味で、動詞なら「絞首刑にする」、「(絞首刑の後に遺体を)さらす」といったダークな意味がある。
そこから、(公開の場で人を)侮辱する、評判をおとしめるという意味にもなる。

その由来となったギベットがこれだ。

 

処刑された後の遺体、または罪人を生きたままこんな鉄製の檻(おり)に入れて、ギベットに吊るしてさらす。

 

18世紀に夫を殺害した女性に使用された檻

 

17世紀の有名な海賊・キャプテンキッドもギベットに吊るされた。

 

画像:Fradeve11
イタリアにあるギベットと鉄の檻

 

ギベットについて英語版ウィキペディアにはこんな説明がある。(Gibbeting

In some cases, the bodies would be left until their clothes rotted or even until the bodies were almost completely decomposed, after which the bones would be scattered.

衣服が腐るまで、あるいは遺体がほぼ完全に腐るまで放置され、その後、骨が散乱することもあった。

So that the public display might be prolonged, bodies were sometimes coated in tar or bound in chains. Sometimes, body-shaped iron cages were used to contain the decomposing corpses.

公開(見せしめの期間)を長引かせるために、遺体にタールを塗ったり、鎖で縛ったりすることもあった。また、腐敗した死体を入れるために、胴体の形をした鉄の檻(おり)が使われることもあった。

殺人者、海賊、羊泥棒にこの刑罰がよく使われたという。
同じ見せしめが目的の獄門の場合、生首をさらす期間は3日間で、腐って骨になるまで街中に公開されてはいない。
死体にタールを塗ったり鎖で縛ったりする残酷さは、おそらく江戸時代の日本人にとっても異次元のレベルで、ドン引きは避けられない。

生きたままギベットに吊るされたら、そのまま放置され、餓死や何らかの理由で死んでいくことになる。
これは交差点など人目につくところに設置されたから、往来する市民はその罪人が弱っていき死亡するようすを目にしたはずだ。
ただその光景や死体の強烈な腐敗臭は不快で、公衆衛生的にもよくなかったらしい。
このニオイが風にのって、家の中へ入り込むのを想像すると吐き気しかない。

日本人よ、これが紳士の国の見せしめだ。どや。

 

精巧な作りもの…。だよね、あれ?

 

バミューダ諸島には、罪人を首吊りにしていたギベット島がある。
「魔女」もこの島に送られて焼かれたしい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。