知らずに書類送検される日本人… 外国人が刃物に注意するワケ

 

日本に半年ほど住んでいたことがあって、いまはブレーメンにいる知人のドイツ人(30代・男性)がことしの4月に旅行で日本へやって来ることになった。
その1か月ほど前、彼と話をしていると、東京・大阪・京都などにはもう行ったから、今回は日本でソロキャンプに挑戦したいということで、おススメの場所を聞かれる。
なので、4月ならまだ富士山に雪が残っているだろうし、周辺にはキャンプ場がたくさんあって競争が激しいからそのへんを推しといた。

彼はたまにキャンプをするから、テントやランタン、寝袋はなんかはすでに持っていて準備は万端だ。
治安の良い日本なら、一人で一晩を過ごしてもきっと問題ない。
でもたったひとつ、彼にとって残念なのはお気に入りのナイフを持って行けないこと。
それは刃渡り8センチほどの折り畳み式ナイフで、これがあればピクニックで、パン、ソーセージ、チーズ、野菜のサンドウィッチを作って食べることができる。
果物の皮をむくこともできるし、いろんな用途で使えるから、アウトドア活動の頼れる相棒だった。
キャンプでこのナイフを持って行けないことは、彼にとってはわりとイタイらしい。

なるほど。
でも待ってほしい。
たしかに日本の法律(銃刀法)では、刃渡り6センチ以上のナイフや包丁などは、仕事や正当な理由がなければ所持を禁止しているが、キャンプや登山などが目的だったら話は別だ。
そういう時は、6センチを超える刃物でも持って行っていいことになっている。
問題はその後で、アウトドア活動が終わって家にしまうのを忘れるとアウト。
いまそんな日本人がとても多いのだ。

読売新聞(2022/08/17)

都内の銃刀法違反、8割はキャンプ・釣り後の「置き忘れ」…警視庁「刃物は自宅に保管を」

2021年に東京で銃刀法違反の容疑で摘発された1041人のうち、863人はキャンプや釣りなどに出かけて、そのとき使った刃物を車やバッグの中に”入れっぱ”にしていたことが理由だった。
たとえば警察官が、(おそらく路上に車を停めていた)男性に職務質問をして車内を調べたところ、刃渡り7センチの折りたたみナイフが見つかった。
こうなると「あっ、3週間前にキャンプで使ったやつだ。本当にすみません」と謝ってもダメで、その男性は銃刀法違反の容疑で書類送検された。
摘発されたほとんどの人が、刃物を放置すると銃刀法違反になることを知らなかったという。
そういう人が本当に多くて困るから、警視庁は「外出先から帰ったら刃物は自宅に保管を」と呼びかける。
都民だけじゃなくて、全国の日本人も同じような認識をしているだろう。

ちなみに書類送検をされても、前科はつかないから安心してほしい。
でも、捜査対象になった人間という記録、つまり前歴はついてしまう。
これで具体的に、その後の人生にどんな影響があるかは知らないけど、幸せになる要素は皆無だ。

 

キャンプが目的なら、刃渡り6センチ超えのナイフを所持していてもいいから、もしもの時はそう言ったらどうか? と提案すると彼はこう言う。

「警察官に調べられて、それを証明するのはむずかしいよ~。キャンプが終わった後も、ナイフを荷物に入れておかないといけないから、それで東京や大阪の街を歩くのはあぶない。見つかったらきっと捕まる」

外国人向けに日本の情報を提供するサイト「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」でもそんな注意喚起がある。
海外には護身用やいろんな作業に便利だからという理由で、ポケットナイフを持ち歩く人がわりといるらしい。(22 March 2016)

Some people might carry a pocket knife for self-defense or simply for the sake of convenience for all kinds of tasks in their own country.

What You Should and Shouldn’t Carry with You While in Japan

 

その点、日本は治安が良いし、ナイフを必要とする食文化でもないから、一般人が刃物を持ち歩く理由はフツウはない。
ピクニックのときにナイフでリンゴの皮をむくのは西洋式で、日本人なら事前にかわいくウサギの形に切っておく。
ナイフ所持のきまりがユルイ国の人が日本へ来て、母国と同じ感覚で行動するのはかなり危険だから、たしかに注意しないといけない。
車の中に7センチのナイフがあると捕まるという日本の基準は、海外に比べるとかなり厳しいのでは?

 

「カタナ」という言葉が海外でも有名なように日本の刃物は質が高いから、知人のドイツ人も日本で、6センチ以下の伝統的なデザインの刃物を買おうと思ったけど、結局それもやめた。
というのはユーチューブ動画を見ていると、

「日本の警察は外国人に差別的だから気をつけろ! 街を歩いているだけで、『コイツは犯罪者に違いない』ってことを前提に職務質問をしてくるんだ」

と警告する外国人がたまにいるから。
もともとユーチューブにある動画は視聴者の注目を集めるために事実を誇張したり、「マジかっ」と思わせるだけの刺激的でいい加減な情報が多いから、配信者の言うことをそのまま信じるほど彼はバカじゃない。
でもそういう動画をよく見るから、その一歩手前にはいる。

日本にいた半年間、彼は職質を受けたことなかったけど、街を歩いていたり自転車に乗っていただけで、警察官に呼び止められた外国人はまわりに何人もいた。
それと日本の警察は日本人には甘くて外国人に厳しいから、日本人ともめると外国人が不利になるという話も聞いたことがある。
そんなことで警察に対する警戒心もあって、6センチ以下のナイフでも捕まるかもしれないという恐れから、彼は日本でのナイフ購入もあきらめた。
このへんの日本警察のイメージはかなりアヤシイけど、そんな理由から刃物を買わない外国人が多いと、日本の生産業者にとっては痛手になる。

ドイツ人は空気なんて吸って吐くだけで読むことはないのに、刃物に関しては超敏感肌になっているのはやっぱり警察沙汰になるのがコワいせいか。
日本人でさえ、「そんなの知らなかった…」と書類送検されるのだから、刃物を持ち歩くことが日常の一部になっている外国人なら、日本での要注意事項になるのも仕方ない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。