日本人の信仰心 スリランカ人はあきれ、インド人は感心した

 

きょう12月8日は、日本国民のどのぐらいが知ってるか謎だけど、とにかく「成道会」(じょうどうえ)の日だ。
仏教では、シャカがこの日に悟りを開いたとされているから、お寺ではこれを記念して、毎年「成道会」の行事が行なわれている。

言ってみれば仏教が生まれた日だから、全世界の仏教徒にとって特別重要な日。
熱心な仏教徒の多いスリランカでは、この日を「ウェーサーカ祭」として祝っている。
日本に住んでいる知人のスリランカ人に言わせると、これは仏教徒なら知ってて当然の常識だ。にもかかわらず、日本では仏教徒を自称する人でも、シャカが悟りを開いた日を知らないと言う人がよくいることに、彼は衝撃を受け、とても驚いていた。

ちなみに、ボクも近年まで「成道会」なんて儀式を知らなかった。
日本人にとって12月8日は、1941年に真珠湾攻撃がおきて太平洋戦争がはじまった「開戦記念日」のイメージが強い。
それにこの時期になると、街を歩けばクリスマスのイルミネーションを見るし、スーパーへ買い物に行けば、サンタクロースの絵やクリスマスツリーの飾りを見かける。
日本中がクリスマスムードに包まれているから、仏教の存在感は薄いを超えて、ハッキリ言って“無い”。

 

知人のスリランカ人は真剣な仏教徒で、日本人は礼儀正しくて好きだけど、シャカがさとりを開いた日を知らないことには本当にあきれたと言う。
仏教徒を名乗っていながら、この重要な日を知らないなんて、あまりに常識はずれだと。
日本人はキリストの誕生日は知っていて、その日になるとフライドチキンやケーキを楽しむのに、シャカがさとりを開いた仏教的に超重要な日はスルーする。
知ってて無視するのではなく、気づいてさえいないのだから、真面目な仏教徒からしたら、信者失格と思われても仕方ない。

*シャカがさとりを開いた日は、日本では12月8日になっているけど、スリランカの仏教では5月にその日がある。

 

スリランカ人が仏教の儀式のためにつくった祭壇

 

しかし、視点が変わると見方や評価も変わる。
日本の会社で働いていた知人のインド人は、そんな日本人の信仰心をとてもすばらしいとホメていた。
彼が考えるに、インド社会の最大の問題はヒンドゥー教とイスラム教の宗教対立だ。
インドでは、ヒンドゥー教・仏教・シク教・キリスト教の間で問題は発生しないけれど、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が争って、死者やけが人が出ることはよくある。

いまネットで検索したら、今年の夏にも首都ニューデリーの近くで、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒による衝突があって、7人が死亡し、116人が逮捕される暴動事件がおきていた。
宗教行事のために集まっていたヒンドゥー教徒にイスラム教徒が襲いかかり、モスクやレストランが燃やされたり、車が破壊されたりしたという。
インドではこうした宗教対立が昔から絶えない。
1992年には、多くのヒンドゥー教徒がモスクを破壊すると、これにイスラム教徒が激怒し、インド全土で1000人が死亡する暴動が発生した。 (インドの宗教間対立

 

知人のインド人は、こんな殺人や破壊行為を心底嫌悪し、インドの恥部や暗部と考えている。
それに比べて、日本の社会には宗教の違いから生まれる緊張感がなく、とても平和な雰囲気が広がっている。
日本人は自分を無宗教と言うけれど、お寺や神社で手を合わせて祈っているから、彼から見れば日本人には信仰心がある。

彼は、日本人はとても寛容だと称賛したが、それはきっと美化している。
日本人の信仰心を美しく誤解している。
スリランカ人から見ると、日本人は驚くほど宗教に無関心で、あきれるほど知識もない。
相手との違いを認め合っているというよりは、日本人は他人の信仰に興味がないから、関わろうとしないのだ。
そんな面倒なことはしたくないから、宗教の違いから摩擦や対立が生まれることもない。
日本人は基本的に誰が何を信じていても気にしないから、宗教に熱くなって、それを理由に人が殺されることを本当に嫌う。
インドにはそんな現実があるから、日本人の信仰心を高く評価するインド人もいる。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。